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23話「結局大会に参加しちゃった……!」

 ついでに暗殺者に案内してもらった暗殺組織にも『快晴の鈴』で改心させて手懐けておいた。

 我ながら身も蓋もない。

 王国からの暗殺要請には法外な高額を吹っかけてくれと頼んでおいたから、今後は大丈夫かな。


「問題は、この国か……」


 全て鈴で改心させればいいんだけど、効力は永遠じゃないからなぁ。

 暗殺者組織が(かなめ)となっているから、一時的にマヒさせただけで。




 そして翌朝……。

 暗殺者が用意してくれた全身鎧が部屋で飾られている。

 水鏡のように磨かれた美しい鎧だ。国の騎士はこれを正式に採用している。


「な、なんなのです??」

「買ってたんですか?」

「なんか、宿屋のプレゼントらしいな。ありがたく受け取ろう」


 ガチャガチャ着込んだ。顔を覆うほどのカブト。これで素顔を見られないだろう。


「やっぱ水龍祭に参加する」

「なのですーっ!?」

「えええ? いいんですかっ??」

「ああ」


 ガチャガチャ鎧を鳴らせながら歩き出す。思った以上に動きにくいぞコレ。

 宿を出て闘技場を目指す。カブトの狭い穴では視界が悪い。この辺は『察知(サーチ)』で死角をカバーできるからいい。

 周りから見れば、水鏡のような美しい全身鎧の騎士が歩いているように見えるはずだ。


「見回りご苦労様です」

「ああ」


 他の騎士が敬礼し、オレも敬礼する。

 そのまま通り過ぎる。しばししてから騎士は傾げて振り向く。

 騎士だと思われているせいか、人々が避けてくれて通りやすかった。


「あれが闘技場か……。すげぇな」


 高く聳える円柱の神殿。神を信仰するかのような神々しい彫刻が外壁や柱に刻まれている。

 ステンドグラスの窓が等間隔に並んでいて、教会かと間違えるほどだ。

 なんか二人のシスターが歩いてくる。


「それ……、我が国の教会です……」

「え?」

「巨大だから、間違われる事が多いんです。闘技場はあっち、反対方向です」

「参加登録は正午までですので、急いだ方が……」


 時計を見ると、残り十分しかねぇ。


「す、すまねぇ!! 教えてくれてサンキュー。急ぐぞ!!」

「はいなのです!」

「うん!」


 一緒に走り出す。いつものように走っているとバキッと折れる感触がした。

 走って行くたびにバキバキッと折れる回数が増えてきた。激しく動かしたせいで、重装備が剥がれてしまってるんだ。

 後ろへ振り返れば破片が散乱している。


「ええい構わーん! 走れー!!」


 結構遠かったが闘技場へ着いた。

 息を切らすアルローとユミにはすまねぇけど、参加する意義ができちまった。


「……あの? 騎士さん? 参加するんですよね?」

「ああ。名前はカンダタだ。登録をお願いします」


 汗を垂らして戸惑う受付さん。

 鎧が多少剥がれてて、無傷のカブトを被ったボロボロ欠けた騎士が目の前にいるのだ。

 ぶら下がって取れそうな肩当てがうっとおしいのでバキッとちぎる。


「済みません。急いで走ったもので剥がれてしまいました。これ捨ててくれる?」


 ちぎった肩当てを渡す。

 呆然としたまま受け取る受付けの人。


「いやー、間に合ってよかった。参加者が渋滞してるかなーと思ったんだけど、そんなこたなかった」


 そのまま中へ入ろうと歩き出す。


「ちょっと! 参加選手は左側ですよー!」

「いけね! サンキュー!」


 アルローとユミは参加しないので、途中で「観戦してていいから」と別れた。

 二人は「頑張るのですー!」「頑張って!」と応援してくれた。

 こうして士気高揚と選手控え室へ向かっていく。結構広いところで多くの選手がいた。ほとんど国の騎士たちが多い。


「おまえ、騎士か?」

「ああ。たぶんな」


 なんか強そうなゴツイ体格の男が睨んでくる。


「へっへっへ! 弱そうだな~!」

「まぁな。で、これからどうするんだ?」

「おうおう、貴様よそ者だな? そのニセモノの騎士鎧で偽装したってバレバレだぜ」

「ああ。オレはよそもんだ。カンダタってんだ」


 タマリン出身の選手が多いのか、凄んでくる雰囲気が半端ない。

 そういえば他によそもんの選手はいないな。


「……まぁいい。俺はワイルーだ。これから予選を行うらしいぜ」

「ふんふん」

「一〇〇人で闘技場へ上がって、一人残るまで戦うんだ。これが過酷でな……」

「ひっひっひ! よそもんは狙い打ちされるからな~」

「へっへっへ」


 なんだかガラ悪いなぞ……。

 暗殺者組織とグルでいろいろしてたみたいだし、国が腐敗してておかしくないか。

 予選が始まって、観客の歓声がここまで響いてくる。

 しばしして選手が減っていく。そして時間が来たらしく、ワイルーがニタニタ笑みを浮かべる。


「おい、お前の番らしいぜ。行ってこいよー」

「サンキュー」


 アッセーはワイルーに手を振って、控え室から廊下を通って、明るく開けた闘技場へ踏み入れる。

 周囲は階段状の観戦席で観客が賑わっていた。

 闘技場はプールに囲まれていて、場外はドボンと落ちるようになっている。


 見渡しながら闘技場へ上がると、九九人の選手がこちらへ敵意を向けていた。


「始め!!」


 九九人の選手が一斉に襲いかかる。あちゃあ……。これ悪手だろ。

 腰の剣を引き抜いてアッセーは突っ込む。


「「「なにっ!?」」」


 正面突破してくるとは思わず、九九人の選手は出鼻をくじかれて戸惑いが広がっていく。

 正面の斬りかかる騎士の剣を、こちらで弾いて他の選手に当てた。

 すると玉突きのように次々倒れて、外側の選手が何人かがプールに落ちた。


「この!」


 今度は反対側の槍を弾いて、玉突きさせる。何人かが落ちていく。

 こちらはスイスイ人海を縫うように動き回ってかく乱していくと、勝手に同士討ちして次々と自滅していった。

 時々相手の攻撃を弾いて、同士討ちさせる形で次々倒していく。

 気づけばアッセーと敵の騎士一人だけが残ってしまう。


「え? あ!? いつの間にっ!?」

「一斉にだと同士討ち多くなるからなぁ。同時にかかれる人数は絞っといた方がいいぞー」

「く……! この野郎ッ! 清流剣ッ!!」


 焦った騎士が水流の如く不規則な軌跡を描く剣技を放ってきた。

 弱いふりしたいので、敢えて鎧で敵の剣技を受けたまま、軽く剣を振り下ろしてガンと沈めた。


「そ……そんな……! 清流剣が完全に入ったのに……!」


 うつ伏せの騎士は信じられない顔をして、ガクッと力尽きた。


「やったぜ!」


 アッセーはガッツポーズをする。思わぬどんでん返しに、観客が一斉に沸く。

 そうして圧倒的アウェーを覆して予選を勝ち抜いた。

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