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台所でせかいをかえる Revolution Starts in DAIDOKORO  作者: 朧月 澪(おぼろづき みお)
挿話   秘密基地

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第24話 《挿話》凛の秘密基地

伸子が異国にいるあいだ、凛はよく児童館「めだか」に通っていた。


小学生になり通う回数は減ったけれど――そこは今も、凛にとって大事な“帰れる場所”である。


台所でせかいをかえる Revolution Starts in DAIDOKORO

第24話 《挿話》凛の秘密基地



めだかの学校は川の中

そーっとのぞいてみてごらん

みんなでお遊戯しているよ♪



さっぱり市手穂区には、この歌を思い出させる場所がある。

それが児童館「めだか」。


伸子の孫、凛がときどき訪れる場所だ。



この「めだか」は、凛のもうひとりのおばあちゃん・春江さんがつくった。


児童館といっても年齢制限がないため、利用者の平均年齢は三十七歳――ちょっと変わった場所である。



そんな「めだか」に秘密基地が生まれたのは、ほんの成り行きだった。


最初は、こっそりゲームをするための小さな隠れ家。

きっかけを作ったのは、厳島哲郎だった。


しかし哲郎は、いつしか来なくなった。

どうやら彼の何気ないひと言が、春江の地雷を踏んだらしい。


――とはいえ、そんな大人のさざ波が子どもたちの遊び場に届くことはない。



凛が工作したくて、春江と一緒に「めだか」に来た日のこと。

きっかけは、旅先から伸子が送ってくれたお菓子の箱だった。


海外から届いたその箱は、捨てるにはもったいない。

凛は思わずつぶやいた。


「なにか素敵なものが作れるかも」


ちょうど遊びにきていた子どもたちが声を上げる。


「それ、秘密基地にぴったりじゃない?」

「『めだか』の中に特別な場所つくろうよ!」


常連の子たちはゲーム空間を作りたかったが、凛たちはすっかり基地作りに夢中だった。


けんちゃん。

一つ年上のあかねちゃん。

三人は《プロジェクト・凛》を立ち上げた。



秘密基地の誕生


基地づくりが始まった。


リビング、台所、三人それぞれの小さな部屋までできた。

凛の部屋には、異国の香りがただよう。


伸子から届いた段ボールには、外国語の文字、大判の布、小箱……。

凛がひらめくたび、カラフルな空間が広がっていく。


けんちゃんは、日本の箱を集めてきた。

近所やスタッフを巻き込み、素材集めに奔走する。


あかねちゃんは、牛乳パック集めに夢中になった。

一リットルパックをメーカーごとに分け、詰め物をして積み上げる。

その整然と並んだ様子は、まるでドイツの街並みのようで、ただの廃材が誇り高い建築素材へと変わっていった。



牛乳パックの未来都市


牛乳パックで作られた世界は、

一リットルサイズの長方形がきちんと並び、まるでドイツの街並みのような秩序とあたたかさがあった。


その“リットル牛乳レンガ”の作り方はこうだ。


ジップロックに水を入れて空気を抜き、

それを空のパックに差し込む。

するとたちまち、ひんやりと重みを持った“建築資材”が生まれる。


あかねちゃんは、その重さを

「メダカのうがいコップ2杯分」で測る。


基礎部分に使うときは4杯分の“ヘビータイプ”を作る。

「ヘビータイプ」の名は、あかねちゃんのひらめきだった――

“じゅしょう(十勝)”。



メーカーごとに微妙に違う色味を活かして並べると、

それだけで未来都市の骨組みが浮かび上がる。


春には、桜の下の牛の絵が整列した。


秘密基地で最初に作られたのは、なんと“ロッカー”だった。

ドジャースのロッカールームをまねた、三人の憧れの棚だ。

ランドセルをならんでいれるその空間は、シニア児童を唸らせた。



合言葉


秘密基地には“合言葉”があった。


「ひらけぽんぽっきー」

「おどるポンポコリン」

「ひょっこりひょうたんじま」


知っている子だけが入れる、特別なルールだ。


噂はすぐに広がり、基地は大人気になった。

三人は新しい仲間を迎えて、ますますにぎやかになっていく。



未来の街へ


秘密基地での遊びは、いつの時代も「おままごと」。

令和の「おままごと」は、プロフェッショナルごっこへと変わり、

やがて「未来の街」づくりへと広がっていった。


――オフィス。

パソコンでテレワークごっこをして、画面越しに会議。


――カフェ。

タブレットで注文のやりとり。

ピザやパフェに笑い声が弾む。


――薬局。

箱のおもちゃ薬を棚に並べて、接客の練習。


上級生が持ち込んだドローンは街の“配達係”になり、

ソーラーカーは床に描かれた道路を軽やかに走った。


「めだか」の片隅で、未来都市はゆっくり育っていく。

アミューズメント会社もできた。


ドームカラオケ大会


ドームカラオケ大会の構想が生まれたのは、凛とあかねちゃんの発案だった。


きっかけは、ふたりの好きな曲――おばあちゃんから教えてもらった昭和メロディー。


札張(さっぱり)ドームで道民運動会があるなら、カラオケ大会もあっていいよね!」


大会はエントリー制で、観客投票で歌う人が決まる。

おばあちゃんの好きな歌が会場いっぱいに響く日を、二人は本気で夢見ていた。



こうして秘密基地は、子どもたちの小さな台所のような“創造の空間”になった。


小さな発見と遊び心。

そのひとつひとつが、凛たちの未来都市を育てていく。


* * *


 次話へつづく


* * *


後書き


凛たちの秘密基地の扉を開けると、

そこには想像と遊びが渦巻く小さな世界が広がっている。


けれど、順風満帆とはいかない――

それもまた、子どもたちのリアルな冒険のひとつだ。



第25話《挿話》凛の秘密基地のその後

第26話《挿話》にんぎょひめ ― ひと晩、孫の凛と語る物語 ―

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