トパーズの盟友
台本形式で、この作品は書いています。
カール=トパーズ 男
アーノルド 男
マリンダ 女 国からのスパイ
国王
兵士A
兵士B
序章
マリンダ「国王陛下、お呼びでしょうか」
国王「おぉ、やってきたか、マリンダ。待っていたぞ」
マリンダ「どうかされたでしょうか?」
国王「この王国の南には、猿どもが住んでいる場所があるだろう?」
マリンダ「それは...スラム街のこと───ですか?」
国王「あぁ、そう言われることもあるな。そこ、そこだよ」
マリンダ「スラム街がどうかされましたか?」
国王「人間の生活とも言えないような猿が多すぎる。殺すぞ」
マリンダ「なっ───」
国王「何か、文句はあるか?」
マリンダ「いえ...ございません」
国王「ただだ。ただ、一言に殺すと言っても高貴な人間の暮らしをしている朕には、猿の生活はわからないのだ。だから、スパイとして入り込んでくれ。お前になら、わかるだろう?」
マリンダ「───。わかりました」
国王「連絡用の機器と、銃を一丁渡しておく。銃は、身を守るために使え。猿は、知能がないから何をされるかわからんからな」
マリンダ「はい」
マリンダ、連絡用機器と、銃を受け取る。
国王「では、今すぐに行って来い」
マリンダ「はい。わかりました。それでは」
1場
カール「おぉい!アーノルド!そっちに行ったぞぉ!」
アーノルド「ああ、わかった!」
鹿が、入ってくる。それを追いかけるようにカールとアーノルドが入ってくる。
アーノルド「えい!」
アーノルド、鹿の背中に剣を刺す。
カール「ナイス、アーノルド!」
アーノルド「カールが上手くこっちに誘導してくれたお陰だよ」
カール「久々に鹿の肉を手に入れたな」
アーノルド「あぁ、そうだな」
マリンダが入ってくる。
カール「あれ、誰かいるぞ?」
アーノルド「本当だ。見ない顔だな」
マリンダ「あなた達は...ここに住んでいる人達?」
カール「あぁ、そうだよ」
マリンダ「助けて頂戴!私、今追われているの」
アーノルド「追われてる?誰に?」
マリンダ「詳しくは話せないけど、私を助けて!」
カール「困っている人は助けないと!アーノルド、行こう!」
アーノルド「あ、あぁ!」
カールはマリンダの手を引いて出ていく。アーノルドは鹿を背負って出ていく。
3人、入ってくる。
カール「街まで来たから、きっと姿は眩ませられる」
アーノルド「カール、この女性どうするつもりだ?」
カール「困ってるんだ、助けてあげないと行けないだろう?」
アーノルド「そうだけど...俺の家は駄目だよ?」
カール「じゃあ、俺の家に連れて行くよ」
アーノルド「わかった。じゃあ、そうしてくれ」
カール「ということだから、えっと...」
マリンダ「マリンダよ」
カール「マリンダ!俺の家に行こう!」
マリンダ「わ、わかったわ」
カールとアーノルド、はける。
マリンダ「騙してここまで来てしまったのだけど...」
カール(声だけ)「おーい!マリンダ!こっち!」
マリンダ「は、はい!」
マリンダ、はける。
2場
3人、入ってくる。場には椅子。
カール「俺の家にようこそ!」
マリンダ「お、おじゃまします...」
カール「父さんと母さんは、いないみたいだ。先に俺の部屋に行こう」
カールは、置いてあった椅子に座る。
アーノルド「マリンダの話を聞く前に、俺らの自己紹介だな」
カール「それじゃ、俺から!俺の名前はカール!カール=トパーズさ!昔は、貴族だったらしいけど、ヘマをやって追い出されちまったらしい。俺の先祖はアホだよな、あはは」
アーノルド「俺の名前はアーノルド。ただのアーノルドだ。年齢は16歳で、カールとは幼なじみだ」
カール「そうそう、アーノルドは剣の達人なんだぜ?」
マリンダ「そうなの?」
カール「あぁ!走ってる鹿だろうと猪だろうと熊だろうとバッタバッタ倒すんだ!」
アーノルド「カール!俺は別に剣の達人なんかじゃない。それに、熊なんて倒せるわけないだろう?」
カール「例えだよ、例え。そのくらい凄いってことをマリンダに教えてあげないと」
アーノルド「俺の剣の話は、誇ることでも無いし、恥ずかしいからやめてくれ。そんなことより、マリンダも自己紹介してくれ」
カール「あ、そうだ。まだ聞いてなかった」
マリンダ「私はマリンダ。ただのマリンダよ。16歳よ。王都から来たの。さっきは助けてくれてありがとう」
カール「そうだ、誰から追われていたの?」
マリンダ「それは───、内緒よ」
カール「えぇ、助けてやったしいいじゃないか!」
マリンダ「嫌よ、教えないわ」
カール「ええー」
アーノルド「カール、聞きすぎは嫌われるぞ。女の秘密と体重は聞いちゃいけないって知らないのか?」
