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38話「カイガンの残念な性格!」

 ジャキガン学院のカイガンが、なんとこちらに転生していた!?

 大柄な体に多くの魔眼を持つ男。様々な能力を持っていて強キャラにも思わせられるが、性格が残念で意外と弱い。

 ……少なくともナッセことアッセーと比べればだが。


 アッセー、アルロー、ユミと一緒に『雲旅団(クラウド)』に加わって世界最大のダンジョンを潜っていると、壁を破壊して出てきたカイガンが仲間に加わったぞ。


「ケンシン……、もしかしてお前も……日本の転生者か?」

「ああ。そうでござる。しかしカイガン殿もこちらに来ていたとは……」

「おいおい!? あのテンスケか!?」

「……その名は昔のもの。今はケンシンでござるよ」


 ムッとして見せると、カイガンは確信したのかニターと笑んでいく。


「ハッ! トコロテン抜刀斎と一緒になるとは世も末よな~」


 明らかにバカにしくさっている態度だ。そして勘違いしてくれて好都合。


「またトコロテン抜刀斎……! それはいい加減やめて欲しいでござる!」

「だって、こいつの名前って所野(トコロノ)テンスケって名前なんだよな~。こっちでも抜刀斎と呼べって言ってるんかね」

「本名だけは言わないでくれ! いちいち癪に触るでござる!」


 わざと気にしている風を装って誘導尋問する。


「気にすんなよ~トコロテン抜刀斎君」

「カイガン殿、拙者の過去と流儀は知っておろう?」

「出た~! 幕末を生き抜いた志士だの、人斬り抜刀斎だの、最強の昇龍秘剣流だの自称してんのよ~」

「バカにしないで欲しいでござるっ!」

「へっへっへ~」


 ……しかしなるほど、テンスケってそういうキャラだったのか。

 オレも刻劉(コクリュウ)ジャオウってやつに体入れ替わりやられて、ジャキガン学院へ行ってたがテンスケとは会った事がない。

 まさか某漫画の抜刀斎キャラのコスプレ生徒もいるとはな。


「カイガン殿も、一回戦でアニマンガー学院相手でオウンゴール決めて負けた原因になったでござるよ!」

「あのジャオウのバカが勝手にやったせいだろ!」

「おちょくって怒らしたせいでござる」

「うっせー! トコロテン抜刀斎のくせにー」


 蚊帳の外にされているロクック、ノダーク、ギンボウ、クリランは呆れ返っている。


「落ち着け。勇者、今はダンジョン探索だ」

「へいへい」


 ロクックはリーダーとしてカイガンを諌めた。

 アッセーはふうと息をつく。するとノダークが耳打ちしてくる。


「上手いわね。誘導尋問で情報を引き出して、キャラを固める方法に出るなんてね」

「オレはウソが上手くないから、そこがネックだけどな」

「確かにね……。それからカンダタは貴方でしょ?」


 思わずギクッと竦んだ。


「えっ!? 心読める能力あった……??」

「無いけど、大体察するわよ……」


 ため息をつくノダーク。アッセーとしては心読まれたかとドキドキしちゃった。

 アルローとユミにも耳打ちして「自分は所野(トコロノ)テンスケの転生者で、今はケンシン名乗るから芝居に付き合ってくれ」と口裏を合わせておいた。


「十二メートル先の交差点の影に敵が潜んでござる!」


 あらかじめ広大な『察知(サーチ)』で感知してある。


「おいおい? おまえ「五メートルで充分。つーかそれが限界」じゃなかったっけ??」

「あれから何年経っていると思ってでござる」

「ホントか~?」


 やべ、カイガンがバカだったからごまかせたが、ボロは多く出さない方がいいな。


「まぁいい。ほいっと」


 カイガンは右掌の煌穿眼(コーセンメ)でビームを放って爆破。

 ミノタウロスの肉片が飛び散った。


「カイガン殿の『煌穿眼(コーセンメ)』は両手にあってビームが出せる。それが主な攻撃でござる」

「おまえ、俺と対戦した時にそれで瞬殺されたろ」

「ぐっ!」


 悔しがるフリをする。

 どうやらテンスケはカイガンに瞬殺されるレベルらしいな。


「こいつな~、超神速と騙って素早い動きを得意と自称してたけど、負けてばっかりだから「無用な争いは好まない」キャラを演じる事で逃げてたんだよな~」

「いちいち癇に障るでござるな……」

「だったら、俺と対戦してみるか~?」

「仲間内で無用な殺生は好まぬ」

「また言った~! いつもの負け惜しみ~!」


 おちょくってくるカイガンは確かにムカつくなぁ。

 道理でジャオウの逆鱗に触れて戦闘不能にされてもムリないわけだ。


「また来たぞ! 警戒を怠るな!」


 ロクックの警告に、みんなは身構える。

 緑肌の大男トロルが群れていて、こちらをギロッと睨んでくると「グオオオ」と迫ってきた。

 カイガンに振り向くとバカにしたような顔で「助けてくださいよ~トコロテン抜刀斎~」とおちょくってくる。


「昇龍秘剣流! 邪魔だどけ閃ッ!!」


 鞘に収めたままの聖剣の柄尻でカイガンの腹を打って「おぼぼあ!!」と横壁に大の字でめり込ませた。

 ついでに抜刀横薙ぎ一閃でトロルどもを上下に分かつ。

 ロクック、ノダーク、ギンボウ、クリランこれにドン引き。


「ふう、まだ生きてるでござるな。カイガン殿も余計な口を挟まず引っ込んでおれば、このような事にならなかったでござるよ」


 とはいえ、カイガンは平常武力は八七〇〇〇。本気出せば二六万になる。

 この世界じゃ相当な強さだ。まぁオレには及ばんけど……。

 ロクック、ノダーク、ギンボウ、クリランはジト目で呆れる。


「勇者カイガンは魔眼抜きでも相当な強さだが、不意打ちとは言え一撃で沈めるとは……」

「ホントにね」

「あいつ、ぜってー敵に回したくねぇ!」

「……最下層にはたどり着けそうな確信はできたな。一応」


 アルローは「やっぱアッ……ケンシン強いのですー!」

 ユミも惚れ惚れとアッセーに抱きついてハートマークの嵐をふりまく。


 そして大の字で気絶しているカイガンが哀愁を漂わせていた。

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