15.「領民を守るために(3)(※メメイア視点)」
「これなら、守れる!」
ファイアドラゴンの炎を一瞬で打ち消した自身の防御魔法を目にし、拳を握るメメイアとは対照的に、モガザは苛立ちを隠せない。
「このモガザさまのファイアドラゴンの炎があんな弱っちい人間なんかに防げる訳ないサモ! もう一度サモ!」
「ガアアアアアアア!」
ファイアドラゴンが再び炎のドラゴンブレスで攻撃するが。
「無駄だよ!」
「サモ!?」
新たな防御魔法を展開するまでもなく、再度猛炎を防ぐ。
「こうなったら! 『死を齎す羽根』!」
空中で一回転したモガザの両翼が光ったかと思うと、濃縮された魔力を纏った無数の羽根が降り注ぐ。
その一つ一つが最上級魔法と同じ威力を誇る、モガザの奥の手だったが。
「サモ!? こんなの嘘サモ!」
メメイアの防御魔法は、その全てを弾き返した。
よし! 今の所は、大丈夫みたいだね!
「ムカつくサモ! 絶対に破壊してやるサモ!」
プライドを傷付けられたモガザが、メメイアの防御魔法の攻略に執着してくれたのが、不幸中の幸いだった。
大きくなったとは言え、防御魔法の半球状の光は、数十メートルしかないのだ。
都市全体を覆うには、全く足りない。
「……サモサモサモサモ! 〝弱点〟見つけたサモ!」
「!」
モガザが下卑た笑みを浮かべる。
メメイアの背中を冷たい汗が伝う。
メメイアの防御魔法は拙いため、実は、場所によって強度が違う。
上部は比較的マシだが、側部には、魔法強度が足りない部分があるのだ。
「ここからだと狙い辛いサモ。もう少し、こっちの方から狙うサモ!」
ドラゴンと共に北側へとスーッと移動を始めるモガザ。
「くっ!」
狙いを付けられないようにと、メメイアもまた必死に走っていき、巨大剣公園の中へと入っていく。
が、空を飛行するモガザとの距離は少しずつ離れていってしまう。
「あともう少しサモ!」
モガザが更にスピードを上げる。
「サモサモサモサモ! 完璧サモ! ここからなら、確実に側部の弱点を貫けるサモ!」
モガザが口角を上げた直後。
ドン
「サモ!?」
何かにぶつかったモガザが、空中でよろめく。
「何サモ!? このモガザさまにぶつかってくるとか、余程死にたいらしいサモ! 望み通り、ぶっ殺してやるサモ!」
振り返ったモガザの目に飛び込んできたのは。
「サモ!?」
自分の眼前に迫る恐ろしく巨大な剣だった。
「逃げ――」
咄嗟に回避行動を取ろうとするも、間に合わず。
「「ギャアアアアアアアア!」」
モガザは、背後にいたファイアドラゴンと共に左右に真っ二つにされた。
「はぁ、はぁ、はぁ……や、やった……! ……た、倒せたみたいだね……!」
追い付いたメメイアだったが、肩で息をする彼女は、頭上から落ちてくる〝それ〟に目を見開く。
「……あ……」
敵を屠った巨大剣が、勢いそのままに、メメイアに襲い掛かる。
「で、でも!」
まだ防御魔法は展開されている。
これで、自分自身も、この公園も、公園にいる人たちも守れる!
パリン
「!」
しかし、無情にも防御魔法は砕け散ってしまった。
それまでのドラゴンブレスとモガザの猛攻を凌ぐことで、既に耐久力に限界が来ていたのだ。
途方もなく大きな刃が自分に迫る。
に、逃げなきゃ!
だが、格上相手との戦いで魔力も体力も限界まで削られた彼女は、その場から一歩も動くことも出来ず。
「くっ!」
メメイアは、目を閉じた。
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