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51話「悪の法王を追い詰めろ!!」

 贅沢な暮らしで鍛錬を怠ったトッパイヤーは見せかけだけの強敵になり、あっけなく倒された。


「行くぞ!!」

「ええ! この私が未来の旦那様を助け出してみせますわ!」


 法王エッタバドが根城にしている大神殿まで、リッテとローラルは破竹の勢いで教徒を蹴散らしながら突き進んでいた。

 大司教トッパイヤーが倒れた事で士気を失った教徒は烏合の衆でしかなかった。


「ところが、そうはさせねぇぜ!」

「ここは我ら三大枢機卿が通させるかよ!」

「ああ! 我らの聖なる力を思い知らせてくれようっ!!」


 無駄に豪勢な法衣を纏う太った三人衆が聖なるオーラを発していく。


「海の枢機卿ホーロフ!」

「地の枢機卿シトシーオ!!」

「天の枢機卿キッチヨ!!」


 青い肌のデブが魔族ホーロフ。金髪を逆立てたヤンキーデブがシトシーオ。そしてかつては黒髪好青年だったデブがキッチヨ。

 いずれもかつては武力五〇〇〇〇を超えるほどの猛者()()()

 しかし、リッテとローラルは突進しながら得物を振るう。


「秘龍剣・爆裂飛龍破ーッ!!」

「おどき! 令嬢扇殺法・飛燕回天舞!!」


 リッテが剣を突き出す事で、旋風を纏いながら真っ直ぐ突き進む巨大な長龍(ナーガ)が放たれた。

 そしてローラルは踊りながら突進する事で斬撃の嵐を周囲に撒き散らしていく。


「「「がはあああああああああああーっ!!」」」


 二人の必殺技を食らい、三大枢機卿は顔面を上空に向けて天高く吹っ飛ばされていく。法衣が破かれて全裸に剥かれていったぞ。

 断末魔として「ばかなーっ! この枢機卿が敗れるとはーっ!」と吐いてから、頭から床に落下して戦闘不能に陥った。

 あっけない末路である。


「トッパイヤーってやつがまだ強かったぞ。鍛錬サボりすぎ……」


 呆れながらアッセーも聖女マトキや穏健派教徒たちとともに、リッテとローラルを追いかけるように大神殿へ走っていく。

 アッセーはローラルに見つかると面倒なので、穏健派教徒に隠れながら同行している。


「なんで前屈みに走ってるのです?」

「素早く動けそうですね」

「……後で面倒になりたくないから、あらかじめ説明しておくぞ。前を走ってるローラルって令嬢は、元々オレと婚約してたんだ。親が勝手にな」

「婚約者……!?」


 やはりユミの感情に黒いのが差す。


「だがリヘーン王子と結婚したいが為に、ローラル令嬢はオレと婚約破棄した上に処刑を目論んでいた」

「ヒトは残酷なのですっ!」

「処刑……ひどいですね」

「オレが強すぎて処刑が叶わず無罪放免になって婚約破棄できた。それにローラルも妖精王の能力で浄化したんだが、なぜかあんな武闘派キャラになってる」


 ローラルは扇を振るって、火炎の渦を放って大神殿の大扉を粉砕した。

 以前は戦闘力皆無なキャラだったのに、なぜか扇を振るって戦う強キャラみてーになってる。一体何があったんだ?




 ラブホみたいな部屋へ部下二人が慌てて入り込んできた。


「大変ですっ!! エッタバドさまーっ!」

「法王様! 例の反聖職者どもが、ここまで侵入してきましたーっ!!」

「ナオオオーッ!? きさまら、入ってはならぬと……、え? なに?? 何と言った!?」

「トッパイヤーさまも三大枢機卿さまも倒れましたっ!!」

「えっ!? マジ!? ウソだろ……?」


 ハーレムでパコパコーンしてたエッタバドにとっては寝耳に水だ。

 絶句して青ざめていく。

 そのままラブホみたいな部屋のドアが爆破されて、部下二人は「ぎゃあ!」と吹っ飛ばされた。


「な、なにやつッ!?」


 殴り込んできたリッテとローラルの姿に、全裸のエッタバドはビビって竦む。

 囲んでいた全裸女は「きゃあああ!!」とエッタバドの後ろへ隠れる。

 しかし聖女は法衣をサッと身につけて、ツカツカ歩みながら睨む。


「この聖女レウサさまと法王エッタバドさまに、なんと無礼を──!!」


 しかしローラルが扇で聖女の頭を殴って床に打ち伏せた。ガガン!

 目を回して「きゅう……」と気絶した聖女に、エッタバドは恐怖で竦んでしまう。

 やはり名ばかりの聖女。あっけない。


「き、きさまら!! この法王さまに歯向かうというのか!? 女神さまに逆らうにも等しいぞっ! その傲慢不遜な行い、女神さまは見過ごすまい! 地獄へ落ちるぞー!」

「……その前に、今こうしているお前の方が地獄落ちるんじゃないか?」

「裸でなにやってますの?」

「うっ!」


 エッタバドはガチガチ歯を鳴らして泣きそうな顔をしている。


 アッセーは穏健派教徒の後ろから、こっそり成り行きを見守っていた。

 放っておいても解決しそうな勢いだ。

 しかし、エッタバドはどこかで見たような気がする。転生前の世界で会ったような?


「もう独裁体制は瓦解寸前なのです」

「終わりそうですね……」


 しかしエッタバドはベッドの側のサイドチェイスから魔法陣カードを手に取るなり、悪辣な笑みに変わっていく。


「ナオオオ……! この法王さまは決してキサマら反聖職者どもに負ける事はないのだっ!」


 魔法陣カードをかざされると、リッテとローラルとの間の床に、邪な赤紫色の魔法陣が浮かんできた。

 そして両端に篝火が具現化された。紫の炎……。


「この女どもを生け贄に捧げ──!」


 なんと非情にも聖女を含むハーレムの女を渦に巻いていく。


「うさーっ!?」「エッタバドさまー!?」「きゃあああ!!」「いやだー!」


 悲痛な悲鳴を上げながら女は全員、渦の中へ飲み込まれて血飛沫が散った。

 道具扱いにしてしまった外道さに吐き気がする。


「女神エーニスックを儀式召喚だあああああああッ!!!」


 赤紫の魔法陣から、闇の旋風が吹き荒れた。

 戦慄を感じさせる轟音と振動が響き渡る。そして魔法陣から巨大な黒いシルエットが飛び出していく。

 漆黒の翼を大きく広げて両目を輝かせながら、禍々しい威圧でこの場を席巻していく。

 アッセーは見開く。


「こいつ……、女神さまじゃねぇっ!!」


 本物と会った事があるから分かる。こんな邪悪なのじゃない。

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