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16.「領民を守るために(4)(※メメイア視点)」

「悪いな。俺が斬っちまったせいで、倒れてきたんだ」

「ロガス!?」


 目を開くと、いつの間に現れたのか、目の前には聖剣を持った片手で巨大剣ジャイガンティックソードを軽々と受け止めるロガスがいた。


 巨大剣ジャイガンティックソードは、その先にある柄の部分と、先が欠けた刃の方とが、丁度重さが釣り合っているのか、絶妙なバランスで地面に触れることなく浮かんでいる。


「あんた、その力は、一体……!?」


 まるで人間が〝落下した塔〟を受け止めたような、常軌を逸する光景に、メメイアは唖然とする。


「ああ、これか? さっき距離を詰める寸前に、固有スキルで身体能力を増幅したんだ。そのお陰だ」


 事も無げにそう言うロガスに、メメイアは言葉を失くす。


 先程のどこかから飛んできて防御魔法を格段に強化したスキルと同じものなのだろうが、あまりにも威力が凄まじ過ぎて、人間の扱う力とは到底思えない。


「う~ん、でも、どうしたもんかな、これ。もう一度突き刺すか? いや、でも、俺が切先を斬っちゃってるから、同じようには突き刺さらないよな」


 当の本人は、そんなことはお構いなしに、聖剣を持っていない左手で顎を触りながら思考する。


「『ウルトラヒール』」


 と、その時、凛とした少女の声が公園に響いた。


「嘘だよね? こんなことがあるのかい!?」


 両手を翳す金髪碧眼の美少女の最上級回復魔法によって、尋常ではない重量がある巨大剣ジャイガンティックソードが光に包まれ、まるで羽毛のようにフワリと浮き上がると、スーッと移動、台座の位置まで戻り、斬られた箇所も戻って、全てが元通りに修復された。


「本当、ロガスさまったら。私がいなかったらどうするつもりだったんですか?」

「悪いな、レリナ。後始末までやらせてしまって。っていうか、回復魔法で折れた剣まで直すのか!? 普通物体修復魔法だろ、そこは」

「だって、その魔法使えませんし、私。でも、良いじゃないですか、回復魔法でも。ちゃんと直ったんだし」

「いや、だからそれがおかしいって言ってんだよ」


 レリナと呼ばれた少女とロガス。

 二人とも規格外過ぎて、思考が追い付かない。


 が、そんなことよりも!

 〝領主として今すべきこと〟があるだろ、メメイア・フォン・オースブルーム!


「二人とも、あたいの街を救ってくれて、本当にありがとう!」


 バッと、頭を下げる。


「相手は魔王直属の部下と、ファイアドラゴン。あんたらがいなければ、きっとこの街も、領民たちも、大変なことになってた。いくら感謝してもしきれないよ!」


 レリナは、「そうなんです。ロガスさまは素晴らしいお人なのです。是非とも、国中に、いえ、いっそのこと世界中に、存分に喧伝して下さいませ」と、その豊満な胸を張り、得意顔をする。


 一方のロガスは、〝疑う余地などないほどに本当にすごいことを成し遂げた〟のだが、ピンと来ていないようだった。


「いや、俺は〝世界一美しい自殺〟をしようとしていただけだしな。っていうか、このばかでかい剣が落下したのは、俺のせいだった訳だし……」


 むしろ、バツが悪そうに頭を掻くロガス。


 もごもごと喋っていたせいで、よく聞き取れなかったが、恐らく世界一美しい〝必殺〟をしようとしていた、と言ったのだろう。


 きっと、モンスターや強盗などのならず者を〝世界一美しく成敗する〟ことを目的としているのだ。実に見事な志ではないか。


 確かにやり方は多少――いや、かなり強引且つ極端ではあったが、それも若さ故のこと。

 恐らく、今後は少しずつ洗練されていき、民から尊敬され、貴族や王族からも頼られる、最高の領主になるに違いない。


「あんたって、本当に良い男だね、ロガス。思わず惚れちまいそうだよ」

「大変失礼ながら、いかにオースブルーム公爵でいらっしゃっても、それだけは絶対に許容出来ません」

「ふふっ、冗談さ。人のものを盗ろうとするほど野暮じゃないよ、あたいも」

「御理解頂けましたようで良かったです。ロガスさまは、私のものですので」

「誰が誰のものだ、おい」


 言い合っている二人を見ながら、メメイアは目を細める。


 もしこの街が陥落していたならば、他の都市も落とされていたかもしれない。

 そうなると、モンスターたちが次に狙うは、ここから南方にある、王都を含む国王直轄の領地。


 そう考えると、この街を守れたことは、ただ一都市を防衛した以上の価値がある。


「もしかしたら、国そのものを救ったのかもしれないね、あの二人は」


 そして、不思議な力を持った彼らは、今後もこの国を防衛する要となる。


 そんな予感と共に、メメイアは、


「何かあったら、あたいも、全力であんたらの力になるよ!」


 と、静かに誓うのだった。

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