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21話「めでたしめでたし! これにて解決!」

 アッセーが妖精王に変身し、この世ならざる姿に変貌した。

 それだけで大陸と空すら揺るがすほどの震撼を誘発する。遥か遠くのヤンバイ王国にすら届いていて、それが天上の者の怒りかと恐怖に駆られる。


「な……なんじゃ!? 一体何が……??」


 欲深い王様と大臣や幹部たちは冷や汗タラタラになっていく。

 宮廷魔術師のエルフが影から不気味に出てきて、王様はハッと振り返る。


「あそこには『世界天上十傑』の一角であるゲキリンさまがいますからねぇ……」

「な、なぜ早く言わなかった!?」

「言っても、どうせ鉱山が欲しいからって聞かないでしょう。どうぞ侵略してっていいんですよ。この国終わりますがね」


 それを聞いて、幹部たちと大臣は竦み上がった。

 震える手で紙を取り出すと、慌てて何かを書き記していく。そして王様へ向き直る。


「こんな事になったのも、調査団を送ったり、勇者送ったりしてたからですよ! はい退職!」

「こちらも同じく! もう付き合いきれませんぞ!」

「わしらは死にたくねぇ! ここらで降りさせてもらう!」

「え? ちょっと待って待って!? 急すぎるよ!? ねぇ怖いんだけど!?」


 幹部たちと大臣が退職届を叩きつけて出て行ってしまった。王様呆然。


「それでもオダヤッカ王国の鉱山が欲しいですか……? フフフ……」


 目を怪しく輝かせてせせら笑うエルフに、王様は身震いして心が折れた。

 思い知らされてなおも侵略しようとする気概は出ない。なぜなら自分が可愛いから。それ故に自分の安全が脅かされると簡単に折れてしまう。

 しばらくガチガチ震えてたそうな。




 震源地となる場所でアッセーが凄まじいフォースを噴き上げている。


「「これが本物の妖精王!? なんという素敵な殿方!!」」

「神々しい姿なのですっ!」

「おお……、まさかこの目で見られるとは……!?」


 三姉妹、フォレスは震えながらも感激に心を満たしていく。

 ユミは目の前のアッセーがまるで艶かしく見えて、憧れを超えて情欲が溢れていく。


「ああ……アッセーェ……」


 ドキドキが止まらず、ユミは全身に心地よい衝動が走ってフルフル震えていく。初めての快感に恍惚しているようだ。

 逆にゲキリンは怪訝な目で妖精王アッセーを見据える。


「真の姿に戻ったか……? これまでがそうかと思ったが……」

「ゲキリンさんだって、本気出すんだからそりゃな」


 アッセーは太陽の剣(サンライトセイバー)を正眼に構えながら、この後を察した。

 普通に戦っていたら、ここの地帯がメチャメチャにされる。地図を書き換えるほどの力なのは自覚している。

 だからこそ、一瞬で決着をつける。奥義でな!


「さぁ行くぞッ!!」


 その瞬間、ゲキリンはその先の未来が脳裏に流れた。


《三大奥義が一つ『超越到達の領域トランセンデンス・ゾーン』!!》

《むッ!?》


 アッセーはカッと戦意の眼光を煌めかした。


光輝(ウル)流星進撃(メテオラン)!! 二〇連星ッ!!》


 アッセーが時の流れを堰き止め、星々煌く夜景広がる錯覚を見せ、流星群がごとくの剣戟が同時に等しく繰り出される。

 それは全身の各部位を完膚なきまで粉砕し、全身から破裂するように出血し、服などの破片が弾け散り、吐血して白目で沈んでいくゲキリン自身の姿を……。

 その未来はどう足掻(あが)いても変えられようがない。


「三大奥──」

「待て! 降参だ!」


 ゲキリンが掌を差し出してきて、アッセーは「え?」と硬直する。

 首をコキコキ鳴らして「もう結果は視えている。これ以上は不毛だ」と戦意やオーラを納めていく。


「まさか未来視た??」

「うむ。しかし、そもそも勇者らヒトが無礼を働こうとしたのが事の発端だ。この鉱山は確かに貴重な金属が取れるが、これ以上ヒトの下卑た欲にさらされるわけにはいかん」

「そっか。じゃあここまでにすっか」

「ここまで武術を極めているとは思わなかった。まだ実力と種族に合う言動に及んでおらんから紛らわしいぞ」

「オレはまだ人間だしなぁ……」

「認識を改めろ。そういうレベルじゃない」


 アッセーは変身を解き、後頭部をかく。

 ユミにもしたような簡潔な説明をしておいた。やはり師匠クッキーは変わり者って言ってきたなぁ。


「忠告はしておく。魔王は倒すな」

「分かってる。あくまで人類が乗り越えるべき敵……、我々が関与したらダメだろ?」

「……ならいい」


 転生前の世界で魔王ジャオガってやつから色々教えてもらったしなぁ。


 勇者たちへ歩み寄ると、キラギランはビクッと怯えて青ざめて、尻餅をついたままでガタガタ震えている。

 構わずアッセーはかがみ込んで視線を合わす。


「ヤンバイ王国の王様に言っておいてくれ。ここの鉱山は龍人及びオダヤッカ王国の許可なしに立ち入るなって、な」

「あ、はい……」

「でもよう、間に合ってよかった。刹那遅かったら死んでたぞ」

「ううっ……」


 トラウマが呼び起こされる。胸に風穴を開けられる錯覚。

 寒気が走るほどの身震い。

 それでさえ、龍人ゲキリンにとっては小突く程度。目の前にいる冒険者もまた同様に人外レベルで強い。

 なんか生意気な口を聞いたら秒で消し炭にされる。


「フォレス……、お前の言った通りだった……。す、すまない……」

「分かればいいんです……」


 俯く勇者キラギランはビッグボン、フォレス、ブッチギとともにトボトボ帰っていった。


 後に、ヤンバイ王国の王様も既に意気消沈していた為、勇者の報告にもすんなり頷いた。

 ちなみにアルンデス王国で騒ぎを起こしたアッセーがナッセを名乗って自分の国に滞在してたのも知り、怖気で震え上がったそう。

 こりゃ悪い事できん、と完全消沈。




 オダヤッカ王国へ戻って、城で一晩泊まってもらった後、その翌朝アッセーはユミを連れて窓から抜け出したぞ。

 王様も二人の姉妹も「ああっ! いなくなられたーっ!」と慌てる。

 馬車に乗り込んで、ガタゴト走り出して出国。アッセーは「ふう」と一息。

 ……なんかユミが艶かしく腕に抱きついているのが気になる。ボーッとしてて顔赤いし、熱かな?


「アッセー様、待つのですーっ!」


 なんとアルローが馬車へ飛び込んできたぞ。


「ええっ!? なぜっ??」

「こっそり抜け出す事は分かっていたのですっ! お姉様はごまかせても私の目はごまかせないのですーっ!」


 ドヤ顔でふふんと勝ち誇るアルローに、アッセーはため息。


「じゃあルールは厳守してもらう。オレに様づけはナシ。ユミを蔑ろにしない。敬語は抜き、な」

「はううーっ!!」


 アルローはギャグのような顔で悶えた。

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