30話「不正大国の終焉! 王妃の本性あらわ!」
「「「わああああああああああああああああああッッ!!!」」」
優勝の授賞式を正式に行って、カンダタは優勝カップと賞金をいただいた。
紙吹雪が吹き荒れて、上空を花火が連鎖していく。
派手で華やかなフィナーレに感無量だ。拳を突き出す。
「やったぜ!」
二人の双璧聖騎士も「敵わねぇな」と肩を落とす。
王様の兵器の恐ろしさは二人も知っていた。どんな魔法も武器攻撃も効かない事は身を持って思い知っていた。
それを本気も出さずに破ってしまったカンダタには感服するしかない。
「こりゃ我々を赤子扱いするのも仕方ねぇか」
「ってか、カンダタってやつ……、噂のアッセーではないのか?」
「お、おいおい! まさか!?」
「アルンデス王国の処刑の件が荒唐無稽にしか思っていなかったが、これを見る限りガチとしか思えん……」
「た……確かに……。棒立ちのままで俺らの剣戟を捌いてたもんな……」
ゾッとして息を呑む。
「なぁ、今度の『水龍祭』には「殺したら反則負け」のルール入れておこうか」
「そうしてくれ」
今回はたまたま優しいやつだったから良かったが、やつがその気になれば皆殺しで優勝してもおかしくない。
タマリン王様のいない席の隣で佇む王妃は目を細めて、カンダタを眺めていた。
「ふふふ……」
薄ら笑みを浮かべて、ペロリと口端を舐める。
立ち上がると、そのまま暗闇に通路へ消えていった。
そうと知らぬカンダタは控え室へ戻って、カブトを脱いだ。ふう。
ワイルーはビクッとした。
「お、おまえはっ!?」
「ありゃ、知らないと思ってたのに……」
「例の処刑でのアッセーじゃねぇかっ!!」
他の人まで驚きが伝染してざわついた。
わざわざワイルーがアッセーの武勇伝を語って、他の選手たちを恐れさせていった。
「「「ごめんあさいごめんなさ~い!! 悪気がなかったんです~~!」」」
一斉に選手たちは涙目で土下座してペコペコしてきた。
双璧聖騎士をも赤子扱いしてたのを見ているから拍車はかかっていた。
「悪気あったくせに……」
「ひぇ~~~~!! すみませんすみません!! アッセー様とは知らず!」
「だったら、よそもんに冷たくするなよ……」
ジト目で見やると、みんな「ははーっ!」と深く頭を下げた。
「せっかくの大会なんだから、純粋に腕を競えばいいだろ。ズルして優勝したって嬉しくねぇだろ?」
「「「た、確かに!!」」」
みんな納得してくれた。
これなら、今後の大会も不正なく盛り上がれるかも知れない。
わざと「今度も参加すっかな~~」といたずらっぽく笑うと、みんな恐れおののいて竦んでしまう。
「冗談だよ。そもそも国ぐるみで不正してたから参加してただけであって……」
「そ……そういう事ですか……」
「ああ」
みんなは項垂れて、自らの過ちを省みていく。
「もう大丈夫そうだな。さて……、今度は王様か」
その後、王様に鈴を食らわして洗いざらい白状させた。身も蓋もない。
ギルドの連中にも鈴を食らわして言質を取って、これまでしてきた悪事や不正を暴きまくって、各国へ送った。
これにはオダヤッカ王国が協力してくれたので、事はすんなり進んだ。
もう同じように悪さはできんだろう。
「国がバックにいると便利だな」
「なのですー! 活用してくれて父上喜んでたのですー!」
「うん」
その翌朝、高級宿屋の部屋でアッセーの腕にユミが抱きついてて、なんか色っぽく体をくねらして、顔をスリスリしてくる。
アルローはなんかドン引きしているように見えるが……。
「ユミ、昨夜から離れないんだが……? 何かあった??」
「し、知らないのです……」
するとドアにノックがコンコン。
「ん? どうぞ?」
ドアが開かれてタマリン王妃がやってきていた。更に双璧聖騎士が左右にいる。
「ほほほ。みごと国を転覆させたな」
「今度は堂々と暗殺かな?」
アッセーの言葉に双璧聖騎士は身を竦ませる。
「いやいや。アルンデス王国の処刑から気になってたからのう。双璧聖騎士が遊ばれているのを見て確信した。まぁタマリン王様のバカは気づいておらず、無謀にもアッセー殿へ挑んでボロ負け……」
「あ、オレ知ってた?」
「敵に回したくないから、堂々とさらしておる」
まだ本題を言っていない。嫌な予感がするんだが……。
「あー、良かったな。今後の『水龍祭』は不正なしで盛り上がれるな。って事で安心して出国できるな」
「待て待て、本題が残っておる」
「聞きたくないんだが……」
嫌な予感はユミもアルローもしてたのか、ムッとした様子でアッセーにしがみつく。
「タマリン王様はこれまでの責任を負って辞任したから、代わりに婚約してくれ!」
「え? なんでオレ!?」
「タイプなのじゃ!! その凛々しいショタ的な美形男子が好きなのじゃー!!」
ヨダレを垂らして本性を現してきたので、思わず「人妻王妃など婚約破棄だっ!」と叫びながらユミとアルローを抱きかかえて窓から飛び出した。
王妃はそれを見送る。
双璧聖騎士はこれを察した。
「……わざと脅かしたのですね」
「恐ろしい王妃よ……」
しかし王妃はガックリ項垂れてしくしく泣き出した。
「破棄されたのじゃ~……、破棄されたのじゃ~……」
ベッドに泣きついて濡らしていく王妃に、双璧聖騎士は「この国はもうダメかもしれない」と肩を落とす。
交易路を走る馬車に揺られながらアッセーは晴れ晴れとした顔で気持ちの良い青空を眺めた。




