表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

苺チョコレートまんの行方



 どっちを買おう。

「苺チョコレートまん」と「バナナチョコレートまん」をじーっと見つめ、俺は悩んでいた。


「森山、早くしろよ」


 声をかけてきたのは、会計を先に終えた桜屋だ。


「待てって。あともう少しだけ」


 せっかちな奴だと不満に思いつつ、俺は改めてコンビニの商品とにらめっこする。

 苺チョコとバナナチョコ。どっちがおいしいんだ。いや、どっちもおいしいに決まっているが、よりおいしいのは果たしてどっちだ。

 また悩み始めた俺に、桜屋は嘆息した。


「どっちも買えば? 早くコンビニを出たいんだけど。こっちの肉まんが冷めちまうだろ」

「だったら、先に出ててろよ」

「お前を置いていけない。心配だ。その……ナンパされたりだとか」


 俺は、顔を上げる。呆れた目を、桜屋に向けた。


「バカなのか? 他に客はいないだろ」

「店員がいるだろ」

「………」


 バカバカしい。けれど、桜屋を不安にさせたくはない。

 俺は、苺チョコレートまんを選ぶことにして、早々に会計を終えた。次は、バナナチョコレートまんにしよう。

 熱々の苺チョコレートまんを手に、俺は桜屋と一緒にコンビニを出る。


「森山って、マジで甘党だよな。せめて、あんまんを選ぶところじゃないのか」


 なんで苺チョコレートまんなんだよ、と苦笑いを浮かべる桜屋。

 俺は、むっとした。口うるさい奴だな。好きなものは好きなんだよ。放っておけ。

 というわけで、スルーすることにする。

 黙り込んだ俺に気付いたのか、桜屋は慌てて「悪かった、ごめん」と謝ってきた。


「じゃ、じゃあさ。一口、ちょうだい。うまそうだから、俺も食いたい」

「……ふーん、いいよ。分けてやる」


 反省しているようだし、許してやろう。

 出来たてホクホクの苺チョコレートまん。半分に割り裂いて、桜屋に渡す。

 ……と、思ったら。


「うわっ!」


 何かが、すごい勢いで目の前を横切った。

 気付いた時には、苺チョコレートまんが忽然と消えている。え、何があった。

 っていうか、俺の苺チョコレートまん!


「大丈夫か? この辺の鷹って凶暴だからなー」


 桜屋が能天気に言う。他人事だと思って。


「鷹が取っていったのか……ひどすぎるだろ。今月の小遣い、もうほとんどないのに」

「え、そうだったのか。なんだよ、早く言ってくれたらよかったのに」


 桜屋が、さりげなく俺の手を握る。俺の手を引っ張り、コンビニまで道を引き返し始めた。


「それなら、俺が買ってやるよ。今度はどっちがいい?」

「どっちも」

「欲張りだな。まっ、いいけど」


 繋いだ手を、見下ろす。

 ひどいハプニングだったが、こうして桜屋と手を繋げたのでよしとしよう。

 ありがとう、「苺チョコレートまん」。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