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39話「世界最大ダンジョンの秘密!?」

 壁に埋められたカイガンを回復させて起こすと「ぜってー許さないからなトコロテン抜刀斎」と捨て台詞を吐いたぞ。

 二階層のボスも魔人だった。

 冬虫夏草みたいな感じで、犠牲者の頭上から出ててイモムシみたいに胎動を繰り返し、先っぽの目玉がギョロギョロしている。

 そいつらが七人いて、ゾンビのような挙動で襲いかかってくる。


「死にやがれ!! 煌穿眼(コーセンメ)ッ!!」


 鬱憤晴らすようにカイガンは両手の魔眼からビームで横薙ぎに払って一掃した。

 アッセーは聖剣で目にも留まらぬ抜刀で、柱の裏に隠れていた魔人を斬って捨てた。


「さすがカイガン殿でござるな。性格が残念ではあるが……」

「うっせーよ!」


 ロクックは汗を垂らす。


「恐ろしく速い抜刀術……。俺じゃなきゃ見逃すね」

「自分で一撃粉砕する拳(ワンパンマン)とか言っておいて、何なんだよあいつ!」


 ギンボウのセリフにカイガンも「ん?」と怪訝な顔をした。


「とりあえず三階層へ降りよう」


 三階層は、どことなく空間が広がっている気がした。まるで巨人が住んでいるかのような広さだ。

 激しい戦闘の後か、壁や柱の残骸が散乱しているところも見かけた。

 この世界最大ダンジョンは複雑な迷宮の上に、国が何個も入るほどの途方もない広さになっている。


「並ぶほどの多くの冒険者が入っているにも関わらずあまり会わないのは、ダンジョンそのものが広すぎるからだな」

「そのようだな」


 ロクックとクリランはそう交わす。


「えっと、最下層ってどんくらい下だ? でござる?」

「初めて入るから、そこまで知らないわ」


 ノダークは首を振る。

 無数のトカゲが這い寄ってくる。ロクック、ノダーク、ギンボウ、クリランは身構える。

 カイガンは煌穿眼(コーセンメ)で横薙ぎに払って一掃していった。呆気ない。

 遠い天井から落ちてくるトカゲを、アッセーは抜刀術で裂いた。


「やはり……」


 アッセーは落ちてきたトカゲの断面を見て確信した。

 何か掴んで引き抜く。なんと線虫のように細長いのが気持ち悪く蠢いていた。先っぽに目玉がギョロギョロしている。


「ここにいるモンスターも魔人に寄生されている……でござる」

「「「なにっ!?」」」


 ギンボウ、ノダーク、クリランは驚く。


「低級の魔人か……?」


 アッセーが掴んでぶら下げている線虫魔人は長く伸ばして、股間へ目指そうとした。すかさず片方の手でデコピンして吹き飛ばす。

 目玉を失ってグッタリ動きを止めた線虫魔人は虚空へ溶け消えていく。


「恐らくここには線虫のような魔人がわんさかいて、モンスターや冒険者に寄生して操っているみたいだ。しかもさっきのように隙あらば、穴あるところから寄生しようとしてくるでござる」

「おまえ、そんな勘のいいやつだったか?」


 カイガンが不審そうに聞いてくるが無視。


「なるほど、本体の魔人は寄生虫みたいな挙動をしているが、本物と違って単独でも動き回って宿主を求める事もできる。厄介だな……」

「寝転がる事できねーじゃんか!」

「ちんたらすれば寄生されて、こいつらの仲間入りって事か」


 ロクック、ギンボウ、クリランはそれぞれ苦い顔をする。

 ノダークは嫌な予感がした。


「ひょっとして、ここはダンジョンなどではなく……魔人の住処(すみか)では?」

「あっ!?」

「なにっ!?」

「冗談だろ?」


 ビビったアルローとユミがアッセーに抱きつく。


「そりゃ、道理で宝石ばっかで宝箱なんて一つもねーわけだ!」


 カイガンが怒り狂う。

 アッセーは頬に汗をたらし、ノンビルする暇はないと悟る。


「だったら下をぶち抜くしかないな」

「は? トコロテン抜刀斎、何言ってんだよ!?」

「「「「え??」」」」


 カイガンと雲旅団(クラウド)の反応を気にせず、アッセーは聖剣を抜く。

 アルローとユミに「しっかりオレに捕まっとけ」と言うと、即座に両脇に抱きついてきた。


「昇龍秘剣流! 最下層までぶち抜く閃!!」


 聖剣を床に突き立てて大規模破壊し、砕けた大小の破片が落下していく。

 驚き慌てるカイガンや雲旅団(クラウド)も一緒に落ちていく。


「なんの! 泡浮眼(アワウキメ)ッ!!」


 カイガンは足裏の魔眼で泡をモコモコ膨らませて自身を浮かせる。まるで浮遊する雲に乗ってる感じだ。

 しかしアッセーと雲旅団(クラウド)はそのまま更に四階層の床もぶち抜く。

 次々と下まで突き抜けていくので、カイガンも慌てて追いかけた。


「そのまま降りるでござる!!」


 五階層、六階層、七階層、八階層、九階層……、破竹の勢いでアッセーたちは最下層まで目指していった。

 一緒に落下し続ける雲旅団(クラウド)は「ぎえええええ!!」と喚くしかない。

 そんな大胆な事を繰り返すアッセーは周りの変化にも察していた。


 下へ行くほど空間が広がっていき、色んな魔人に加えて宝石や鉱石も多くなってくる。


「やはり魔人の巣窟か」


 ついに九九階層となる最下層へ降り立つと、巨大な心臓がドクンドクンと脈打つ広大な細胞広場が広がっていた。

 まるで大きな生き物の中にいるかのようだ。

 落ちてきた雲旅団(クラウド)を念力で惰性を殺して、無事着地させた。


「ちょっと説明してからやってくれないか? 流石に驚くんだが……」

「命縮んだわよっ!」

「つーか、とんでもない事しやがって! ……ま、まぁ勘弁してやるけどよ」

「だが、しかし……これは……?」


 不満げなロクック、へたり込んでいるノダーク、憤るがアッセー相手には尻すぼみのギンボウ、最深層を見て驚くクリラン。

 後から降りて来たカイガンは辺りを見て目を丸くする。


「なんだ!? これはっ!?」


 脈打っている巨大な心臓に目玉がギョロリと開けてきた。

 同時に重苦しい威圧が席巻し始めた。

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