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ヒロインの、はずですが?  作者: おりのめぐむ
王立貴族学院 一年目
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 これは昨日宰相くんと馬車で二人きりなったことを指摘しているのだろうか?

 もしかして何かのフラグだったりする? 宰相くんを巡ってのバトル開始、とか。

 下手なことを言うとヤバいのかな? そんな駆け引きなんて解るはずもない。


「ええっと、そうですね。帰宅の際、ヴアイン様が送ってくれました」


 もう馬鹿正直に答えてどうするんだよ、わたし!

 アイネさんが肩を震わせてブルブルしてる。お、怒らせてる!!?


「……それで、何かお話になったの?」


「まあ、他愛のない、世間話を……」


「……どのような?」


 これって詳しく話す必要があるのかな? クレープの話をしただけなんだけど。

 でも眼鏡が光ってて怖い。握りしめた拳が震えてるし。


「城下の流行り物の話、……みたいな?」


 クレープ食べたとか言ったら城下で買ったことまで話さなきゃならなくなるので曖昧にしておく。

 やっぱりここでフラグっぽく何か言いがかりや罵倒を浴びせられるのかな。

 ”婚約者のいる殿方と二人きりになるなんて!”とか罵声をあげて突き飛ばしてしまう事件勃発?!

 目をつぶり、覚悟を決めて構えるものの、思った反応がない。


「そう……」


 アイネさんは肩を落として小さく呟くと俯いたまま身動き一つ取らなかった。


「あのぅ……グレイプさん、具合が悪いのですか?」


 不安になって近寄り、顔を覗き込んでみると! 目の端から一筋の雫が!

 ええええええ、な、な、泣いてる??? 何で?

 これじゃあヒロインが婚約者虐めてる図になっちゃうじゃんか。逆だよ逆。

 わたし、実は悪役令嬢だったの? もう、訳わかんないし、動揺するよ!


「どどど、どうしたんですか? グレイプさん!」 


 ただならぬアイネさんの様子に放って置けることもなく、話を聞くことにした。


「シャルロットさんはリック様とよく会話なさるのね」


 は? 会話という会話なんてここ最近の話だし。頻繁という訳じゃないと思うけど。


「私とはいつも挨拶程度で学業のことでしかお話が続くことはないわ。婚約者同士ですのに他愛のないお話なんてしたことがないのよ」


 以前、観察していた時、確かにそうだった。二言三言返すぐらいで私語はない感じ。

 でもさすがに二人きりの時は何か話すでしょう。そう聞いてみたら首を振る。


「学園に入学してからは二人でお会いしたことがないの。校内で顔を合わせるから訪問しあう必要がないもの。それ以前はお会いしても互いに読書を始めてしまうから会話なんてなかったのよ」


 え? 婚約者同士なのに会っても読書? ナニソレ、オイシーノ?


「けれどもお互い好きなことで時間を共有できてそばにいるだけでも幸せだと感じていたわ。それなのにシャルロットさんたちとランチを共にするようになってからはリック様から貴方に話しかけるようになっていて……」


 いやいやいや、毎週ランチで提供するパンに対して説明する際に質問を投げかけてるだけだと思う。

 まあ、メアリの提供食材に関しては王子と質疑応答してるのは確かだし、マリアの場合は騎士くんフォロー入ってるからね。

 でも別に深くなるような会話なんてしてないし、……って、もしかしてそういう風に見えるよう補整が効いてるの?

 話しかけられたら話すし、不可抗力でも相手はするけど、自分からは余計な行動はとってはいない。

 恋愛に関する駆け引きなんて分からないし、進展したといえる関係なのか疑わしい。

 ただのクラスメートだった頃よりは確実に近づいてはいるけどそれ以上は重い腰を上げてないのも事実。

 攻略に乗り出さなきゃいけないのかな、とか思いつつも、結局はなあなあにして誤魔化してはいたけど。

 早い話、接近はあっても活かしてこなかったし、正直逃げていた感はある。

 それなのにアイネさんから見るとわたしと宰相くんは仲良く会話してるってことなんだよね?

 ……泣いてショックを受けるぐらいに。

 鐘が鳴り、アイネさんを促しながら慌てて教室に戻る。

 まさかの展開に頭を悩ます。これってヤバいんじゃないのかと。

 激しい対立図を意識しすぎて攻略することから逃げてたけど、一旦向き合う必要がある。

 アイネさんが今までわたしに絡んできても暴言を吐くわけでもなく、注意を促してきただけだ。

 エセ貴族だから風当たりが強いのかと思っていたけど、それは同じ伯爵令嬢として示しをつけるためで、耳の痛いことばかりだったけど、意地悪でしていないのも判ってきた。

 宰相くんが絡んでいようがいまいが関係なかったんだ。

 それに少なくともアイネさんは婚約者としての義務とかでなく、本当に宰相くんのことが好きなんだ。

 その反面、わたしはっていうと気がある訳でもない。むしろ何とも思ってない。

 ……でも宰相くんはどう思っているのだろう?

 そんな風にうだうだと考えているうちに季節は過ぎ、あっという間に冬期休暇に入っていた。

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