表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/20

11.「メメイアの決意とデートを所望するレリナと口角を上げるロガス」

 実の弟に命を狙われている。

 メメイアの言葉に、俺は衝撃を受ける。


「ルルヴァイトのやつ、どうしてもカジノを誘致したいみたいでさ。あたいが邪魔なんだろうね。何度か毒殺され掛けたよ。あたいも最初は信じられなかったけどね。でも、犯行時刻と場所が、オースブルーム家内部の者じゃないと不可能だってことが分かってね。で、流石のあたいも気付いたって訳さ」


 サラッと言っているが、かなりエグい話だ。


 メメイアの父親は華があるタイプではなかったが、やるべきことを粛々とやるタイプで、暗殺を防ぐことも〝命が惜しい〟というよりもむしろ、〝上に立つ者として最低限必要な措置の一つ〟という感じだったらしい。彼の真似をして解毒薬を常備していたことが功を奏し、メメイアは毒殺を免れている。


「まぁでも、何度も殺され掛けておいてこんなこと言うのもなんだけど、ルルヴァイトにも同情の余地はあるのさ。それまで代々息子に領主の地位を継いできたのに、あたいを溺愛する父は〝娘に継がせる〟と明言し、遺書まで書いていたんだからねぇ」


 そのため、強制的にメメイアが継ぐこととなった。

 彼女の弟であるルルヴァイトは、そんな彼女のことを憎んでいるようだ。


 〝もしカジノ誘致に反対したら、殺す〟。

 言葉にはしないものの、これまでの二年間の弟の所業からは、ひしひしとそれが伝わって来る。


「ロガス。もしあんただったらどうする?」


 いきなり話を振られた俺は、即答した。


「そんなの、考えるまでもない。それが〝己の為すべきこと〟ならば、どんな障害があろうが、関係無い。実の兄弟だろうが、魔王だろうが、邪魔する者は全て蹴散らした上で、目的を遂行する」


 どこか眩しそうに目を細めたメメイアは、満足気に微笑む。


「一点の曇りもない真っ直ぐな目。何かを成し遂げる人間ってのは、あんたみたいな奴のことを言うんだろうね」

「買い被り過ぎだ」


 俺は、ただ〝世界一美しい自殺〟をしたいだけだからな。


「ふふっ。謙虚な所もまた良いじゃないか。気に入ったよ」


 メメイアは、「よし」と頷くと、強い光を宿した瞳で俺を真っ直ぐに見据える。


「決めたよ。あたいも腹をくくる。どんな壁が立ち塞がろうが、全て乗り越えてみせるよ! ありがとう、ロガス」


 差し出された手を握る俺。

 思ったよりも細くしなやかな手は、だがしかし予想以上に力強かった。


※―※―※


「へぇ~。それで、美少女公爵の手の柔らかさと肌の滑らかさを思う存分堪能してきたんですね。いやらしい」

「握手を求められて応じただけで暴言て。じゃあどうしろっつーんだよ?」


 翌日。

 学院の昼休憩中に、いつも通りレリナに詰られ、俺は溜め息をつく。


「じゃあ、お詫びに私とデートして下さい、ロガスさま」

「〝じゃあ〟の意味も〝お詫び〟の意味も分からないんだが」

「細かいことは良いじゃないですか。メメイアさまが統治されているオースブルーム領に一度行ってみたかったんですよ。噂の巨大剣ジャイガンティックソード、見てみたいですし」

「全然〝細かいこと〟じゃないし、別に俺はオースブルーム領には行きたくない――」


 と、そこまで話したところで、待てよ、と、俺は考え直す。


 オースブルーム領。

 よく考えたら、〝世界一美しい自殺〟をするのに最適な場所じゃないか?


「良いだろう、デートしてやるよ。オースブルーム領に行くとしよう」

「え、本当ですか? やったー。ロガスさま、ありがとうございます」


 レリナのクールな印象の顔が緩んでいる。


 ふっ。せいぜい今の内に幸せを噛み締めておけ。

 お前は〝著名観光地でデートの最中に最愛の男が世界一美しい方法で自殺する〟のを目の当たりにするんだからな。


 俺は、微笑を浮かべるレリナを見ながら、密かに口角を上げた。

お読みいただきありがとうございます!

もし宜しければ、ブックマークと星による評価で応援して頂けましたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