カール「えぇ、そうなの?マリンダ、ごめん」
マリンダ「いや、いいのよ。さっきは、助けてくれてありがとうね」
マリンダ、外に出ていこうとする。
カール「って、ちょっと。マリンダ?どこに行くの?」
マリンダ「もう、行こうかなって」
カール「行くって、どこに?」
マリンダ「ここにいても、迷惑だと思うから」
カール「そんな。マリンダ、今日寝るところはあるの?」
マリンダ「いや...ないけど...」
カール「マリンダ。スラム街のここをナメちゃいけないよ。可愛い可愛いマリンダが夜中に外で一人でいたら、怖くて大きなおっさん達が、刃物を持って───きゃああああ!」
アーノルド「カール、うるさい!」
カール「でも、事実だろう?少なくとも、夜中にスラム街の外にでちゃダメだ!」
アーノルド「あぁ、アレだ。カール。お前、信用されてないんじゃないか?」
カール「え、うっそぉん?」
マリンダ「大丈夫、カールはチキンそうだから、襲ってこないって確信してるわ」
カール「そんな、失礼な!」
マリンダ「まぁ、襲いかかって来てもこれで撃ち殺せばいいだけだけどね」
マリンダ、銃をチラ見せさせる。
カール「うわ!銃だ...」
カール、アーノルドの後ろに隠れる。
アーノルド「おい、カール。俺を盾にするな」
カール「だって、銃だよ?剣の達人がいないと勝てないよ!」
アーノルド「だから、俺は剣の達人じゃないって!」
カール「俺、まだ死にたくないから」
アーノルド「あぁ、そうかい。なら、夜中はマリンダに近付かない事が得策だな」
カール「うぅ...そうだよなぁ...」
マリンダ「大丈夫よ、冗談だから」
アーノルド「あ、もう時間だ。そろそろ、家に帰るわ」
カール「え、本当?」
アーノルド「あぁ。マリンダに嫌われないように頑張ってな」
カール「ちょっと、待ってよ!アーノルド!」
カール・アーノルドはける。
マリンダ、連絡用機器を取り出す。
マリンダ「国王陛下、スラム街に侵入完了しました」
国王(声のみ)「そうか...何か情報は出たか?」
マリンダ「夜中は、皆家の中にいるようです。夜になると、外に国王陛下がおっしゃる猿がタムロするらしいので...」
国王(声のみ)「情報提供感謝する。次に会うのは、スラム街が無くなってからだな」
マリンダ「そうですね───って、勝手に連絡切られた...スラムの人だって、いい人はいるのに...」
暗転
3場
明転
場には、カール・アーノルド・マリンダの3人。
カール「今日は一緒に買い物に行こう!」
アーノルド「あぁ、いいな。で、お小遣いはあるのか?」
カール「あぁ、銅貨5枚だ!」
アーノルド「それじゃ、ぬいぐるみの1つも買えやしないじゃないか。買えて、肉の串1本だな」
カール「3人でお金を出し合えば、3本は買えるぜ?」
マリンダ「それじゃ、結局1人1本買うのと同じじゃないか」
カール「あはは、そうか」
3人で、露店を周る演技。
マリンダ「あ、これなんていいんじゃない?」
カール「なんだい、それ?イヤリング?」
アーノルド「ペンダントだろ。どこをどう見たらイヤリングに見えるんだ?」
マリンダ「2人共残念。ブレスレットよ」
カール「あははー、アーノルドも間違えてやんの!」
アーノルド「う、うるせぇ!ちょっと、間違えただけだ!」
マリンダ「それじゃ、これください」
マリンダ、ブレスレットを購入。手につける。
カール「おぉ、結構綺麗じゃん」
アーノルド「本当だな」
マリンダ「あら、ありがとう」
アーノルド「そろそろ暗いし、もう帰るか?」
マリンダ「えぇ...そうね」
“ドォォン”
カール「なぁ、爆発音?」
アーノルド「町中で?何があったんだ?」
カールとアーノルド、少しマリンダから離れる。
マリンダ「国王が、スラム街を消しに来たんだわ...」
”ドォォン”
カール「マリンダ!爆発音が近づいてきてる!早く、家に帰ろう!」
マリンダ「わ、わ、わかったわ!」
3人、走って逃げる演技。その時も爆発音。
兵士A「おぉ、まだここにも猿がいたぜ?」
アーノルド「まずい、こんなところにも!」
カール「2人共、逃げて!」
”パァァン”
カール、撃たれる。その場に倒れる。
兵士A「後、2人か...」
マリンダ、銃を構える。
”パァァン”
兵士A「な...銃を持っていた...のか?クソ...」
兵士A、そのままはける。
アーノルド「カール!カール!」
アーノルド、カールの手を取る。
カール「はは...ごめん、撃たれちゃった...」
アーノルド「嘘だろ、カール!冗談だろ?おい!おい!」
カール「アーノルド...ごめんな...また、一緒に狩りに行きたかった...」
