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15話「めんどい事になりそうな王国!?」

 オダヤッカ王国……。

 アッセーの出身地であるアルンデス王国、ヤンバイ王国などと同じ、世界で有数の大国。

 森林と一体化したかのような国で、国中に草花が生い茂っている。


 アッセーはユミと手を繋いで公路を歩いて散策していた。


「さすが貴族様です……」


 アッセーが通る先で、エルフたちが王族にするかのように会釈してくる。

 こちらを視認したエルフが僅かに見開いて、邪魔にならないようによけて頭を下げる。そのせいで他の人間や獣人が不審にこちらを見るようになった。


「まぁ……今は冒険者やってっけど、貴族ってバレてるもんだなー」

「でもエルフしか挨拶しないです」

「たはは……」


 エルフは何も言わないが、ユミの方へ不審そうな視線を向けてるっぽい。

 たぶん『なんで妖精王様にヒトのガキが馴れ馴れしくしてるんだ?』と思ってるんじゃないか?

 何も言わないのは、人間が王族に向かって「なんでそいつを連れているんだ?」と無礼を働くようなものだからかもしれない。


「さっさと明日にでも出た方がいいかな?」

「そうなんですか?」

「ここ、エルフ多いからな。何日も留まって面倒な事が起きる前に、さっさと馬車防衛の依頼を受けて別の国へ行った方が気が楽だぞ」


 視線痛いから、息苦しいってのもあるが。

 依頼受けたいのでギルドへ行った。


「えっ!? サウザン王様へ会いに行かれず、明日に出られるんですか? 何か急用でもあるのでしょうか?」

「あ……いえ……」


 全てエルフの受付嬢じゃ回避もできねぇよ。


「是非ナッセ様には、我が国のサウザン王様へお目にかけて欲しいです」

「敬語やめてくれ。エルフ以外の周りの人の視線が痛いんだが」

「申し訳ございません。ですが上位生命体へタメ口とかされたら針のむしろになりますので」

「他のエルフに干される認識でオッケー?」

「はい」


 受け答えの度に、いちいち丁重に会釈しなくていいんだが……。

 くっそ面倒だ、この国。


「きっと王様も萎縮してしまうから、そのまま出てった方がいいと思うがなぁ……」

「失礼ですが、きっと数年落ち込まれると思います。あの妖精王様の目にも入らぬ矮小な王族と思ってしまわれるでしょう」

「あのさぁ……」


 王族ってそんな扱いを受けて生きてたんかな? 堅苦しくてしょうがねぇ。

 そのままスルーで出てっても、目撃したエルフの証言で王様ショック受けるんだろうなぁ。貴族以上にめんどくせぇ。


「分かった分かった。ちっと会いにいくだけだからな」

「ぜひ、そのようにお願いいたします」




 山へ『光珠』が近づいてて日没が近い。それで山の影が覆いかぶさってきて薄暗くなりつつある。

 前いた世界のように夕日で空が赤くなったりとかないから違和感する。

 普通に山で太陽が隠れて暗くなったみたいな感じ。山がデカすぎて夜のように真っ黒になる具合。


「だから“夕日”とか“夕焼け”とか“黄昏”とかの概念がねぇか……」

「ユーヒ? ユウヤケ? タソガレ? 何ですか?」


 ユミは元々ここの人間だから、オレの世界なんて想像もつかないだろうしなぁ……。


「今日は遅いから明日に王様へ会いに行こうか」

「うん」


 薄暗くなっていく国を散策して、いい宿屋を探していく。

 トンネルっぽい橋を潜ろうとしたら、上から何者かが飛び降りてきた。二の足がダンッと床を鳴らす。


「そこのヒト! なんで妖精王様についているのですっ!?」


 なんと金髪ツーサイドアップ(小さいツインテールのようなもの)でロングを揺らすエルフの女の子がビシッとユミを指差していた。

 唐突な登場にアッセーはポカンとする。


「おめぇ誰だ?」

「はうっ!」


 アッセーに気づくと背筋を正して緊張した表情を向けてくる。


「オダヤッカ王国を治めるサウザン王様の娘である、第六王子アルロー姫なのですっ!」


 名乗る際にビシッと掌を向けて股をやや開き、決めポーズみたいなのを取ってくる。

 しばしの沈黙……。間を風が吹いて葉っぱが舞う。


「はうっ! 妖精王様にいつもの名乗りをしちゃったのです! なんだか恥ずかしいのですっ! まさか打ち首にっ!?」

「いや打ち首しねーって……」

「それは安心したのです」


 萎縮したり、ホッとしたり、エルフにしては感情豊かだなぁ。


「そうでした! なんでヒトを連れているのですっ!?」

「身寄りないからな。親もいねぇ。こうして同じ冒険者としてパーティー組んでる。二人だけだがな」

「ぼ、ぼ、ぼ、冒険者なのですかっ!? 妖精王様なのにっ!?」


 人間に例えると王様が普通に冒険者をやってるのと同じくらい驚かれる事なのだろう。

 それと他のエルフは妖精王様相手には粗相ないように会釈するだけだが、きっとアルローこそがエルフの代弁者かも知れない……。


「人間がベースだからしょうがねぇだろ」

「え? ナッセさんは人間じゃないんですか?」

「そうなのですっ! ヒトなどと野蛮な種族と一緒にされるなど無礼の中の極み! いずれは天上へ昇られる上位生命体さまなのですーっ!」


 ムキーッとユミへ突っかかろうとする。


「アロラーさん、ちょっと黙ってくれねぇか?」

「はううっ! す、す、すみませんでしたなのですっ!」


 こちらが言う事には、ビシッと背筋伸ばして緊張するのになぁ。必死にペコペコしてる。

 ……どうしようか。面倒なのに絡まれちまった。

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