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20話「絶対的な力の差!」

 勇者キラギランは聖剣を引き抜いて、龍族の長ゲキリンを斬り捨てようと激情に駆られていた。

 しかしゲキリンが瞬間移動したかのように迫り、拳を振るってきた。

 防御はおろか反応すらできず、胸板に穴が開く────。


 かつてない恐怖がそう錯覚させるほどに脳内へ叩きつけられた。

 しかし、ゲキリンの拳はアッセーが割り込んで右手で受け止めていた。途端に地響きが広がって、煙幕と破片が舞う。


「む?」

「やっべー! 間に合ったー!!」


 ゲキリンは一撃で殺すつもりの拳を、同じく素手で受け止められた事に驚く。

 真正面から構えて受け止めたのではなく、咄嗟に横へ差し出しただけの手で受け止められたのだ。普通できない。下手すれば肩から持ってかれただろう。

 茫然自失したキラギランは腰を抜かして地面にへたり込む。


「え……?」

「フォレスさんが頭を下げていた冒険者?」


 ビッグボン、ブッチギは目を丸くした。

 フォレスは「妖精王様……!?」と驚きを隠せない。

 後からユミ、三姉妹が駆けつけた。


「貴様は……?」

「割り込んですまんが、オレは冒険者のナッセ。勇者が侵入したと聞いて急いできた」

「なぜヒトを助ける? 妖精王の子よ」


 ゲキリンは眉間にシワを寄せる。

 尻餅をついているキラギランの前でアッセーは立っている。


「そりゃ、人間は欲深くてどうしようもねぇバカだってのは分かる」

「助ける義理はないはずだ」

「確かにねぇよ。だがな、そのままやっちまったらオダヤッカ王国巻き込んで戦争起きるだろ。そんな面倒な事起こしたくねぇぞ」

「どのみち同じだ。ヒトは醜く争う種族だからな。どいてもらおうか?」


 勇者たちを皆殺しするつもりだ。


「おっさん待ってくれよ!」

「俺は龍人の長ゲキリンだ。ナッセとやら、まだ自分の立場を自覚してないようだな。多少痛い目に遭ってもらうぞ」

「おう!」


 ゲキリンは殺気を漲らせ、さっきよりパワーが上がる。

 そして音速を超えた拳の乱打を叩き込んでくる。アッセーも両手でことごとく受け止めきっていく。

 衝突の度にパパパパンと大気の破裂音が広がっていく。

 さっき以上で一撃一撃が勇者といえども肉片に散るほどの威力だ。


「ほう」


 連打を止め、ゲキリンは感嘆する。

 アッセーは両手をぶら下げながら軽く振って「ふう」と一息。

 勇者キラギランもビッグボンもブッチギも、唖然とする。超えられない壁を間近で見せられた。


「少々本気で運動させてもらうぞ」


 ゲキリンは圧倒的なオーラを噴き上げて、扇状に立ち上っていく。

 地響きが続き、勇者たちは途方もない絶望で心が折れた。さっきのでさえ本気じゃなかったのだ。


「それはお互いさまだ」


 アッセーも右手から太陽を模した剣を具現化した。

 これまで普通の武器で戦っていたが、今回は自分の『刻印創(エンチャントメイク)』で作った『太陽の剣(サンライトセイバー)』じゃないと相手にならない。


「アルテミユ! アルディト! アルロー! バカ勇者たちとユミを守れ!」

「「はいっ!!」」

「はいなのです!」


 三姉妹は防御魔法を連ねて、ユミとキラギランとビッグボンとブッチギを覆った。

 高い魔力で練り上げられた防御魔法は余波ぐらいは弾けるだろう。


「この『太陽の剣(サンライトセイバー)』で相手する!」

「その心意気だけは買おう」


 刹那、アッセーとゲキリンはぶつかった。

 閃光が溢れ、轟音とともに凄まじい土砂を巻き上げて荒野が深々と抉られていく。

 その衝撃波を防御魔法で遮断しているとはいえ、大地を揺るがすほどの威力がひしひし伝わって来る。

 三姉妹は恐怖に包まれるが、ユミを守るために耐える。

 激突地点の煙幕が晴れると、忽然と二人は消えていた。


「消えた!?」

「いえ、上にッ!?」

「妖精王さま!?」


 いつの間にかアッセーとゲキリンは上空へ上昇しながら激しい攻防の応酬を繰り広げていた。


「おおおおおおッ!!」

「ぬううッ!!」


 今度は上空を戦場に、縦横無尽と飛び交ってあちこち衝撃波を散らす激突が連鎖されていく。

 秒間に数百数千も攻撃が繰り出されているのかもしれない。ゲキリンの振るわれる拳とアッセーの軌跡を描く剣戟が互角に張り合っている。


「な……なんなんだ……あいつら……!?」


 キラギランはガタガタ震えだす。

 これまで攻撃力の高い聖剣を振るい、盗賊や魔族を圧倒してきた自分こそが世界最強として疑わなかった。

 魔王を必ず打ち滅ぼせると過信していた。

 ……なのに、目の前の龍人はおろか、フォレスが頭を下げていた冒険者ですら、強さの水準を軽々と凌駕していった。

 あいつら天上の戦いと比べれば、俺たちの戦いなどチャンバラごっこにしか見えないだろう。


「サンライト・フォールッ!!」


 振り下ろしたアッセーの剣に従い、流星のような軌跡が龍人ゲキリンへ直撃。

 ゲキリンは腕を交差して受け止めるが、大地へ叩き落とされ土砂を高々と巻き上げる。

 アッセーは大地へ降り立った。


「……なかなかやりおる。まだランクインされてないようだが、実力はもはや世界天上十傑の上位に位置する。だが……」


 立ち込める煙幕を吹き飛ばし、ゲキリンは服が汚れたものの依然と平然している。


「ぬうおおおおおおおッ!!!」


 ついに本気を出したか莫大なオーラが天を衝くかのように激流で噴き上げられ、地響きが激しくなっていく。

 同時に圧倒的な威圧が重々しくのしかかり、キラギランは恐怖で竦むしかない。

 アッセーは瞬時に力量を推し量り、やつの本気武力が九〇万相当で、今の三〇万じゃ敵わないと察した。


「これまでは様子見ってことか! なら、こっちも!」

「なに!?」


 見開くゲキリン。

 アッセーは「おおおおっ!」と気合を入れ、足元から花畑が沸騰するように湧いて広がり、花吹雪とともに背中から四枚の翼のようなのが浮き出して、黒髪が銀髪ロングに舞い上がり、目の虹彩に星マークが輝く。

 そして天まで届くほどのフォースが溢れ出して、全てを震撼させた。

 これでこっちも武力は九〇万に達した!


「これが妖精王だッ!!」

「むッ!」


 アッセーは剣を横薙ぎに振るう。その剣圧が烈風となってゲキリンを通り過ぎて地表から煙幕が舞い、遥か後方へ流れていった。

 地鳴りが唸り、誰もが二人の凄まじい威圧に戦慄した。

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