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17話「婚約してないけど、エルフ姉妹は婚約破棄だ!!」

 長女次女二人の姉妹より第六王子であるアルロー姫の方がいいと妖精王様に言われて、王様達は目を丸くしてあんぐり口を開けていた。


「妖精王様! なにがいけなかったでしょうか? このアルテミユが必ずや満足にさせてごらんにいれますとも!」

「このアルディトもこの体を差し出して、好きなようになさってくださいまし」


 なんか身をくねらしてナイスバディをアピールしてくる。

 情欲が沸くほど艶かしく色っぽい。白いドレスから体のラインが浮かんでいる。そして胸の谷間が心をつかもうと誘ってくる。


「オレは人間がベースだぞ? 闘争や性欲などの本能が恐ろしいと知った上でか?」

「「構いません!! 妖精王様になら喜んで!!」」


 自ら身を乗り出す姿勢で姉妹は食い下がらない。

 もし普通の人間だったら「汚らわしいヒトね」と毛嫌いして寄り付く間すら与えないだろう。

 妖精王だから、ベースが人間であっても一向に構わんって感じか。


「ナッセさん……」

「そのヒトなんかよりも私が!」

「ええ! あなたに相応しくありませんわ! なにぞと私を!」


 ユミがおろおろするのを、姉妹が無礼な事言ったもんだからカチンときたぞ。


「オレの仲間にそんな事言うやつは関係なく婚約破棄だっ!!」

「「ガガ────ンッ!!」」


 姉妹は大きく口を開け茫然自失。へなへな腰を抜かしてシクシク泣き出した。

 別に婚約もしてないが、姉妹には強烈なダメージとなっただろう。

 サウザン王様は顔面に手を当てて苦悩してる。


「何度も言うけど地位なんかより、仲間を蔑ろにせず、お互い大切に尊重して、歩む足を揃える方がよっぽど大事だぞ!」


 ユミを連れて、城を出ていこうと椅子を立つ。


「お招きしてくださって感謝致します。ではこれで失礼します。宿探しにいかないと……」


「ああああああああ!!! ごめんなさいごめんなさ~い!!」

「失礼なこと言ってごめんなさあああああい!!」

「大変失礼しちゃってごめええええん!!」

「数々の無礼をごめんなさいなのですーっ!!」


 突然王様が泣きついた。しかも姉妹もアルローも一緒に泣きついてきたぞ。

 なんか気の毒だと思うくらいの泣きっ面で鼻水垂らすもんだからドン引きしつつも「分かった分かった」と落ち着かせた。




 無駄に広い部屋でユミと一緒にくつろいでいる。

 王族が寝そうなキャノピーベッド。六人で囲めるくらい大きなテーブル。


「わりぃな。こうなるとは思ってなかったんだ」

「ううん。でも……ナッセさんは妖精王様? 人間じゃない?」

「あー長くなるけど、簡潔に話すぞ。オレは普通の人間だったが師匠クッキーに『妖精の種(フェアリー・シード)』埋め込まれて妖精王になっちまった。そうでもしないと死ぬ状況だったんだ」

「元は人間だったんですね……」

「ああ。だから今まで通りでいい。あいつらみたいに謙られても迷惑なだけだ」

「わ、分かりました……」

「あと、オレの事はアッセーか偽名のナッセと呼び捨てていい」

「はい。アッセー」

「おう」


 ユミに微笑んで頭を撫でる。

 ちょい雑談して本を読んだりして、消灯。ベッド一つしかないけど、大きいので並んで寝る事にした。

 すると扉が開かれて、二人の姉妹が抜き足差し足忍び足で近づいて来るのが分かる。


「そこ! 無断で入るでない! ご就寝の邪魔するのは何事かー!」

「「ひえええええーっ! お気づきになられたー!!」」


 急に起き上がって怒鳴ると、はだけた寝間着姿の姉妹は脱兎して扉が閉まった。

 アッセーはゲンナリする。

 まさか夜這いしてくるとは思わなかった。

 そのまま既成事実を作ってなし崩しに結ばれようと画策するなんて、本当にエルフかって勘繰る。




 そして『塔山(タワー)』から『光珠』が顔を出してきて、明かりが王国を照らす朝。


 アッセーとユミは豪勢な朝飯を出されて召し上がった。

 なんかサウザン王様は謙って「城内を案内しましょう」とか、姉妹が「我らのダンスをお披露目しましょう」とか、誘ってきたけど「悪い。次の国へ行く」と断った。

 揃ってギャグ的な涙を流す王様たち。


「王様!! 緊急の報告がございます!」


 食事会の最中、飛び込んできたエルフの兵士が跪く。

 一瞬、こちらに気づくと会釈してから王様へ向き直る。何事だろう?


「例の勇者パーティーが、モリンフェン森林地帯へ侵入しました!!」

「なんだと!?」

「方向的に、恐らく『塔山(タワー)』付近の鉱山目当てかと!」

「むう……」


 勇者パーティーって、馬車に乗ってた時に盗賊を蹴散らしたあいつらか?

 一緒にオダヤッカ王国へ入国してたが、目的あっての事か。


「失礼します。その勇者ってなんで鉱山へ向かっているんだ?」

「は……、はっ! 恐らく隣国の依頼を受けて、鉱山へ向かったと思われます。なにしろ何度かヤンバイ王国から調査団が無断侵入してたからかと……」

「えっと、調査団はどうなったんだ? 帰されたのか?」

「……龍族の長の怒りを買われて皆殺しされたかと」


 アッセーは龍族と聞いて、本に書いてあった通りを連想した。

 エルフと同様に人間よりも種族値が高い種族。故にスペックが高い。戦闘能力ならエルフ以上だ。


「勇者がどんだけ強いかしらねぇけど、止めねぇとな」

「妖精王様直々に!?」

「だって勇者が殺されるにしろ、鉱山が奪われるにしろ、きっと隣国と戦争になっちまうぞ」


 王様は息を呑む。

 むろん、隣国のヤンバイ王国には不信を抱いている。もしこれ以上するなら、黙っておかないと考えていたからだ。

 欲深い人間は欲しいものを奪う為に侵略をやさない。説得で引き下がる種族じゃない。


「戦争もやむを得まいと思ってたのだがな……」

「そーゆー面倒な事起こされたくねぇから、オレ出るわ」


 アッセーはため息をついた。

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