26話「タマリン王国の勇者と戦う!?」
続いて四回戦、アッセーことカンダタは闘技場へあがる。
するとこれまでの意外な勝ち抜きが刺激になったのか、歓声が沸き起こっていく。
「マグレでも、よそもんがここまで勝ち抜くなんて前代未聞だぜっ!」
「応援してるぞー!!」
「その実力が偶然じゃない事を示してくれー!」
「お、次は勇者か!」
「もう、ここまでかな……?」
「いや! ひょっとしたら!?」
コテコテな全身鎧で顔が窺えないカブトのカンダタ。
そんな彼に、ザッと立ちはだかる男がいた。
「ここまで勝ち抜くなんてな……。しかしきさまの運もここまでだな」
「え?」
なんと天然パーマ青髪のイケメンで勇者だとひと目で分かる頭の黄金輪っか。青いマントがなびく。
「タマリン王国が誇る最強の勇者ウォタマンさまだ!」
「なんかウォタレンみてーだな」
「あ?」
試合開始が告げられて、聖剣を引き抜くとすかさずカンダタへ斬りかかる。
「我が聖剣、天水の剣! そして必殺の水龍豪流斬ッ!!」
まるで嵐で荒れ狂う海の荒波がごとく、飛沫を吹く水流の軌跡を幾重も描く剣戟が繰り出される。
勇者として認められるだけの相応な実力だ。
しかしアッセーはひょいひょいかわし、逆に足払いを放つ。ウォタマンはすっ転んで床を滑っていく。
「うーん。それなりだけど、リヘーン王子の方がずっと強いな」
「く……くそぉ……!」
ウォタマンはホラ貝を吹く。すると急降下してきた馬車が闘技場へ降りてきた。そして七人が馬車から飛び出してきたぞ。
観戦客も「おお……!」とどよめく。
呆然とするカンダタ。
「それ反則じゃないのか?」
「一種の召喚だ。反則に当たらない」
タマリン王様はニヤリと悪辣に笑む。
「本当は反則だが、オッケーにしたんだ。このまま我が国が舐められてたまるか」
「ヤンバイ王国の刺客が相手とはいえ、あまりにも卑怯では……?」
汗を垂らす将軍に、王様は「勝てればいいのだっ!」と怒鳴る。
アッセーことカンダタは後頭部をかいて「まぁいいか」と受け入れた。
勇者ウォタマンはニヤリと笑んで「ガンガンいけっ!」と命令する。すると青色の鎧のオッサン戦士と巨乳女武道家が飛び出す。
「タマリン元王国兵アクアン! 参るっ!」
「タマリン女武道家ミズーナ! ぶち壊すわよっ!」
アクアンの剛剣が振るわれ、 ミズーナの荒ぶる体術が唸る。
しかしカンダタは巧みに剣と体術でひょいひょい受け流していく。
「むおおおおっ!!」
「はあああっ!!」
それでもと猛攻を浴びせ続けるアクアンとミズーナを、カンダタはあしらっていく。
そして二人が急に左右へ退くと火炎球が割って入ってきた。
「よし! ビキニ女魔道士サカーナの地獄業火魔法で焼けろっ!」
被弾し、爆音とともに獰猛に火柱が噴き上げた。
不敵に笑むウォタマンは徐々に唖然としていく。火炎が消えて黒煙が晴れると、なんとアクアンとミズーナが黒焦げで横たわっていた。プスプス……。
「ひっどいな~~~~! 巻き込んじゃったな~~~~!」
その更に後ろでのんきにカンダタが突っ立っている。
サカーニャは「うそっ!?」と驚く。
ウォタマンは疑心に駆られて「まさか……失敗した?」と震える。
実は、飛び退いた二人の足を掴んで引き寄せて盾にした。その二人に回復魔法をかけながらだから、ちょい火傷した程度で済んだかな。
「火傷しているかもだから、場外に放っておくぞ」
カンダタはアクアンとミズーナの足を片手で掴んで、ホイッと場外のプールへ放り投げた。ドポンと飛沫が上がった。
すると「ぶわっ!」と二人が水面から顔を出した。
「ならばこの、呪術神官コロシトが即死の呪詛をかけますぞ!! 呪殺法力ッ!!」
今度はイケメンの神官風が呪文を唱えて、無数のドクロが浮かび上がって襲いかかる。
「まぁ効かないけど」
「なっ!?」
妖精王なので精神攻撃の類は効かず、逆にドクロが弾け飛ぶ。
焦ったコロシトは何度もドクロの呪詛を連発するが、突っ立っているカンダタは平然としている。
それでも必死に「呪殺法力呪殺法力呪殺法力」と連呼し続けて魔法力が尽きた。
「このバカ! なんで他の魔法を使う発想がないんだっ!?」
「ならば、闇商人ウミネコである、このワシの出番だな! くらえソロバン計算っ!」
太ったオッサンがソロバンをパチパチ弾いて計算しながらズンズン迫っていく。
だが、カンダタは前蹴りでウミネコを場外プールにドポーン。
「あのデブ、マジで役に立たねぇ! 後で追放してやる!」
「残りの私がやりますわ! 色気占い師ミズア!! 百烈濃厚キーッス!!」
なんと露出度の高い服を着た紫ロングの美女が唇を剥いて、残像を残すほどの連続高速キッスを繰り出してくる。
カンダタは「ひえええっ!」と逃げ回るが、ミズアは連続キスをしながら追いかけてくるぞ。
「くっ! ならば!!」
咄嗟に勇者ウォタマンの背後に隠れ、ミズアのキスを誤爆させた。
ミズアは相手が誰だろうが、お構いなく抱き締めて百烈キッスで陵辱していく。
「ちょっ! 待て待っ! うぷっ! んんん~~~~~~~!!」
「大好きですわ! 勇者さま! 勇者さまぁ~~~~! ちゅぽちゅぽちゅ~~っぽ」
試合中に構わずイチャイチャしだしてハートの嵐が飛び散る恐ろしい事態に、カンダタも勇者の仲間もドン引き。
それでも勇者とミズナの濃厚なラブラブキッスは止まらない。
「いけませんっ! これ以上は放送禁止ですっ! も、もはや勇者ウォタマンは戦闘続行できないでしょう! 仕方なくカンダタ選手の勝ちですっ!!」
呪術神官コロシトとビキニ女魔道士サカーナは、盛ってる勇者ウォタマンとミズナを馬車の中へ押し込めて、空の彼方へ飛び去っていった。
呆然とするタマリン王様は、徐々に顔を赤くしてギリギリ歯軋りしていく。
「あんの恥さらしが……!」
「……ウォタマンとミズナの結婚式の招待状が、いつの間にか来ています」
「展開が急すぎるわっ!」
将軍が出してきた招待状に、タマリン王様は地団駄する。
観戦席のユミはモジモジしてハァハァ恍惚していた。
「はあああんっ! あんな風にアッセーさんと熱~いキスがしたいですー!」
「この発情ビト、誰かなんとかしてくれなのです……!」
アルローはドン引き。




