14.「領民を守るために(2)(※メメイア視点)」
「ルルヴァイト!」
凶刃に倒れた弟に駆け寄ろうとするメメイアだったが、「さて、用済みを処分してすっきりしたところで、この街を燃やし尽くしてやるサモ!」というモガザの声に、「くっ!」と、唇を噛み、弟よりも街全体を守るため、ドラゴンブレスを防ぐことを優先する。
「やらせないよ!」
上空のファイアドラゴンに向けて両手を翳したメメイアが、叫ぶ。
「『エリアプロテクト』!」
が、何も発動しない。
それもそのはず。メメイアが使えるのは、自身を守る普通のプロテクトだけだった。
「『プロテクト』!」
自分自身を淡く輝く光で包んだメメイアは、それを無理矢理広げた。
「『エリアプロテクト』!」
防御魔法の光が、メメイアを中心に半球状に展開されるが、数メートルしか覆えていない。
これじゃ、足りない!
「がはっ!」
本来自分には使えないはずの上級魔法を無理矢理発動したことで、吐血する。
「サモサモサモサモ! 血を吐くほど無理してるのに、そんなショボい魔法しか使えないとは、滑稽サモ! そんなちっこい防御魔法でこのモガザさまが召喚した自慢のファイアドラゴンのブレスを防げる訳ないサモ!」
召喚魔法……もしかしたら、国内のいくつもの都市で出没していたモンスターたちは、アイツが召喚していたのかもしれないね。
だけど、今はそんなことよりも!
「ガアアアアアアア!」
ファイアドラゴンが炎のドラゴンブレスを吐く。
「『エリアプロテクト』! ぐはっ!」
吐血しつつ更に防御魔法を追加発動して、先程の防御魔法の隣に別の半球状の光として展開するが、それでもドラゴンの巨大な炎を防げるほどの大きさではない。
そもそも、あたいの防御魔法なんかじゃ、最強のモンスターと謳われるドラゴンのブレスを防げる訳が……
いや、違う!
領民たちの笑顔を思い出す。
「諦めてたまるか! あたいはこの街の領主だ! あたいが守るんだ! 『エリアプロテクト』! 『エリアプロテクト』! 『エリアプロテクト』! がはっ!」
大量に吐血しながらも、何とか炎を受け止められるだけの大きさを確保する。
「お願いだ! これで何とかなっておくれ!」
流れる血もそのままに、上空から迫る猛炎をメメイアが睨み付けた直後。
「サモサモサモサモ! 力無き者は哀れサモ!」
「そんな……!」
頭上に展開した複数の防御魔法が全て、獄炎によってあっさりと破壊されてしまった。
そのまま自身と街に襲い掛かろうとする火炎に対して、メメイアは血を吐きながら、尚も防御魔法で抗う。
「『エリアプロテクト』! ぐはっ!」
「サモサモサモサモ! 弱者が見苦しいサモ! そろそろ諦めるサモ!」
「諦めない! 諦めてたまるか! あたいの街、あたいの領民たちを、傷付けさせはしない!」
「サモサモサモサモ! カスが何をやろうが、結果は同じサモ!」という嘲笑にも負けず、もう何度目かも分からず吐血しながら魔法を発動せんとするメメイアに。
「!?」
どこかから飛んできた〝とある固有スキルを発動するための魔力〟が触れた。
これは……ロガスの魔力かい!?
握手した際に感じた、圧倒的な魔力量を誇る少年の魔力。
それは、ロガスが〝究極増幅〟を発動しようとした際に、レリナに胸を押し付けられて動揺して、指定すべき〝ターゲット〟を〝まほっ〟としてしまったものだった。
中途半端な発声ではあったものの、固有スキルは、〝ターゲット〟を〝魔法〟と判断、メメイアの〝魔法〟を格段に増幅した。
その結果。
「『エリアプロテクト』おおおおおお!」
「サモ!? 一体何が起きたサモ!? おかしいサモ!」
メメイアが発動する防御魔法が、ファイアドラゴンの炎を一瞬で打ち消し、更に光り輝く半球のサイズが数十メートル規模まで一気に大きくなった。
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