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83話「尖兵天使が自白! 天使族の黒い野望!」

 城内でモットツオ王様とアッセーたちが集合してて、注視する先にふん縛られた尖兵天使マーエルが床に尻をつけていた。

 自分を倒したアッセーを睨みつける。

 力むも、普通の縄なのに破れそうにない。


「きさま……、縄に何を細工した!? この天使族がただの縄などにっ!!」

「わりぃな。オレの奥義でやられたら完全無効化されるんだ。従って普通のヒト以上になにもできねぇぞ。あと自決もできねぇからな」


 マーエルは自分の舌を噛みちぎろうとするが、力が入らない。


「うぐぅ……! ええい! 殺すなら早くやれっ!」

「そうはいかないしさぁ……」


 ボウッとアッセーは妖精王化。右手に花吹雪が収束して白銀の鈴を生成。


「色々吐かせてもらうからさ。快晴の鈴っと」


 心地よい音色を響かせ、澄んだ浄化の光が波紋のように広がって、マーエルが「ぐああああああ!!」と苦しみもがいていく。

 背中から強烈な粘着性のある黒いスライムみたいなのがズムズム鈍重そうに抜け出してくる。

 想像以上の悪意と欲望だと分かる。


「あああああああああああああああッ!!」


 数分かけて大きなのが抜け出すと、散り散りと分解されて虚空へ溶け消えていく。

 さすがにアッセーもドン引きだ。


「どんだけ邪悪なんだよ天使って」


 ローラルも処刑の時に自身も浴びてたから、その効力は身を持って思い知っている。

 つまり自分の悪意より、マーエルの悪意の方がドス黒く巨大なのだろう。


「おい、マーエル。大丈夫か?」


 当のマーエルは死んだような目でヨダレ垂らしている。

 流石に生きてたようで、瞳に輝きが戻りアッセーへ向く。


「オレが分かるか?」

「アッセー……!」

「じゃあ質問したいから正直に答えて欲しい」

「はい。なんでしょうか?」


 ビックリするくらい素直になってて一同は驚く。

 アッセーがモットツオ王様へ頷くと、頷き返してくれた。


「天使マーエル! おまえのボスが女神さまとは本当か?」


 モットツオ王様が尋問してくると、マーエルは頷く。


「『塔山(タワー)』の頂上で天界を構えてて、そこで世界の支配者としてエーニスック女神さまがおられる」


 まさかの塔山(タワー)の頂上で女神さまがいると白状してきて、一同に激震が走った。


「ま、マジか……?」

「はい。元々、数百年も前から天界として荘厳とした神殿を建設して、我々天使族が住んでいるのです。そして我らが王であるエーニスック女神さまは、誰にも高貴な顔を安易に見せぬとヴェールの奥で暮らしています」

「……ウソは言っとらんな」

「確かに……」


 モットツオ王様と竜騎士ドラギトは確信した。


「ってか、女神さまは魔族と人類を両立しないとバランスが崩れるって言ってたのに、なんで人類だけ繁栄させようとしてんだ!?」

「あなたも女神さまに会っているんですか?」

「ああ。この世界を創った女神さまとして、夢で星幽界域(アストラル・エリア)に呼ばれて説教とかされてたし」

「え……? 天界の大神殿以外にいるはすがない……?」

「あと女神さまはオレに多くの嫁を取らせて、ズッコンバッコンしろって言ってたぞ! 魔嫁ズの件でもそうだったし!」

「そ、そんな下品な事はおっしゃるはずがない……!」

「めっちゃ言うぞ! あの女神さま! 人類社会の論理とは関係なく、オレとかに繁殖行為をさせて優秀な遺伝子を配って極レアキャラを誕生させたいって言ってたからな! GJ(ゴッドジェム)儲けたいがために!」

「な……!?」


 そんなアッセーの自白に、一同はドン引きする。


「お、おい! 天使より、お前が自白してどうするんだ?」


 引いているモットツオ王様がそう呼び止める。

 ローラル、アルロー、ユミ、マトキは女神さまの真相を知ってドン引き。

 ハーズは「繁殖なら手伝う」とか言い出すが無視。


「アッセーさん、もしかしたらあなたが会った女神さまと、我らが女神さまは同一人物じゃないかもしれません」

「って事は、どっちかがニセモノで片方が本物!?」

「恐らく……」


 マーエルは俯く。

 彼としても、ヴェール向こうから「私は女神さま」と威圧漲らせて思い知らせてくる天使族が実はニセモノだったとしたらと動揺しているのだ。

 どことなく「私は本物の女神さまだ! 逆らうな! 盲目的に従え!」みたいな概要を常々念入りに告げて圧力を感じていた。

 疑う事は許さず問答無用で言う事を聞け、と。


「マーエル。あっちは偉そうだったか?」

「あ、まぁ……。確かに荘厳とした態度で厳しい方ですね」

「あっちのほうが本物っぽいな。でもよ、なんで星幽界域(アストラル・エリア)にいねぇんだ?」

「そういえば『星幽界域(アストラル・エリア)』は悪魔が支配しているから、こちらジャスティスメシアは力をつけていかないといけないと張り切ってました」

「悪魔……?」

「はい。女神さまは星幽界域(アストラル・エリア)にいる悪魔どもを根絶やしにしようと、数百年もの前から計画を立てていたんです。その手前で、この世界を支配して天使族を増やしたいんです」


 アッセーはハッとした。


「そういや、天使族は人類からしか昇華できねぇ上位生命体だったっけ!」

「はい、その通りです。だからこそ人類を繁栄して、天使を多く誕生させて勢力拡大しようとしています」

「そんなに増やせるものなのか??」

「ええ」


 マーエルの説明によると、天使と悪魔はヒトからしか進化できない。

 オレみたいに違う方へ進化する場合もあるが、妖精王はエルフでもドワーフからでも種族を問わず昇華できる上位生命体。


 その中で天使と悪魔はかなり特殊なのだ。

 基本的にヒトは『妖精の種(フェアリー・シード)』でも天使族に、『魔獣の種(ビースト・シード)』でも悪魔族に進化できる。

 しかし天使族や悪魔族からしか出ない『善悪の実(フォビドン・フルート)』を、ヒトが摂食すれば天使族か悪魔族に一〇〇%進化できる。

 全てのヒトが摂食すれば確実に進化するのではなく、進化した時に必ず天使か悪魔になるって意味での確率だ。

 エルフや獣人など、ヒト以外の他の種族が善悪の実(それ)を摂食しても何も起きない。


「……説明ありがと。道理で人類のみの繁栄を目論んでるわけだ。やつらにとって人類は天使族の苗床か?」

「はい。その通りです」


 今度は険しい表情をしたモットツオ王様が詰め寄る。


「だから我々亜人や魔族が邪魔って事か……?」

「はい。なので私は尖兵としてあなたたちの国を利用してプロパガンダを実行していました。すみません」

「これは由々しき事態だ。早急に各国へ報告を!」

「ハッ!」


 後方で王様や竜騎士の命令でドタバタする龍人たち。

 ジャスティスメシアという秘密組織の野望、アッセーは深刻な物事と捉えた。


「女神さまが本物かどうかはさておき、奴らの野望は止めなきゃな……!」

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