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17.「姉弟」

「悪いね、弟まで治療してもらって」

「いえ、お気になさらないでください」


 どうやら、メメイアの弟であるルルヴァイトが魔王直属の幹部に殺され掛けていたらしく、案内された後、レリナが最上級回復魔法で怪我を完治させた。


「……何故僕を助けたんだ、メメイア? 僕はモンスターをこの街に招き入れ、貴様を殺させようとしたんだぞ?」


 腹から抜けて近くに転がっているモガザの剣を一瞥しながらそう問い掛けるルルヴァイトに、メメイアが答える。


「あたいは死んでない。領民も、誰も犠牲になっていないしね」

「だから助けただと? やはり貴様は、とんだ甘ちゃんだな」

「勘違いするんじゃないよ。あんたにはちゃんと罪を償ってもらう。そのために治してもらったんだから」

「そうか。今まで散々自分の命を狙ってきた憎き弟を、司法の場で裁き、斬首される光景を見ようって腹か。なるほど。確かに、仕返しとしては最もスマートなやり方だ」


 顔を歪め肩を竦める弟に、メメイアは告げた。


「いや、国王さまには、あたいが直接嘆願して、死刑だけは避けて頂けないかとお願いするつもりさ。まぁ、十年二十年くらいは投獄されるかもしれないけど、あたいはいつまでも待ってるから」

「何だと!? 何故そこまで……!?」


 驚愕に目を見開くルルヴァイトを、姉は抱き締めた。


「そんなの、あんたがあたいの弟だからに決まってるじゃないか」

「!」

「あんたは、世界で一人だけの、あたいの大切な大切な弟だよ。女なのに、当主の座を奪っちまって、本当にごめんね、ルルヴァイト……」

「……ねえ……さん……!」


 掠れた声で呟くルルヴァイトもまた、躊躇いがちにだが、姉の身体を抱き締め返した。


※―※―※


「素敵でしたね、あのお二人」

「ああ、中々に美しい姉弟愛だった」


 そっと立ち去った俺たちは、落ち着きを取り戻した街中を歩く。


「ん」


 ふと立ち止まったレリナが、俺の方を向いて、両腕を広げる。


「何だそれは? 日光浴か?」

「違います。ロガスさまも、私を抱いて良いんですよ?」

「遠慮しておく。っていうかその言い方やめろ」

「何でですか? 最初に抱いて下さったあの日から、一度もして下さらないじゃないですか? もう飽きたってことですか? 一度抱いた女はポイ捨てですか?」

「いや、マジでその言い方やめてくれ。俺、一応領主の息子だし、公爵令息なんだよ。悪評が立ったら、本気でヤバいんだってば」


 クールな顔を崩してむくれていたレリナは、「じゃあ、仕方ないから、これで許してあげます」と言って、腕を組んできた。


「お前、またそういうことを――」

「抱くとか抱かないとか、そういうことを言うのと、こうやってただ腕を組んで歩くのと、どっちが良いですか、ロガスさま?」

「……お前、よく悪女って言われるだろ?」

「酷いです、ロガスさま。私は紛うことなき聖女ですよ?」


 微笑を浮かべるレリナと共に、俺は溜め息をつきながら、デートの続きをする羽目になったのだった。

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