13.「領民を守るために(1)(※メメイア視点)」
時間は少し遡って。
「メメイア。貴様に面白いものを見せてやる」
突如執務室に現れた弟にそう告げられたメメイアは、「悪いね、ルルヴァイト。今仕事中なのさ。しばらく待って貰えるかい?」と、書類仕事を優先しようとしたのだが。
「良いのか、そんなこと言って? 貴様がカジノ計画に反対しているのは、ゴミ問題にしろ騒音にしろ治安悪化にしろ、領民のことを想ってのことだろ? その領民が〝惨い目〟に遭ってもまだ仕事を優先すると言えるのか?」
「!?」
気になる言い回しだった。
「分かった。出来るだけ早く切り上げるよ」
「懸命な判断だ。僕は先に〝巨大剣公園〟の南入口へと向かうから、直ぐに来い」
ルルヴァイト。一体何を企んでいるんだい?
立ち去る後ろ姿を見たメメイアは、訝し気に思いながらも、最優先の仕事のみを数個ピックアップすると、猛スピードで終わらせていった。
※―※―※
「やっと来たか」
「はぁ、はぁ、はぁ……一体なんだってんだい?」
仕事を切り上げて走って来たメメイアの姿に「ふん」と鼻を鳴らしたルルヴァイトは、「来たぞ」と、顎で指し示した。
「一体何が?」
メメイアが南の方へと視線を向けると。
「モ、モンスター!?」
鳥の上半身とトカゲの下半身を持つモンスターとドラゴンが、空に浮かんでいた。
「魔王さま直属の幹部であるこのモガザさまが、この街を火の海にしてやるサモ!」
異変に気付いた人々が悲鳴を上げ、逃げ惑う。
「逃げろ!」
「モンスターだ!」
「「「「「きゃあああああ!」」」」」
「「「「「うわあああああ!」」」」」
恐怖に引き攣った彼らを見て口角を上げたモガザが「やれ、ファイアドラゴン!」と命じると、「ガアアア!」と答えたドラゴンが大口を開ける。
「いけない!」
メメイアが走り出す。
と、その時。
「やめろ!」
背後から叫び声が聞こえた。
ルルヴァイトだ。
自分が甘い汁を吸いたいだけなのだと思っていたが、その実、弟もこの街のことを、領民たちのことを想ってくれていたんだね!
メメイアは、そう思ったのだが。
「話が違うじゃないか!」
「……え?」
戸惑ったメメイアが、思わず立ち止まる。
「〝巨大剣公園〟だけ灰にするって話だっただろうが! 殺すのもメメイアだけで、他の人間には手を出さないって!」
「ルルヴァイト……!? 何を言って……!?」
呟きながらも、メメイアは、今までルルヴァイトが行って来たであろうことを、ほぼ確信していた。それは――
「サモサモサモサモ! モンスターが約束を守るとでも本気で信じてたサモ? 馬鹿過ぎて救えないサモ!」
「貴様! 裏切ったな!」
「これまでの情報提供、感謝するサモ! 都市内部の構造、駐留兵士の数、冒険者の数、防衛体制、人員配置の位置と人数などなど、おかげですごく侵入しやすかったサモ!」
「くそがっ!」と、怒りで顔を歪めるルルヴァイトを、モガザは冷酷な瞳で見下ろす。
「お礼に、殺してやるサモ」
「ぐぁっ!」
「ルルヴァイト!」
腰に差した長剣を素早く抜いたモガザが投げると、高速で飛び、ルルヴァイトの胴体に突き刺さった。
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