37話「他の転生者が厨二病を伝えてた!?」
二階層は一階層より広く見えた。
アッセー、アルロー、ユミは雲旅団と一緒に最下層を目指す事になった。
S級の冒険者だからか、ロクック、ノダーク、ギンボウ、クリランも相当な手練だ。
「6と9で織り成す呪縛!! ロック!」
ロクックは6と9の具現化したオーラで襲い来るモンスターの動きを止める。
「はああっ!! 我がままに破壊!!」
ギンボウはパワー一番で筋肉隆々とした大男。ハンマーを振るって大型のモンスターさえ粉砕してしまう。
地面に打てば、大きなクレーターにえぐってしまうほど。
「射殺す装飾爪!!」
ノダークはアーチネイルを連射して中距離の敵を蜂の巣にする。
爪であれば手足、そして歯までもが弾丸にできて、しかもなぜか超速再生する。
「俺は自然災害!!」
寡黙なクリランは全身に炎を纏ったり、電撃を纏ったり、と各種属性を自在に切り替えて、どんな敵にも対応できている。
独特な能力名は、さながら某漫画を彷彿させる。
「ここは異世界なんだよな……? 似たような奴らがリアルにいるなんてな」
「なのです?」
アルローは首を傾げる。
ユミは驚く事もなく納得している様子だ。
アッセー自身は、元の世界ではナッセ。何故かこの世界に転生された。
悪役令嬢転生の件から、魂を分裂させて複数の自分を存在させる事もできるらしいが、今回もそうなのかは不明。だからこそ……。
「オレも『なんでも願いを叶えてくれる』魔人に会って、転生云々を聞いてみたいんだ」
「そうなんですね……」
ユミはギュッとアッセーの裾を握る。
系統能力を見ていると、どうしても某漫画に影響されてるとしか思えない。元の世界のジャキガン学院に多くいたな。
あっちは意識してキャラ作ってたけど、ここでは素かどうか?
「ロクックさん。例えば生まれ育った国で転生者とかいたり?」
「ああ。転生者か? 確かに俺の国でも転生者が出てきて、能力名のセンスに惹かれた」
「そうそう。あっちの世界では常識なんだってな。“想”能力だったか?」
「チキューのニホン出身者って言ってたらしいわよ。まさかあなたも?」
頭を抱えた。
「だろうと思ったよ!」
「知っているって事は、魔眼系能力者の転生勇者カイガン様の知り合いか?」
クリランの言葉に、アッセーは頭が痛くなってきた。
カイガンって言うと、ジャキガン学院にいたヤツで複数の魔眼を抱えていた男だ。
両目、額、みぞおち、掌、足裏……あちこち魔眼があるやつ。
「カイガンは知ってっけど、魔眼持て余しているし性格に難があるやつだ。大会で戦った事あるけど味方の顰蹙を買ってオウンゴール決めてた」
「なんだか思い当たるフシあるわね……」
「俺も思った」
ノダークとロクックも頬に汗を垂らしている。
これ以降、話せば話すほどカイガンがくっきり浮かんでくる。
「紫香楽マジンガが最強で、その次が刻劉ジャオウってやつ。塔屋ソージと朝霧ウミノは公然構わずイチャイチャするやつだが強い。で、最弱がカイガンなー」
「あいつ最強ってたぞ」
ギンボウが憮然と言ってきた。騙されてたみたい。
「大会で戦ったというが、勝ったのか?」
「というか、一回戦でそいつらとぶつかってカイガンが自滅したおかげで勝った。そんでそのままストレートで優勝した」
「じゃあ、カイガンとあなたが戦ったらどっちが勝つの?」
「そりゃあオレだな。その気になれば魔眼の能力封じ込めれるし」
クリランは額に手を当てて「他に能力があったのか……」と呟いた。
実は妖精王だって言ったら完全に平伏しそう。しばらく隠しとこ。
「でよ、その勇者カイガンはどこにいるんだ? 魔王退治に行ってんのか?」
「自信満々で旅立ったが、お前の話を聞くと不安がつきまとうな」
「まぁ、あのカイガンだしなぁ……」
ロクックの不安に同意する。
すると数メートル先で、横の壁が爆ぜて散乱した。
立ち込める煙幕から、一人の男が飛び出してきたぞ。思わず目を丸くする。
「むお!?」
大柄な体躯の坊主。三つ目は間違いなく『転生眼』で、みぞおちにも魔眼。そして両手にも魔眼。
ギョロギョロ魔眼が蠢くのはキモい。
こんなやつは唯一無二。間違いなくカイガン本人だ。
「言ったそばから……カイガンが出てきたのか!?」
ロクックも驚きを隠せない。
既に“様”づけをしない辺り、オレの話を聞いて格落ちしたな。
「確かに以前の知ってる姿とあんま変わんねぇな……。坊主頭に大柄な体躯。着てる服が軽装な肩当てや腰当てがあるなど違いはそれくれぇか。そしてみぞおちだけは魔眼の為に空けてある……、間違いないジャキガン学院のカイガンだ」
「あれがアッセーと同じ転生者なのです!?」
「うわぁ……変なオッサンだぁ」
カイガンは「誰がオッサンだ!! まだ十代後半だっ!」と額に怒りマークが浮かぶ。
こちらを見て怪訝に眉をひそめる。
「そいつ、どこかで見た事あるよーな……」
「オレは……拙者は『雲旅団』のケンシンでござる。お見知りおくでござるよ」
腰にかけてある二本の剣に左手を添えて堂々と名乗る。
ロクック、ノダーク、ギンボウ、クリランはジト目で汗を垂らす。
「なんだ別のやつかよ。っていうか、みんなに頼みがあるんだが、一緒に行かねぇか? ここヤバいだろうから、この勇者が協力するぜ。いいだろ?」
カイガンは腕を組んで無駄に威張って同行を申し出る。
「……それは構わんが」
「拙者もそれでいいでござるよ」
ノダークはジト目で「ころころキャラ変えるわねー」と呆れた。
そして密かに水龍祭で優勝したカンダタが、コイツだと確信したのであった。




