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ヒロインの、はずですが?  作者: おりのめぐむ
王立貴族学院 一年目
10/20

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 お勉強といえば図書館。

 さすがテスト前ということもあって席がまだらにところどころ埋まっている。

 放課後、わたしも張り切ってやってきたけど中途半端に空いた席に戸惑っていた。

 一応、マリアとメアリも誘ってみたけど都合が悪いらしく、ぼっちとなる。

 エセ貴族としては堂々と立派な先輩貴族様方との相席などできずじまい。

 そんな調子で目ぼしい席はなく、カウンター近くの気が散りやすそうな場所がぽつんと残っているのみ。

 小心者であるわたしはそこに腰を下ろした。

 終礼後の図書館ともなると人の往来が激しくて貸し借りが多くなっている。

 しかも受付が二人程度しかいないみたいで制服を着ていることから生徒であることが明らか。

 貸出と返却でてんやわんやしているのに先生の姿は見当たらない。

 これももうお馴染み、教育方針ってものが発動してるんだね。自立の一環っていう。

 列を成してもみんなお上品に過ごしてるのはさすが貴族らしい。

 私語もせず、じっとして順番を待つ姿は凛としてるけど、視線はカウンターに向いてるわけではない。

 だからこそ何となくこっちを見られているような気がするため、集中できない。

 つい人の気配を感じるとそっちの方に目がいっちゃうんだよ、さっきから!

 普段から注目を浴びてるせいで自意識過剰気味なのかもしれないけど。

 全然頭に入らない。目線は手元を見てても気が散ってる。

 学習よりも往来の方が気になる!! 早く落ち着けばいいのに。

 こんなことならドサクサ紛れに相席すれば良かったのかも、いや無理か。

 仕方がないので荷物を置いて席を離れた。気を紛らわすためには。

 何か役に立つものを見つけに行こう! 専門書とか参考書とか。

 そんな調子でウロウロすればお勉強とは関係のないものをパラパラと捲ってた。

 だってね、文芸や実用書があるんだもん。小説やガイドブックだよ!

 庶民向けのものまで置いてあるとか思わず手が伸びるでしょ!

 いやぁ、先輩が褒めたたえていたのも頷ける品揃え。あの時は気づけなかったもん、緊張で。

 確実に現実逃避してるよなぁと思いつつ、時間をつぶしていた。

 そうこうするうちにカウンターが落ち着いたようでひと気が消えていた。

 よし、1時間ぐらい無駄にしたけど、今からやるか! と席に戻る。

 ふと周囲を見回せばぽつりぽつりと席が空いていた。

 む、今頃空席がっ! けど、移動するのも面倒なのでそのままの席に座った。

 ノートを開き、今度こそは集中。なかなか好調な滑り出しじゃないか。

 割と算術的な教科は得意だったりする。お店で金銭を取り扱ってたから計算できないとね。

 ケアレスミスさえしなければいい点は取れると思う。問題はそれ以外なんだけども。

 名称を問われるものだとついスペルミスが発生する。これは本当にどうにかしないとやばい。

 アイネさんが毎回発見するほど多いのは事実。これは書き取りするしかないだろうなぁ。

 ため息交じりにペンを走らせていると視界に人影が入る。

 濃紫色の髪を一つに纏めた真っ直ぐな姿勢の後ろ姿。

 ん? あれは宰相くんではないのか?

 カウンターテーブルには何冊かの積み上げた本があり、書類を手にしている。

 ちなみに受付やってた生徒二人は見当たらず、いつの間にか存在している司書の先生と話し合っている様子。

 内容までは分からないけど、何かを主張するように熱弁を奮っているようだ。

 おお、こんなところに宰相くん! 偶然にもほどがあるぞ。

 とはいえ、これは何かのフラグなのか? 攻略に関しての強制的な出会いとか。

 考えられるのは接点のないわたしとの関係性をどうにかするために?

 現在わたしはテスト勉強中。苦手とするものに困っていた。そこに知的な眼鏡男子が現れる。

 ここでお勉強、教えて♡的に迫るのがよくある接近手段であることは間違いない。

 が、そんな色恋的なことできるはずもなーい。色気より食い気の持ち主だし。

 それにエセ貴族が不自然な声掛けをできるはずもない。彼はオーラ組の一員だぞ。

 いくらアイネさんとの接触があるからといって宰相くんとは馴染みがあるわけではない。

 そう考えるとゲームのヒロインってめちゃくちゃ行動力あるよね。

 攻略者を見たら突っ込んでいく。躊躇することなく選択を決断、実施。

 わたしには高いハードルだわ。たかがクラスメイトだという距離間の中での接近は。

 もっとこう自然な感じの環境じゃないと話しかけるなんて到底無理だ。

 頬杖をつきながらため息交じりにカウンターを見つめると宰相くんが踵を返した。

 先生との話し合いは終わったらしく、図書館から退出するようだった。

 その時、眼鏡が反射してバチっと目が合ってしまった。

 慌てて逸らすわけにもいかず、思わず薄ら笑いしながら会釈する。

 宰相くんもそれに応えるように軽く会釈を返すと足早にその場を去っていった。

 何なんだよ、心臓に悪い。予測不能過ぎて怖いわっ!

 ただただ訳の分からない汗が大量に湧き出るのであった。

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