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第7話

「お嬢さん、そろそろ着くよ起きて」

「んん……」

 優しい声で起こされる。

 薄っすら目を開けると目の前にカルミアさんの顔があった。

「ひゃぁっ!?」

「暴れると落ちるよ〜」

 (わたくし)は後ろに乗っていたはずでは!?

「いやー、お嬢さん寝落ちちゃうんだもん焦ったよ」

 抱き抱えられている。それは約得で良いのですが。

「あの、何故(わたくし)縛られていますの……?」

 カルミアさんの首の後ろに通されて見えませんが腕を縛られていますわこれ。動かせませんもの。

「え?落ちちゃうから?」

 意識が無かったのでそれもそうですがこれは少しどうかと思いますわ……!

「町が見えてきたよ」

「町に入るなら尚更外してくださいませんか!?」

 ちゃんと捕まっててねと言いながら縛るのに使っていたリボンを解いてくれました。間に布を巻いていてくれたようで痛みはありませんけれどそうではありませんわ。

「それじゃ、普通の馬くらいの速さで行くからねぇ」

「最初からそれが良かったですわ」

 やっと普通の移動速度になりましたわ。

「ああ、そういえば町に入るにはお嬢さんの服は目立つねぇ……ただでさえ可愛らしい顔立ちで注目される事間違いないのに困った……幻覚魔法掛けて誤魔化すか。いやもうここはさくっと錯乱させるか」

「平和な方法でお願いいたしますわ」

 町を壊滅させられたら困りますわ。

「じゃあ認識阻害でいこうかな。手、出して?」

 大人しくカルミアさんに差し出す。

 手を取られするりと指を絡められる。

認識阻害(グティブビション)

 身体中を優しい風が吹き抜けていったような不思議な感覚がした。それに初めて聞く呪文だ。先ほど認識阻害でいこうかなとと言っていたから認識阻害の魔法なんでしょうけれど……魔女が使う魔法は(わたくし)が普段使っている魔法とは体系が違うのかしら?

「間に合わせだけどこれ着けておいて」

 右手の中指に通されたのは指輪だ。銀色で飾りとして小さい水色の石が付いている。

「それ着けていると認識阻害が固定されやすいから。あと私の魔力を帯びているから狙われにくくなるし……何かあったら魔力の糸で辿れる」

「はい」

 指で撫でる。細身のそれはしっくりとくる。

「んじゃ、町では私のお菓子作りの弟子ってことで通すからよろしく。先生か師匠か、まぁ好きな方で呼んでね」

「分かりましたわ先生」

 いつの間にか関所まであと少しになっていた。ああ、大丈夫でしょうか?

「後でお嬢さんの服買おうねぇ」

 ご機嫌に鼻歌を歌うカルミアさん。音色がとても心地よい。

 顔に影がかかる。あら、もう着きましたの?顔を上げると壁がすぐ目の前にあった。関所の門番さんが2人立っている。

「やっほー久し振りに来たよぉ」

「本当に久々だな。何かあったのかと思ったぜ。元気そうで何よりだ」

 カルミアさんが馬もとい箒から飛び降りて門番の方に挨拶している。渡しているのは通行証でしょうか?

「まぁ色々あってね〜……マドレーヌ、一人で降りられる?」

「……高いので無理です、先生」

 あー、と言われながら抱き抱えられて降りる。

この子(マドレーヌ)が弟子入りしたからちょっと忙しくてねぇ」

「へぇ?」

 門番の方にジロジロと見られる。そっとカルミアさんにくっ付く。この方大きくて少し怖いので……。

「結構器用だし覚え早いから一人前になるのもきっと早いよぉ」

 にこにこしながらそう言うカルミアさん。笑顔がとても愛らしい。

「そうか、楽しみだな。んで、お前さん通行証は?」

「えっと、通行証は、その……」

 通行証なんて持っていない。どうしよう。門番の目付きが険しくなる。

「私が保証人でここの商業ギルド加入するから仮の通行証の発行お願いしていいかな?帰りに正式の通行証申請するからさ。あとこの子(マドレーヌ)は恥ずかしがりやさんでねぇ、知らない人にジロジロ見られると上がって上手く喋れなくなるんだ」

 よしよし、大丈夫だからねぇと言いながら背中を擦られる。

「それはすまねぇな!まぁそりゃお前が登録してる商業ギルドで申請しないなんて不義理を弟子がする訳ないよな。おーい、仮の通行証発行してやってくれー!……嬢ちゃん字は書けるか?代筆もしてもらえるからな?」

「だ、大丈夫……です!」

 まさか字が書けるかどうかの心配されるとは思っていなかった。認識阻害が上手くいってはいそうだ。門の少し中にあるカウンターで渡された紙を記入する。氏名と年齢、職業、出身地、保証人といったところだ。

「貸して」

 カルミアさんがサラサラと記載していく。職業菓子職人見習い、出身地不明、保証人カミーラ、カミラ?読みはどちらだろうか。

「マドレーヌ何歳?」

「……15歳ですわ」

 15と記載しはいっと羽ペンを渡される。

「あとは名前だけ書けば問題ないよ」

「ありがとうございます、先生」

 マドレーヌ、と。ペンを紙に走らせる。

 用紙を提出しようと顔を上げるとカルミアさんは門番さんと話していた。

「大きい焼き菓子詰め合わせ、銀貨5枚な」

 門番に商品売りつけるのはいかがなものでしょうか!?

「おお、カミラのお菓子久しぶりだなぁ!!」

「俺のも!!」

 読み方はカミラだったらしい。そしてお菓子が人気だ。

「毎度〜」

 手招きされたので近寄る。ついでに申請の紙も渡す。

 お昼ごはんが入っているバスケットから大きい包みを2つ取り出している。

「いやー、これこれ。最高だよな」

 カルミアさんは代金を回収して腰の革袋に仕舞っている。

「お前初めての時は高いって言ってたのにな」

「そりゃな、今でも給料と比べて高いとは思ってるが……それだけの価値はあるからな。しかもカミラは気まぐれに来るから買える時に買わないと」

「そうでしょうそうでしょう、今日はおまけ」

 何やら薄い紙?に包まれた茶色くて小さな四角い塊を渡している。

「キャラメル。甘いよ」

「いいのか!」

 喜んで早速口に入れている。門番さんそれでいいのだろうか……?

「あ、嬢ちゃんこれ落とさないように持っていくんだぞ。帰りに回収するからな」

 木の板を渡された。仮の通行証のようだ。

「ありがとうございます」

「では、ようこそリティクの町へ」

 門を抜ける。眩しい。小さな家が建ち並んでいる。

「いい町だよリティクは」

 馬、もとい箒を引いてカルミアさんが後ろから来た。そしてどこか遠くを眺めているようだ。同じ方角を向いてみる。先ほどと同じく小さい家がたくさんある。遠くには雪山が見える。少し眩しいなと思った。

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