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46話「神聖なる聖域に潜む欲望の闇」

 宗教大国で地雷を踏んでしまったアッセーは苦慮する。


「しかたねぇ! 変装すっか」


 ボッとフォースを溢れさせて妖精王化した。その際に黒髪が銀髪に染まってロングになる。

 徐々にフォースを体内に抑えていって背中に浮いている羽を服の中へ収納させた。

 そして別の服装に着替えていった。

 アルローもユミも服を変えつつ、髪の毛を隠すフードをかぶった。


「あらかじめポンチョを持ってて良かったのです」


 アルローはルンルンと新衣装に上機嫌だ。

 そしてなに食わぬ顔で教徒が行き交う路地へ出る。やはり彼らは殺気立って反聖職者とやらを探し回っているようだ。


「おまえっ! ……いや、違うか?」

「どうしたんですか?」

「それがな、黒髪の男が女神さまを不埒に言いおった! こんなやつがこの国にいると穢れてしまう!」

「ひょええ! 大変ですね。……そいつ捕まえてどうするんですか?」

「磔の刑で火炙りだっ!」


 目がイッているとしか思えない教徒。

 要するに反聖職者は死刑。極端すぎる……。


「君と同じくらいの背丈で黒くて短髪の少年だ。それに同じように女の子を二人連れていた。そいつを見つけたら知らせてくれ!」

「わ、分かった。見つけたら知らせるよ」

「ありがとう。君に女神さまの祝福のあらん事を……」


 そう言いながら会釈すると、教徒は走り去っていった。ふう……。

 ちらほらこっちを見る教徒もいたが、別人だと認識してくれたようで全員通り過ぎていった。


「今回ばかりは妖精王に変身できる事に感謝するよ」


 銀髪ロングで耳も尖っていてエルフみたいなもんだし、同一人物とは分からないだろう。

 ただ、変身した弊害でヒトの感情をいやがおうにも感知してしまう。

 見た目こそ綺麗に整っちゃいるが、押さえ込められた欲求や、隠しきれていない欲望が溢れている。


「確かに見栄最高峰の国だなぞ……」

「なのです」


 大半の教徒は欲求を抑え込められて、信仰に徹するのが多い。

 しかし上の階級ほどおぞましい欲望が滲み出ている。支配欲、性欲、金欲、それがダイレクトなので頭が痛くなってくる。

 こちらのユミやアルローを見た教徒に性欲が沸くのも見えてしまう。


「今日は遅いから仕方ないが、明日にでも出よう」

「なのです」

「そうですね……」


 結局反聖職者は見つからなかったのか、静かになっていった。

 ただ似顔絵を張り出したりして、彼らの執念深さが窺えているようだ。


 ある宿へ入ると、同じ教徒がカウンターにいた。


「ここはやめよう」

「えっ!?」


 入るなり、回れ右して出ていく。

 ユミはワケが分からず戸惑う。


「……あそこ、誘拐するところかもしれん。観光客あたりが泊まったら、寝込みを襲って身包み剥がしてふん縛って奴隷か性奴隷に売り出す。たぶん裏社会と繋がってる宿屋だ」

「分かるんですね」

「ああ」


 妖精王に変身しているので、裏の顔が見えてしまう。

 なんせユミとアルローを見るなり、美味しそうに情欲と金銭欲が溢れ出してたからな。


「旅のもの、待ってくれ!!」


 振り返るとやはり例の宿屋の教徒が呼び止めてきた。


「泊まるんだったら……」

「わりぃ、高そうだったんでやめようと思っただけだぞ」

「まけとくよ」

「すまん。神聖な聖域でそんな事させられねぇ」

「女の子二人でうろつくのは危ないぞ」

「え? 聖域で??」

「……う」


 やはりヒトはウソを巧みに使う。

 ああいう風に心配してくるが、漏れ出している欲望で上辺だけと分かっちまう。


「……悪い事は言わん。今日はもう遅いから、泊まる方がいいぞ」


 獲物を逃したくないと食い下がってくるが、アッセーは首を振る。


「別の宿にするよ」

「ああ、そうかい。気をつけてな」

「ああ」


 残念そうに背中を見せて引き返していく。舌打ちのような憎悪が一瞬湧いてきたが、欲望とともに萎んでいくのが見える。

 ふう、なんとかごまかせたな。




 ────国中の宿屋を回った結果。


「なんなんだよ!! あっちこっちグルじゃねぇか!!」


 頭を抱える事態となった。

 そうなのだ。全ての宿屋が同じように裏で繋がっていたのだ。

 表向きでは聖域を謳って潔白を誇示しているが、実際はそれを隠れ蓑にして犯罪まかり通ってる。


「ん、って事は……」


 もしも、裏で繋がっているという事は秘密組織のようなものがどっかにあるはず。

 この聖域を隠れ蓑にして、欲望渦巻く犯罪組織が牛耳っている可能性が高い。

 チラッと高い所に立っている大きな神殿を見やる。


「まさかな……」


 高台まで階段が段差で繋がっていて、一際大きく聳え立つ大きな神殿。

 巨大な女神像が前でポーズを決めている。

 今は夜で不気味に静まり返っているが、なにやら邪な気配が漂っているようにも見えてしまう。


「あそこは法王や教皇など高い身分の信徒が住まうところなのです」

「国中を回っても組織がある気配はなかったが、もしかしするとそうかもしれん」

「なんの話をしているんですか?」


 年相応に事情を知らぬユミは首を傾げる。


「君たち、夜更けに何をしているんですか?」


 なんと見回りに来ている教徒が二人、ランプを手にこちらを不審そうに見ている。

 ついアッセーはほくそ笑んだ。

 あらかじめ念の為に作っておいた小さい鈴を、服の裾から取り出す。


「ちょい失礼」

「え?」「ん?」


 リーン……、浄化の音色が響き渡る。

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