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6話「ついに自由の身に! 新たなる旅立ち!」

 王様がとっておきの邪悪な魔法を放ってきたぞ。

 奈落の底へ繋がるらしい怨霊が住まう穴へ、死神はアッセーを絡め取って引きずり込もうとする。

 なんでそんなの会得してんだよ……。


「ふはははははは!! いざという時は我が命を代償に、対象者を永遠の奈落へ閉じ込めるのだ!! 例え相手が『世界天上十傑』だろうが逃れる術などないっ!」


 命の代償通り、王様の口元から血が垂れ続けている。

 リヘーンは「あ……ああ……!」と絶句する。もはや死は止められない。

 アッセーは呆れた。


「ちぇ……、しょうがねぇな。バレちまうけど背に腹は変えられねぇ」


 引きずり込まれる手前、アッセーは「おおおおおっ!」と気合いを発する。

 足元から沸騰する泡のように薄く灯る花畑が咲き乱れていって、アッセーの背中から四つの花びらのようなのが翼のように浮かんできた。黒髪だったのが銀髪に変化してロングに伸びていく。

 そして至高のオーラであるフォースが漲ってきた。


「「「うわああああああッッ!!?」」」


 大衆の皆さん驚かれてる。そりゃそうだろ……。

 極悪人が、更に人外のバケモノになったらな。


「すげぇ聖なるパワー!!」

「あいつ! 女神さまみたいになったぞ!?」

「マジか!?」

「男……??」

「なんか翼、はやしてんぞ!?」

「え!? うそ!? 天使!!?」


 なんか思ってた反応と違う。ともかく!


「デコレーションフィールド! 攻撃無効化!!」


 掌を空に向けてかざすと、背後の死神が「うあああ……」と呻きながらパラパラと花吹雪へ分解されていって、奈落の穴も光の小動物の群れに飛び散って収縮していく。

 そして力尽きようとする王様も全身から光の粉が散っていく。

 誰もが見惚れるほどの優しい光の花吹雪が渦を巻きながら四方八方へ緩やかに散って溶け消えていった。


「お……おまえは……いったい何者なんだ……?」


 疲れた顔のリヘーンが掠れ掠れに問う。


「妖精王」


 神々しい輝きを包むアッセーの目が向いてくる。その目の虹彩にファンタスティックな星型マークが窺える。

 まるで天使かと思うほど、神秘的な男。

 そして次第にこれまでのおかしな現象にも納得がいった。


「本気全然出してなかったんだな……」

「なんというか、その」

「間違いなく『世界天上十傑』クラスだろう。もはや人間社会の手に負えない天上の者。まさか小さな貴族に扮していたとは……」

「えっと……?」

「こんな愚かで醜い悪欲で虐げてきた我らをお許し下さい……。どんな天罰も受け入れましょう……」


 見渡すと、なんか教皇も王様も人々も跪いて静かになっていた。

 だからイヤだったんだ。

 この姿になれば人外のバケモン扱いされるし、そうじゃなくても周囲の人の見る目も変わっちまう。


「ふざけないでっ!! なーにが天使ぃ!?」


 なんとローラルがズカズカと無礼な態度で歩んできていた。

 人々は恐れ多いと悲鳴が微かに上がる。


「どうせ天使を気取ったハッタリなんでしょう!? そうやって私たちを騙そうたってそうはいかないわ! 死ね!!」


 どこからかボウガンを出してきて射ってきた。なんでそんなの持ってんだよ。

 鋭く飛んでくる矢も、アッセーに触れる手前で弾かれて宙を舞う。焦ったローラルは連射をするが、ことごとく弾かれてしまう。


「わりぃな。妖精王は上位生命体だっけ、に物理攻撃は効かねぇ」

「な……なっ!? な……なんなのっ!?」

「ちっと浄化させてもらうぞ」


 花吹雪が収束していって鈴を創造していく。

 スイカの大きさほどの純白に燦々(さんさん)輝く鈴────!


「トゥインクルサニー。快晴(かいせい)(すず)っと」


 その鈴を手に軽く振るう。すると優しい音色を鳴り響かせ、暖かい光の波紋が広げていった。

 キラキラ光飛礫を撒き散らし、純白の蝶々の群れがブワッと舞い、たちまち明るい世界に満ちる。


「ぎゃあああああああああああああッ!!!」


 頭を抱えるローラルの背中から、粘着性の黒く混濁した液体のような巨大な塊が抜け出ると、弾け散った。かなりデカい。

 それこそが彼女の悪意とドス黒い欲望、それらが浄化されたのだ。

 さっきの教皇が放った神聖の魔法とはベクトルの違う浄化。教皇のが攻撃的な浄化なら、アッセーのは癒しの浄化ともいえる。


「あらまぁ! なんて事! あたし、だいぶ失礼しちゃったぁ~!」


 なんと人が変わったように目をキラキラさせたローラルが祈るように手を組んで感激している。

 濁った目で歪んでた表情とは打って変わって、ただの美少女になった。


「やっぱり婚約破棄はしないでおきま……」

「ごめん。破棄で」

「そんなぁ~」


 るる~とギャグ涙を流して後悔するローラル。


 さっきまでわがまま振る舞いで悪辣としてたのに……。

 とはいえ、効力も永遠じゃないから元に戻るかもしれねぇけど。



 遠くから様子を見るしかなかったリッテ兄様は恍惚と見惚れていた。


「さすがはアッセー様……。さながら聖人…………。一生ついてゆきますぞ……はふんっ」




 こうしてこれまで捏造された証拠などで貶めて婚約破棄した悪質な行為により、リヘーンとローラルに厳しめな罰が与えられた。

 アルンデス王様もアッセーの両親に詫びて、いろいろ高い品物を授与した。

 当の両親もビックリしてたそうな。

 そして一週間後。


「アッセー、本当に行くのか?」

「ああ」


 無罪を勝ち取ったアッセーは、婚約破棄も果たして冒険に出る許しも得た。


「どうせ異世界転生したんだし、広い世界を見聞していきたいからな」


 両親は「気をつけてな」と手を振ってくれる。

 アッセーは「いってきまーす!」と空へビューンと彼方の空へ飛んでいってしまった。

 当たり前のように飛んでいくのを見てポカンとするしかない。


「……とんでもないものを転生させてしまったかも」

「ですね」


 置いてかれたリッテ兄様はギャグ涙を流して震えていた。

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