第3話 次女、未希のものがたり ① 紙芝居『シマエナガちゃんとキュンタくん による 水の話』北海道北広嶋エルコンフィールド秋の陽ざしの中で
台所でせかいをかえる Revolution Starts in DAIDOKORO
第3話 次女、未希のものがたり
◇◇◇
伸子の次女、未希。
幼稚園の先生として働きながら、六歳の娘・凛を育てている。
学生時代は東京で幼児教育を学び、教員免許を取得。
卒業後は北海道に戻り、実家からほど近い恵別で家庭を築いた。
行事が重なり、長旅から戻った母の顔を、
なかなか見に行けずにいた。
◇
そんな未希が、休日の今日、足を運んだのは北広嶋。
母・伸子が暮らすこの街には、二年前に誕生した球場――
エルコンフィールドがある。
この日、未希は娘の凛を夫の実家に預け、
エルコンフィールドのイベントで紙芝居の読み聞かせをしていた。
◇
北海道で、札張ドームに次ぐ規模を持つエルコンフィールド。
試合がない日でも、広々とした空間を楽しみに、多くの人々が訪れる。
芝生では子どもたちが走り回り、
若い夫婦が交互にベビーカーを押す姿も目立つ。
その日も、よちよち歩きの子どもが転んでも泣かずに立ち上がり、
まわりに笑顔をふりまいていた。
◇
未希の紙芝居はこの日、二度目の公演。
なかには、わざわざ足を運んでくれたリピーターの姿もあった。
「ここは、地下のお水を増やすために大切な場所なんだ。
雨が降って、お水が地面にしみこむと、地下のお水が増えるんだよ。ええがな。」
シマエナガちゃんが、まるで博士のように説明する。
「すると、キュンタは言いました。
『へえ、へえ、へえ! しまえなが博士、さすがすごいこと知ってるね!
公園が地下水を増やすお手伝いをしてるんだね!』」
◇
次のページをめくると、秋の風が吹き抜ける。
未希はやさしい声で続けた。
「シマエナガちゃんとキュンタは、みんなに教えてあげることにしたよ。
みんなも、お水を大切に使ってね。
ゴミを捨てないようにして、雨がやんだら公園に行こう。
地下水が増えるように、みんなで協力しよう!」
◇
紙芝居の世界に、目の前の子どもたちが入り込んでいる。
未希のまわりには、たくさんの親子が集まり、
その姿を見守っていた。
ジャンパーを着た親たちの後ろに、
いつの間にか未希の義母・春江が、凛と手をつないで立っていた。
紙芝居が終わると、温かい拍手が起こる。
満足そうな未希の顔を見た凛は、そっとささやいた。
「はるえちゃん、本番はこれからだよ。」
◇◇◇
* * *
次話へつづく
* * *
◇◆◇ あとがき ◇◆◇
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
また次話で、お会いできましたらうれしいです。
◇◆◇
次回予告:「未希のものがたり ②人形劇『シマエナガちゃんとキュンタくん による 水の話』は、本番。」
◇◆◇
―― 朧月 澪




