6.「事の顛末」
時間は少し遡って。
国王に声を掛けられた直後。
何が起こっているのか分からなかったが、よく見ると、毒が塗られた長剣が王の眼前の床に突き刺さっていた。
剣はリージェンス公爵のものだった。
彼は、暗殺を企てていたのだ。
後から聞いた話によると、実は、その諜報・暗殺専門公爵家は、魔王と繋がっていたらしい。
国王暗殺による国家転覆を目論み、国を乗っ取り自分の物にして、モンスター軍団に手を出さない代わりに、自分が国王の座を奪った暁には、自分の国にも手を出すな、という約束をしていたとのこと。
「そりゃモンスターが襲撃するタイミングと場所を予測できるわけだよな。魔王から事前に聞いていたんだから。そうやって国王に取り入ったのか」
偶然ではあったが、俺は賊の凶刃から王を守った形になり、その功績を認められて、褒賞として前述の大金を貰った。
父が大量に買ってくれていた高価な膂力増強剤とこれから買って貰う予定の魔力増強剤の出費を差し引いてもお釣りがくるくらいの収益が手に入った。
しかも、王の厚い信頼も勝ち取ることが出来た。
まぁ、勇者との試合は、俺が場外へと跳躍してしまい反則負けとなったため、優勝賞金は貰えなかったんだが、別にそれはどうでも良い。
俺にとっては、レリナの目の前で自殺することが最優先だし、優勝賞金よりも王から貰った褒賞金の方がずっと高額だったし。
ちなみに、俺に勝ったピュルピは、「自分はあんたに勝つことばかり考えていて、王様が狙われていたことなんて全然気付かなかったっす! あんたすごいっす! 弟子にして下さいっす!」と頭を下げた。
「嫌だ」
「ありがとうっす! 師匠!」
「話聞けよ」
満面の笑みを浮かべる彼女は、勝手に俺を師匠呼ばわりした。
「おおおお! 大会準優勝のみならず、国王を暗殺者の魔の手から守るとは! しかも、褒賞金を全て我が家のために使って欲しいなどと、なんと出来た息子だ! 息子よ、ありがとう! 儂は嬉しいぞおおおおおお! おおおおおん!」
案の定、父は体内の水分を全て垂れ流さん勢いで号泣、喜んでくれた。
まぁ、めっちゃ高価な薬を買って貰っているし、これから更に購入して貰うし、家計が破綻したら困るからな。
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