14話「同じ商団馬車に勇者がいた!?」
アッセーはナッセという偽名で冒険者に登録している。実際本名はナッセだが、異世界転生された時点で肉体が全然異なるので、第二の人生として本名をアッセーで生きる事になった。
そして追放モノとは微妙に違う展開で悪辣なパーティーを懲らしめた際に、ユミという女の子を連れて行く事になった。
「そろそろだなぞ」
馬車に揺られながら、アッセーが座っているそばでユミが寝入っている。
すでに一キロ範囲もの『察知』を展開して、襲撃してくる盗賊団っぽいのを感知していた。
「あのさー、その先で襲撃受けるから警戒態勢にいってくれ」
「ん? 盗賊団か?」
「なに??」
「来るのか?」
馬車を操縦している商人に警戒を促すと、一緒の冒険者にも緊張が走る。
「……襲撃は本当なんだな?」
「ああ」
「わ、分かった。他の馬車にも知らせておく」
商人は電話っぽいので他の馬車にも連絡したようで、ブレーキがかかっていく。
同時に向こうの森から盗賊団が現れてきた。わらわらと大勢だ。
止まった馬車から、護衛の冒険者たちが飛び出していく。
「オレはこっそり支援しとくかな」
前の時のように空気弾を撃つので、馬車の中から様子を窺う事にした。まだユミ寝てるし。
「バカめ!! この俺が馬車に乗っていたのが運の時だったな!」
なんと一際強そうな気配を放つパーティーが他の冒険者より前に出る。なんかざわめく。
勇者っぽく頭に輪っかをかぶってて、軽装にマント、そして掲げられる聖剣。後方に歴戦の戦士、魔道士、僧侶が威風堂々と立っている。
「なんだぁ……? 勇者か……!?」
「そうか! テメェらのせいで我らの不意打ちが読まれてたのか!?」
頭領らしき筋肉隆々とした大男が唸る。そばでずる賢そうなネズミのような優男。
後方で何十人もの盗賊が殺気立っている。
それでも勇者たちは堂々と得物を抜いて、身構えていく。
「ヤンバイ王国代表の旋風勇者キラギラン!」
「魔王退治のために同行する事になった豪腕戦士ビッグボン!」
「すべての自然を慈しむエルフの新緑魔道士フォレス!」
「邪悪なる魔を滅する破邪僧侶ブッチギ!」
なぜか各々ポーズをとり、戦隊モノを連想させた。
冒険者の連中も盗賊団も「なにーっ!」と驚くリアクションでシンクロした。
「そして聖剣ライディーン!! 受けてみよ! 必殺剣ギガヴォルテックーッ!!」
勇者キラギランは聖剣を掲げたと思ったら、右腕でブンブン縦回転を繰り返す。徐々に回転が速くなっていくと稲光が迸っていく。
地響きが大きくなっていって、盗賊団は戦慄におののく。
勇者の縦回転剣から、なぜか横回転の竜巻が稲光を伴って放たれた。
「喰らえ!! 必殺剣ギガヴォルテックーッ!!(重複口上)」
横回転の竜巻が盗賊団へ突っ込むと、一気に拡大して木々を巻き込んで大旋風が唸りを上げる。
最後に爆発するように、高々と衝撃波を噴き上げて何十人もいた盗賊団が宙を舞う。
「おおお! さすがは勇者だぜーっ!!」
「盗賊団を全滅とは!!」
「すげぇ! 本物だぜコイツぁ!!」
「もう世界天上十傑に入ってるんじゃないか!?」
確かにA級冒険者レベルどころか、天上十傑に入る……?
ちなみに『世界天上十傑』とは、この世界で強いやつベストテン。本とかで知っただけで、実際に会った事はない。
もし勇者キラギランがランクインしているなら、初めて会った事になる。
「そうだとしたら拍子抜けだなぁ……。実は二段階さらに変身できます、とかだったらいいんだが」
「むにゃむにゃ……」
ユミが起きそう。
勇者たちが同行しているおかげで馬車の旅は三日間平穏だった。
交易路は、世界でただ一つの大陸をグルッと一周するように通る大きな道路。主に運送商団などが馬車を率いて通っている。
そして大陸の中心にそびえ立つ天に届く塔のような大きな山がある。
「昼頃には国へ着きそうだな」
「退屈でした……」
「ずっと馬車の中だもんな」
ユミはあくびする。
太陽に相当する『光珠』は斜め上の空で横切るもので、それが世界を照らしている。横切っているので中心の山から日の出して、再び日没するというものだった。
山から出て三時間くらい経っているから、横切る『光珠』が後ろの山と真っ直ぐの位置になるまで六時間はありそう。
「大体、この『光珠』って太陽とは違いすぎる。普通は地平線から日の出して、反対側の地平線へ日没する方が分かりやすいのにな!」
「タイヨウって何ですか?」
「ああ、そっか。知らないんだよな……。『光珠』が当たり前の世界だから……」
「何を言ってるですか?」
オレが実は異世界転生したって説明しても理解難しそうだな。
「いや、長くなるから後で話すよ」
「うん」
「それはそうと『光珠』との距離関係上、山の付近か、海近くかで、日に当たる時間が違うってのも困るんじゃねぇか……」
とはいえ、空の『光珠』は地球と月の半分ぐらい離れてるっけ。本では約一七万キロと記述されている。
「あ、オダヤッカ王国だ」
森林が生い茂る地帯にある王国。国内にも緑があって花などで彩っている。
エルフがやや多めにいるらしいな。
商団馬車が王国へと曲がっていって、数十分すると大きな城壁の門を潜っていった。これで入国だぞ。
「面倒な事にならなきゃいいがなぁ……」
なんせエルフの国だもの。こっちの素性バレバレだし。




