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1話「またかよ……! オレ転生!」

 深夜、とある小さな貴族の夫婦が薄暗い広場で広大な魔法陣を床に描いていて、なんか呪文を唱えていた。


「とりあえず、なんかすごいヤツを我が子として宿らせたまえ! 生霊でもいいから、どっか英雄の魂を分身させて引っ張ってきてくれ!」

「はい! 今、我々は風前の灯なんでお願いします!!」


 すると魔法陣がカッと輝きだしたぞ。

 光の帯が噴き上げられて、女神様が薄ら浮かんできた。

 純白のキトンを着ていて、金髪ロングのウェーブ。美人に整った顔。瞑っていた目がゆっくり開かれる。


《……あのさ、前に一度やってなかったっけ??》


 おおよそ女神さまとは思えないフランクな言葉。

 申し訳なさそうに主人は土下座。


「すみません。我が息子は確かにイケメンで多彩な武具の扱いに長けておるのですが、逃げられました」

「はい。なんか厳しく帝王学学ばせたせいかグレたみたいで……」

「一歳から九歳まで鞭打ってシゴいてたんだけど、何がダメだったんですかね……?」

《何やっとるんですか? あんたら! このご時世、虐待ですよ! 虐待!》

「「すみませんっっ!!」」


 貴族の夫婦は小さくなって土下座。


《今回だけですよ。これからフツーに教育してください。また同じ事あっても知りませんからね》

「ははーっ!」

「ありがたき言葉ーっ!」


 ひらひら両手を上下させて平伏。


《後はズッコンバッコンしてください。すごい魂を宿らせますから》


 女神さまとは思えない指示に貴族夫婦は「仰せのままに」と承諾。

 言うまでもなく今夜実行した。




 ────そして一年後、貴族夫婦に次男息子が生まれた。

 黒髪でとんがってるくせっ毛が目立つ赤ん坊。女神さまの言う通りなら、どっか英雄の魂が転生した子どもなのだろう。


「おおっ! なんか可愛らしい我が息子!」

「ええ! では名前は……」


 貴族母は赤ん坊を抱いていて、貴族父は「うーん」と腕を組んで悩む。


「とんぬ……」「アッセェ……」


 とんでもないダサい名前を決められる前に、赤ん坊が口出ししてきた。

 しかし本当は「ナッセ」って言いたかったのに赤ん坊なので変な発音になった。


「そうか! この子はアッセーって呼ばれたいんだな!」

「ちあう! ちあう!! アッエー!!」


 赤ん坊は汗タラタラで首を横に振って発音を間違えた事を訴えたかったが、お花畑状態の貴族夫婦は満面の笑顔で全く聞いていなかった。


「アッセー!! 君の名はアッセー・クルナッツだ!!」


 高々と上げられた赤ん坊は「もういいや」と諦念に落ちた。

 アッセーは生まれ落ちて、意識が芽生えた頃から前世の記憶を持っていた。


「つーか、居眠りしてたらいつの間にか転生してたんだが……例の悪役令嬢TSの時と同じかよ……?」





 すくすく育ってきて三歳になった頃、この世界の言語や情勢を大まかに知った。


 自分の元いた世界とは異なる異世界に転生した。恐らくだが、また『分霊(スクナビコナ)』で魂分裂して転生させられたのだろう。

 また遠すぎて、本体と思考と記憶をリンクできない事も察した。


「アッセー様! 熱心に勉強してますね」

「……うん」


 メイドたちがわいわいしてるのをよそに、アッセーはため息。


「もう一個体として新たに人生送るしかねぇな……。あっちの世界にはもう戻れないし……」


 大まかに言うが、この世界は『ドラエフサーガ』って名前らしいなぞ。

 元いた世界と異なり、ここは一つの大陸でなりたっている。その中心には途方もなく太くて高い山『塔山(タワー)』が聳えている。

 太陽に該当する『光珠(オーブ)』は斜め上の空を横切るらしく、中央の山で日の出と日没を繰り返す。

 夜は午後九時から午前三時と短い。

 それでもこの世界の生物は適応しているので睡眠時間が短くても問題ないようだ。


「オレが生まれ育った国は『アルンデス王国』だ。そこの小さな貴族の次男……」


 鏡を見ると、転生前とちょい違う。銀髪だったのが黒髪で、瞳は青い。髪型はそれほど変わってない。

 体は不思議と馴染む。

 生まれが良い貴族だからか、素質も高そうに感じる。つか、能力はまんまだ。


「アッセー、勉強は熱心なようだが無理はせぬようにな……」


 貴族父はアベルト・クルナッツ。


「一緒に遊びましょうか?」


 貴族母はディア・クルナッツ。

 アッセーにとっては転生先の両親だ。なんかニコニコして妙に優しい。

 兄貴にあたる長男は家出し……。


「ただいまー!!」


 バンとドアを開けて、上機嫌に青年がやってきた。母譲りの金髪ロン毛のイケメン。なんかキラキラしている。

 両親とアッセーは思わぬ長兄の帰郷に唖然……。

 そう、兄貴は七歳年上で十五歳のリッテ・クルナッツ。


「お初にお目にかかります。リッテ兄様。アッセーです」

「お前が私の弟か。初めましてだな。可愛がってやろう」


 よしよしと優しく撫でてくれたが、近づいてくる顔が意地悪そうに歪んできた。


「この家を継ぐのは私だ。弟風情が出しゃばるなよ」

あとがき


 まーたナッセシリーズですw

 今度も無双展開のようですw

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