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9話「ダンジョンきた! 潜るぞ!」

 アッセーはナッセの偽名で隠れAランク冒険者として、ギルドマスター直々から依頼を受けたぞ。

 それは不審死が多いパーティーの視察だ。


「Bランクベテランの名が通った『獄炎』パーティー……」

「ああ。俺がリーダーだぜ」


 赤髪を逆立てたガラの悪い剣士セラディスを筆頭に、色っぽい魔道士ザレ、真面目そうな僧侶テレンス、そして不遇の運び屋ユミ。

 そこにアタッカーとしてアッセーが誘われたのだ。

 剣を腰に差してるし、誰が見ても剣士に見えるだろう。


「あなた貴族の出さん?」

「分かるんですか?」

「ふふっ」


 ザレはあざとい笑顔でアッセーの肩に手を回す。手癖悪そう。


「おい! ザレに手を出したらぶっ殺すぞ?」


 セラディスが不機嫌そうに凄んでくる。たぶんデキてる?

 テレンスが「まぁまぁ」となだめてくる。

 ただ、ユミが俯いている。たぶんずっとそんな姿勢かもしれない……。


 なんか向こうの冒険者のエルフが、こちらに頭を下げて祈っているかのような仕草してたのが気になった。

 つか、エルフはみんなしてくる。

 通りすがりでも頭を下げてくるが、やっぱバレてんだろうなぁ。


「ダンジョン行くぞ!」


 こっちのお手並み拝見か、セラディスと一緒に国を出てダンジョンへ向かう。草原を抜けて森林と切り立った崖に一般で言う洞窟みたいな出入り口が空いていた。

 ただの洞窟にあらず、なぜか何階層とキッチリ迷路が張り巡らされている。

 これも魔族のしかけた罠だとか聞いているが詳細は不明。


「おまえ剣を使えるんだろ? 先頭を務めろ」

「え?」


 リーダー無茶を言ってきたぞ。

 新米と分かってて、先頭でダンジョンを進めと言ってきやがった。同じBランクのマルクさんはちゃんと気遣ってくれたぞ。


「行く道は指示する。言うこと聞けよ?」

「分かったぞ」


 すんなり承諾されたのに怪訝そうに眉をはねてきた。

 しばらく迷路を一時間くらい歩いていたが、モンスターなかなか来ないな。そういうもんなのか?


「やけにモンスター来ないわね?」

「ああ。いつもだったらここまで四回くらいは遭遇していた。おかしいぞ……」


 不審がっているセラディスとザレ。


「運がいいならいいではありませんか?」

「バカか! こいつの腕が分からんだろう!」


 のんきそうなテレンスにセラディスが苛立っていた。

 やべぇ、もしかして低レベルモンスターがオレを避けてたりするんじゃないか?

 そんな調子で一階層最後の部屋まで来た。開くとボスがいた。


「ぐるがああああああああっ!!」


 オーガーのような大きなオオカミ男だ。赤い毛色。

 ブラッドウェアウルフらしい。


「なんでコイツが一階にいるんだよ!? チッ、なんか納得いかんが、行くぞ!!」

「ええ!」


 不機嫌なセラディスが剣を抜いて飛び出し、魔道士のザレが詠唱を始める。

 テレンスは本を開いて詠唱して防御魔法を全体にかけてきた。

 体感的に革の鎧を着たみたいな上昇率か。


「いくぞう!」


 アッセーも棒読みで剣を抜いて構える。

 セラディスは「火炎炸裂斬ッ!!」と火炎をまとった剣を振り下ろして、かざしてきた赤いオオカミ男の腕に傷を残す。

 結構硬いのか、何度も斬りつけても少々の傷だ。


「くそ! 硬ぇ!!」

吹氷矢(アイスアロー)!!」


 ザレは何本かの氷の矢を撃って、赤いオオカミ男にダメージを与える。

 適当に動き回り、アッセーはかるーく剣を振り下ろすと足を斬り落としちまった。やべ、手加減してたのに!


「があああああっ!!」


 片足を失って激痛に吠えながら体勢が傾く。すかさずセラディスが剣で口へぶっ刺して仕留めた。



「おまえ……なんかスキル使ったか?」

「普通、あんな綺麗に斬れないわよ?」

「え? そうかな? 偶然クリティカルヒットしたんかな? はは」


 後頭部をかく。

 セラディスは一番攻撃力が高いらしいが、それでも少々傷をつけるだけ。ザレは一番の攻撃魔法の使い手だけど凍傷負わせるだけ。

 ボスの足を斬り落とすなんて芸当は信じられないみたいだ。


「チッ! 一階層には絶対出てこない手強いボスだったのに……」

「そうなんか?」

「ええ、あのクラスは地下五階層によく出没するボスよ! なんでこのフロアに出てくんの?」


 えー、あれ五階のボスクラスなんか。

 なんか目立たないユミが、倒したモンスターの魔石を拾っている。セラディスたちは目もくれもしない。


「おーい、ユミー! ありがとなー!」

「はわわっ」


 まさかアッセーに手を振られるとは思わず動転するユミ。赤くなってる。


「チッ、これからは俺が先頭だ。ナッセはユミと一緒に後方を務めろ」


 二階層で、セラディスが先頭で進む。

 アッセーは後方のユミと一緒にしんがりをつとめる。

 どうやら、さっきの戦闘とかで不満だったか『俺が一番だ』とばかりに、気に入らないナッセは後方へ追いやろうってらしいな。


 なんとコウモリが数十匹、スライムが五匹と普通にエンカウントしてきた。

 オレが先頭の時は全然来てくれなかったのに、セラディスだと来るんだな。不公平だ。


「ウザってぇんだよ!!」


 セラディスは乱暴に剣を振るってコウモリを斬り散らしていった。

 ザレも長ったらしい詠唱で始まって十二秒で火炎球を放って、スライムを全滅させていく。

 テレンスはメイスでコウモリを叩き落とす。


「んー、ざっと平均武力は二〇〇〇か。Bランクにしては低いな」

「そうなんですか?」

「ああ。たぶん強さより仕事の功績でランク上げたんだろうな」


 ふとユミと目が合った。

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