49話「聖域でリッテとローラル大乱闘!」
シーンジロ王国の奥にある段差を連ねた先の大きな神殿は法王が住まう根城でもある。
同時に法王となったエッタバドがふんぞり返る、悪の秘密結社とも言える。
「ナオーッ! 何事だ?」
黄金の彫刻や聖杯などが並ぶ豪勢な部屋で、王座のような贅沢な椅子にふんぞり返る法王は怪訝な目を見せた。
二人の幹部が頭を下げる。
「エッタバドさま! 大変にございます! なんでもアルンデス王国の反聖職者がカチコミしてきたようです!」
「それが滅法強くて、我らでは手に追えませぬ!」
法王エッタバド。
今まで贅沢してブクブクに太っている。黄金の王冠や首飾り、指輪など豪勢に自分を飾って、神聖なる法衣を身に包み偉そうにしている。
「ナオナオ……。この法王エッタバドさまに逆らうとはな、命知らずめ」
実は何を隠そう、エッタバドも異世界転生者である。
前世も熱狂的な信者で好青年のフリをして他人を騙して信者に引き込んで、自ら昇進していこうとする強欲者。
しかも本性はパワハラ、セクハラ三昧で救いようがない。
実はナッセと因縁があったりする。
その時は邪教徒ナウォキとして卑怯な手を使って追い詰めようとしたが、惨敗して玉無しにされた挙句に投獄された。
数年ぶりにドカタやらされる制約で解放されたが、納得がいかなかった。
そんな折、ナッセと同様にこの異世界へ転生していたようだ。
「前世でも散々な目にあったからな。この世界ではユニークスキルを得て、こうしてトップに立てたと思った矢先に……」
「法王さま?」
「前世……?」
「いやなんでもない。貴様ら有象無象どもは気にせんでいい……」
すると黄金の扉が開いて、黄金の飾りを身につけた聖女が現れた。
浅蘇芳という薄い渋い紅色のツインテールで、薄布の法衣で強調される超巨乳、赤い瞳に多重輪の両目。
「エッタ! 追放した聖女の娘は見つけられないうさの!?」
「聖女レウサちゃん、落ち着け」
「うさうさーっ! あの聖女の血を絶やさないと安心できないうさーっ!」
現存の聖女レウサは大変ワガママな性格であった。
エッタバドは下品な笑顔で近づいて、よしよしとセクハラしてレウサの喘ぎ声が漏れる。
その気になったのか「俺様はヤる。お前らで片付けろ」と怒鳴り、奥の部屋へ行ってしまう。
そしてギシギシ軋み音とウサウサーン喘ぎ声が響く。
「いつもああですな」
「毎日何発もできる絶倫ユニークスキル。それと相性が良い聖女レウサのユニークスキルは『妊娠する事ができる』という任意効果。つまり妊娠しないを選び続けて、何度でも生ができる」
「……こんな事を言いたくないが、もっとマシなユニークスキルないもんかね……」
「言うな」
奥でパコパコパコパコーンって音が響き続けているぞ。
そうやって法王エッタバドは、何十年も淫らな事に溺れ続けていたのだ。
大勢の武装した強硬派教徒は戦慄する。
リッテは「おおおああああッ!」と剣を振るって、教徒を数人吹っ飛ばしていく。
そして悪役令嬢ローラルは扇を振り回すように踊って、周囲の教徒を吹き飛ばしていく。
「こいつら強えッ!!」
「なんなんだッ!? こいつらーッ!!?」
リッテ・クルナッツ。アッセーの実兄であり、クルナッツ家の貴族。そして後継者。
彼もまた異世界転生者。
「生前では、邪竜の瘴気で大地が腐る凄惨な世界で人々の希望を背負って邪竜王を倒してきた英雄! この程度で退けられると思うな!!」
ナッセと違う世界の転生者。
世界を巣食う邪竜によって荒廃していく大地で、勇者を名乗って苦難の旅を続けてきた頃と比べれば、この世界はまだ易しい。
両親のスパルタ教育に嫌気がさして幼いまま抜け出して、ソロでこの世界を生き抜くほどである。
「このまま突破させてもらおう!」
「エッタバド聖世教を舐めるなっ!! 喰らえ!! シャイニング・スラッシュ!!」
凄腕の教徒数人が一斉に横薙する事で、巨大な剣閃を飛ばすジョイント必殺技が放たれた。
左右に広く伸びた三日月の斬撃は大気を切り裂き、リッテとローラルへ襲いかかる。
「そちらこそ、この竜闘士リッテを舐めるなーッ!! 我が極めし秘龍剣を喰らうがいいーッ!! 神滅白龍破ーッ!!」
旋風を巻き起こすほどに剣を振り降ろし、具現化して放たれた純白の長龍が吠えながら輝きを放つ。
あまりにも眩しくて見切るは不可能。
「ううっ! 見えぬっ!」
「眩しすぎるほどのドラゴン!」
「目がァ~目がァ~!!」
「こんなん見切れるわけないーっ!」
そのまま純白の長龍が突っ込んで破壊を撒き散らす。
それはジョイント必殺技さえ破り、数人の教徒を「ぐわああああああーっ!!」と衣服を破き散らしながら吹き飛ばしていく。
煙幕が流れ、教徒たちは全裸で横たわっていた。
「なかなか強いですわね!」
「フッ! そちらこそ」
ローラルとリッテは背中合わせで笑み合った。
それをアッセーは遠くから眺めていて「そのまま恋仲になってくれねぇかな」とボヤいた。
「強いな……。しかしキサマらはここまでだ」
なんと二人に立ちはだかる異様な教徒がいた。
ツンツンに赤髪を逆立てた強面の二メートル強の大男。丸メガネをかけている。白い法衣を脱ぎ去り、全身から火炎オーラが大地を揺るがしながら噴き上げられる。
周囲にも熱風が吹き荒れて、教徒たちも思わず腕で顔を庇う。
「こいつ! 他と違う……!」
「なんなの!? このムサイ男っ!?」
「名乗っておこうか……。我が名は大司教トッパイヤー」
ビリビリと威圧が響いてきてリッテもローラルも戦慄を帯びていく。
地を爆発させるほどに駆け出し、狂気の笑みで獰猛に襲い掛かるトッパイヤー。




