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41話「私利私欲な願い」

 最下層魔人の願いを叶えるを独占したいドクセー公爵は、腕輪の仕様を替えられたものの念願の願いを叶えてもらえた。

 光が収まっていくとドクセー公爵自身も実感したのか、笑い始めていく。


「はははははははっ! 不思議な力が全身に満ちてくるようだ!」


 ギンボウは怪訝に「本当に不老不死になったのかよ?」と首を傾げる。

 ノダークは一発爪を放つ。それはドクセー公爵の心臓を貫く。血飛沫が噴き出るが、巻き戻しされるように血も傷口へ吸い込まれていって閉じてしまう。


「ならこれはどうだっ!?」


 ギンボウは全オーラ込めたハンマーを振るって、肉片に四散させた。

 しかし巻き戻されるように徐々に人型へと戻っていって、何事もなかったかのようにドクセー公爵が全裸で復活した。たまちーんブーラブラ。


「服は戻せないのね……」

「しかし、本当に不老不死になれるなんて……信じられん」


 顔を赤くして目を背けるノダーク。そして冷静にクリランは呟く。


《さて、次は貴様らが願いを叶える番だ。申してみよ!》


 するとドクセー公爵は「それは必要ない!」と悪辣に笑んでナイフで斬りかかってくる。

 しかしロクックは冷淡に「ロック」と6と9で動きを止めてしまう。


「うぐ!」

「願いを独り占めして、不老不死の体で俺たちを始末しようとしたようだが、甘かったな」


 ロクックは歩み寄って、ドクセー公爵の指をボキンと折る。


「ひぎゃあああああ!!」

「痛みはそのまま感じるようだな」


 折れた指は元に戻るが、ドクセー公爵は焦燥した表情に変わっていく。


「ま、待て……!」

「その超速再生からして痛みで失神はしないようだ。永遠に拷問を楽しめるってわけだ」

「ひ……! やめろ……!」


 ロクックのおもちゃとして嬲られて、悲鳴がつんざく。


《さて、叶えてもらう願いを言え》

「じゃあ待ってくれる?」

《そういう類を願いと見なさないぞ。ちゃんと望みをいうことだな。しかし考える暇は与えてやろう》


 ノダークが「待ってくれる?」と“願い”として受け取るようにミスリードしてみたが、分別できるようで普通に待ってくれるそうだ。

 いやがおうでも願いを叶えさせたいようだ。

 現にドクセー公爵は確かに不老不死を叶えて、致死レベルの拷問でも死なず苦しみ続けている。


「じゃあオレから言うぞ」

《言うがよい》


 アッセーが一歩足を踏み出す。


「オレは転生者だ。元いた世界のオレはどうなっているか聞きたい。できるか?」

《……ふむ。かなり遠い異世界にもお前がいる。こことは変わった異世界だ。どうやら分霊(スクナビコナ)されているようだな。しかし奇妙な存在だな》

「じゃあ、向こうのオレとリンクできねぇ?」

《願いは一つまでだ。次》


 するとアルローが「じゃあ願いを言うのです! アッセーさんと向こうのとリンクできないのですかー?」と願いを言ってきた。


《ダメだ。自分の望みを言え。他人の望みを代わりに叶えるのは許さん》

「むう、なのです……」


 するとユミが飛び出す。


「アッセーが私のことを……むぐっ」

「待て!」


 慌てて口を塞いだ。むぐむぐ~。

 恐らくアッセーが惚れるように願いを言うつもりだっただろう。


「よおおし! じゃあ、おまえら魔人消えちまえ!!」


 ギンボウが叫ぶ。


《魔人の存在を脅かす類の願いは無効だ。別の願いを言え》


 魔人はニヤリと笑んでくる。ギンボウは「くそったれ! この嘘つき魔人がー!」と吠える。

 こいつ都合よく叶える願いを選んどるな。


「じゃあこのトコロテン抜刀斎を元の世界へ帰せ!」


 なんとカイガンがアッセーへ指差す。


《ここで転生した以上、ここが元の世界になる。願いは無効だ。別の願いを言え》

「だったらよー、こいつすごく弱くしてくれ!!」

《よかろう》


 思わずアッセーは「やば」と萎縮する。

 魔人は伸縮し続ける目を赤く輝かせ、アッセーを光が包むが弾け散った。

 しばしの間……。

 さすがに気づいたのか魔人ランプーマは冷や汗をダラダラ流していく。


《ね……願いは聞き届けたが……対象には効かなかった……。次の者の願いを言え……》

「なんでだよおおおおお!!?」


 カイガンは地団駄を踏む。

 なぜか魔人はアッセーから目を背ける。天敵となる妖精王が怖いようだな。


「じゃあ俺様を世界最強にしてみろよ!」


 ギンボウが叫ぶ。


《反動として寿命をかなり縮めるがよろしいか? たぶん数分しか生きれないが》

「え? ちょっと待って! 待って待ってなしなし!」

《不老不死とかはともかく、最強にする為には強烈な改造が必要であり負担がかかって死に至る人が多いのだ。このアッセーみたいに日々鍛え上げてなければ、叶えられない》


 ギンボウは「くそおおおおおお!!!」と吠えた。

 するとカイガンはアッセーに振り向く。


「トコロテン抜刀斎、ケンシンはウソだったのかよおおおおお!!?」

「あ、バレた?」

「アッセーはダサいからケンシン名乗ってたんだなー! はっはっは! アッセー抜刀斎ってか~」


 いや、バレてねぇわ。こいつバカだ。


「じゃあ俺を王様にしてくれ」


 なんとロクックが願いを言う。すると魔人はニヤリと笑む。


《よかろう! 望み通りにしてやろう》


 なんと王冠と高そうなマントが装着された。いかにも王様だ。


《どこかの国の王様とは明言されていないから、見た目だけな》

「ほう」


 ロクックはわざと単純な願いを叶えて、リスクをゼロにしたんだ。

 魔人的にはどうしても全員の願いを叶えるつもりなので、拒否できないのが引っかかってたのだろう。

 そして、恐らく魔人の狙いは“その後”にあると見越しての事だった。


「じゃあ私を美人にしてくれる?」

《よろしい》


 ノダークの微ブスだったのが絶世の美女になってキラキラオーラが充実された。


「じゃあ俺は長身のイケメンにしてくれ」

《承った》


 フランケンのようなクリランは一八〇もの長身のイケメンに変身した。


「ノダーク好きだ!!」

「ええ、クリラン結婚しましょう!」


 なんとクリランとノダークが抱きついてブチュブチュンバ濃厚キスを始めた。唇を執拗に重ねて舌で絡み合っているぞ。それが長く続き、ハートマークの嵐が吹き荒れる。

 前々から恋愛してたのだろうか、容姿が変わった途端性欲全開になりおったわ。

 ロクックとギンボウは白目で絶句している。

 カイガンは「うらやまけしからああああん!!」と嫉妬全開で荒ぶっている。

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