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57話「アッセー、世界天上十傑をも完封する!」

 マッハの猛スピードでアッセーへ迫るオオガの後方から飛沫が尾を引く。

 互いの視線が間近に迫った瞬間、カッパの張り手と太陽の剣(サンライトセイバー)が激突。凄まじい衝撃波が爆ぜて震撼が広がった。

 防御結界を張り続けているアルローとマトキは「ぐうっ!」と堪える。


「ぬうおおおおおおおおッ!!」

「おおおおおおおおおおッ!!」


 今度は目にも映らぬほど互いの乱打が激突し合う。

 パワーと重量で負けるアッセーは、器用に相手の威力を逸らすように捌き続けているので互角に持ち込めている。

 しかも転生前から“粘り”は一ミリたりとも衰えていない。

 どうしても崩せないとオオガは焦り始めた。


「く……、このおッ!」


 焦りのせいかオオガの刹那ほど見せた隙を、アッセーはカッと見据える。


「サンライト・スパークッ!!」


 すかさず居合抜きのように神速の一撃を腹に放つ。

 四方八方に稲光が迸るほどの渾身の一太刀を、オオガは咄嗟に膝を曲げてスネ足でガード。ビキッ!


「グッ!」


 その衝撃と激痛で仰け反るオオガ。

 即座に懐へ飛び込んでくるアッセーの剣幕に、オオガはゾッと恐怖を感じた。


「ぬおおおおッ!!」


 尻から激水流を放って、真上へ退避する。アッセーの横薙ぎが空を切って、遥か向こうの岩山を砕いた。

 間合いを離してオオガは着地。

 突っ立って見据えてくるアッセーに、オオガは「ぬぐ……」と低く唸る。


 オオガにとっては戦闘力が完全に勝っていると確信し、なおかつアッセーを押し切れると思っていた。

 だが、得体の知れない剣幕が恐怖を募らしてくる。

 するとガクッと片足から体勢が崩れる。気づけば、アッセーのスパークを防いだ足が赤く腫れていた。

 思い出したかのように激痛が足からビキビキ響き渡ってくる。


「折れたな……」

「ぐうううッ!」

「らしくないな。最初に対決した時は難なく防げていただろ?」


 オオガは「何をほざいてるッ!?」と、強気に吠える。


「だが、おまえは欲望の赴くままに女性陵辱の快楽に溺れてしまい、戦闘力ではこの上になく強くなったが、逆に武の心は見る影もなく弱くなっていたんだ」

「なに…………!?」

「転生前のおまえは大切な妹と学院の仲間に囲まれて、欲望は抑えられてたものの鍛えられた武の心を持っていて確実な強さを誇っていた。それが今では完全に消失してる」

「それが……どうしたッ!!」


 アッセーは太陽の剣(サンライトセイバー)に光子の雫を収束させていく。

 それにより大気が騒ぎ、大地に振動が響き渡っていく。


「いくら強かろうとも、武の心を忘れたおまえはさほど脅威を感じないって事だよ」

「うぬおおおおおッ!! 何知った風な事をッ!!」

「今まで何をやってたんだよ? こんな弱いの初めて見たぞ」


 オオガは心にグサグサくる痛みを覚えた。


「ただ欲望のままに暴力を振るうだけ。こんなんじゃ獣と変わらねぇ……。もはや最初っから勝敗は決まっていたようなもんだ」

「綺麗事をほざくなああああッ!!」

「そうか? 綺麗事か? じゃあ妹のチササがおまえのやってきた事を聞いたら、どう思うんだろうな……? 立派だと誇らしく思ってくれっかな……?」

「う……ぐッ! い、言うな……! やめろッ!」


 これまで以上に深く心を抉られる。

 懐かしくも飢えるかのように愛しい妹の姿が脳裏に浮かぶ。


「いや、チササは心底軽蔑するだろうな……」

「やめろッ! やめろおおおおッ!! これ以上……言うなあああッ!!」


 己の醜態を妹のチササに知られたくない、それだけは絶対に避けたい。

 魔族として転生して、今日まで欲望に溺れた黒歴史に羞恥が耐え切れなくなっていた。

 頭を抱えるほど強い後悔でオオガは過呼吸に陥っていく。


「では」


 太陽の剣(サンライトセイバー)は徐々に大きくなっていって、銀河を模したように螺旋状の装飾が広がり超巨大な真っ直ぐの刀身が伸びていく。

 オオガは見開いて「ヒ……」と恐怖を感じて、冷や汗が全身を濡れる。


「改めて『武の心』の脅威を、己の身でもって思い知ってくれ!」


 腰を落とし、超巨大な銀河の剣(ギャラクシィセイバー)を居合術のように構えていく。

 オオガは痛む足に構わず「うぬああああああッ!!」と巨躯で迫り、大きな手で引き裂かんと掴みにかかる。

 だが、もはや論破されて乱れまくった精神では自暴自棄でしかない。


「三大奥義が一つ『賢者の秘法(アルス・マグナ)』!!」


 カッとアッセーは鋭い眼光を煌めかした。


「ギャラクシィ・シャインスパ────クッ!!」


 光速とも錯覚し得る刹那ごとき速さの白刃がオオガの脇に食い込み、砕けた地盤もろとも遥か上空へと斬り飛ばし、四方八方に電撃迸る衝撃波が派手に爆ぜた。

 遥か上空へ舞ったオオガはバキボキ全身の骨が砕かれて、内臓にも重大な損傷を被り「ガッパァッ!!」と大量に吐血し、全身から血飛沫を噴き上げた。

 その巨体が乱雑に宙を舞い続け、なおも吹き荒れる衝撃波が暗雲すら吹き飛ばして青空へと変えていった。

 そのままオオガは大地へ落下激突。煙幕に巻かれながら仰向けで微動だにできない。


「今の……なに…………?」

「で……デカい剣で吹っ飛ばした……」

「あれが……妖精王さまの二つ目の奥義なのです!?」

「すごい…………!」


 呆然とするローラルたち。

 天地を揺るがす激戦もさる事ながら、上空の暗雲を吹き飛ばして青空にするほどの奥義に驚くしかない。

 そして世界天上十傑の一人を変身もせず倒してしまった。


「こ……このワシが…………ゴブッ!」


 ズタボロのオオガは苦悶しながら吐血。


「敵を殺したくて三大奥義を会得したわけではない。憧れの技でもあり、危険な技でもある。これは己にとって乗り越えるべき壁に対する技。己の欲望のままに暴力を振るう為のものではない」

「き……詭弁(きべん)だ…………!」

「チササがいたなら、暴漢に成り下がったおまえを止めようと戦うだろう。その為に鍛え抜いた技を振るう。これはそういう武の心だ」

「く…………」

「もう、おまえはこれ以上罪を犯さなくて済む……」


 ナッセが儚げな顔をしているのを目の当たりにし、オオガは僅かに見開いた。

 許せないから殺してやる、という感情ではそんな顔はできない。これはまるでチササの代わりをしているかのようだ。

 そう観念してオオガは穏やかな表情に落ち着いていく。


「し……死ぬの……?」

「いや死んでねぇ。オレのこの奥義はギリギリ死なねぇぐらいダメージを与えて、スキルなどを無力化する。いちおう不殺の奥義だしな」


 すると見計らったかのように女の魔族が駆け寄ってきて、憎しみのままにナイフをオオガの胸に突き立てた。

 オオガは「ぐがはっ!」と見開いて、血を盛大に吐いて息絶えた。

 血を濡らすナイフを手に息を切らす女の魔族は、今度はこちらを睨んできた。


「我が娘の仇は討たせてもらったわ……!」

「えっと……?」

「この下郎を追い詰めた事だけは感謝する。でも生かすのだけは許さない! ……だから殺させてもらった!」


 そう言うと駆け出して、向こうの森林へ消えていった。



 女神は、そんな様子を血眼で見て《ぐぎぎぎ!》と歯軋り。

 魔人を絶滅させた上に、オオガの繁殖行為を阻止した事に憤っているようだ。


《あ~~も~~!! あのバカ、なにやってくれんのよ~~~~!!》


 頭を抱えながら上半身を揺らし、胸がプルンプルン揺れた。

 そんな様子を変態イルカはご満悦。にこっ。

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