アーノルド「死ぬな!死ぬなよ、カール!」
カール「アーノルド...剣の達人に...なってくれよ?」
カール、アーノルドから手を離す。
アーノルド「カール!カール!カール!!!!」
マリンダ「アーノルド...逃げましょう...」
アーノルド「でも、カールが!」
マリンダ「私は、カールを殺そうとした黒幕を知ってるの!」
アーノルド「それってどういう...」
マリンダ「国王が、スラム街を無くすために私をここに派遣したの!スパイとして!」
アーノルド「なぁ...それじゃ...マリンダが殺したって言うのか?」
マリンダ「私だって...カールには死んでほしくなかった!だって、カールはいい人だもん!見ず知らずの私を助けてくれた。まだ、出会って数日だけど彼の優しさは私の心を埋め尽くしてくれたの!」
アーノルド「悪いのは...王様ってことか?」
マリンダ「えぇ...そうよ。国王が企んだの...」
アーノルド「じゃあ...王様を殺せば、カールは報われるんだな?」
マリンダ「えぇ...でも、王様を殺す方法なんてないの!私は、国王に逆らえないの!」
アーノルド「───なら、俺が殺しに行くよ」
マリンダ「え...でも、そんなことしたら、アーノルド。あなたは...」
アーノルド「後先のことなんかどうでもいい。俺は、カールを殺した国王を殺す」
マリンダ「なら、私の銃を持っていきなさい」
アーノルド「あぁ、わかったよ。ありがとう」
マリンダ「国王には、私の使者を派遣するように言っておくから。お城に入る時は、私の名前を言えばいいわ」
アーノルド「わかった、マリンダって言えば良いんだな?」
マリンダ「マリンダ=トパーズ。それが、私の名前よ」
アーノルド「え、トパーズって...カールと一緒」
マリンダ「そうよ。カールの先祖と、私の先祖は兄弟で、跡継ぎ争いで負けたのがカールの家だったんじゃないかしら?」
アーノルド「そう...なのかよ」
暗転
4番
明転
アーノルド「国王陛下、やってきました」
国王「お前が、マリンダの使者か?」
アーノルド「あぁ、そうだ」
国王「そうか、マリンダは死んだか?」
アーノルド「生きている。何故、死んでると思うんだ?」
国王「マリンダとスラム街の猿を諸共殺すために、マリンダをスパイとして派遣したからだ。トパーズ家は、朕の安政に邪魔だったからな」
アーノルド「なぁ!」
”パァァン”
”パァァン”
国王「───誰に向かって銃を撃っていると思っているんだ!この無礼者を捕らえよ!」
兵士B「ハッ!」
剣を持った兵士B、登場。そして、アーノルドを捕らえる。
国王「残念だったな、猿。2発撃っても、朕には当てられなかった。悲しいねぇ、虚しいねぇ。何もできない、無力感を胸に刻んで死にな」
アーノルド「こんなところで、死んでたまるか」
”パァァン”
爆発音に驚き、兵士Bアーノルドから手を離す。
国王「なぁ...こいつ、自らの手の中で発砲しやがった!自分の手なんてどうでもいいのか?」
アーノルド「後先なんか、どうでもいいんだ。俺はよぉ!」
”パァァン”
アーノルド、兵士Bを撃つ。兵士B、その場に倒れる。
国王「兵士を撃ってなんになる?朕の考えによると、その銃は6発で弾切れする!もう、残弾はないか、もしくは残り1発ってところじゃないか?さっき、当てられなかったお前が、残り1発で朕を殺せると思っているのか?」
アーノルド「1発で殺せると思っているのかって?答えはノーだ。だが、俺は剣の達人だ。剣で、お前をぶち殺す」
アーノルド、兵士Bの持っていた剣を拾う。
国王「なぁ!お前ごときが、一国の王である朕を殺していいと思っているのか?」
アーノルド「スラム街に住んでいる、俺だからこそお前を殺していいんだよ」
国王「ふざけるな!立場を弁えろ!猿が!」
アーノルド「喚いている猿はどっちだ」
アーノルド、国王を斬る。そのまま、倒れる。
暗転
5場
明転
場には、アーノルド一人。
アーノルド「スラム街まで戻ってきたけど...誰もいないじゃないか...俺の家にも、ここ、カールの家にも!」
間
アーノルド「どこいっちまったんだよ、カール!マリンダ!帰ってきて、帰ってきてくれよ!」
間
アーノルド「違う...違うな...2人がそっちに行ってると言うのなら───」
アーノルド、自分の額に銃を向ける。
アーノルド「俺が、そっちに行けばいいんだな」
暗転。
”パァァン”
読んでくださり、ありがとうございました!
読んでくれた皆様に幸あれ。
やはり、バッドエンドは書いてて楽しい。
【追記】中の人をよく知る人物が、この作品を読んだのですが「花浅葱らしくない」だそうです。
カールの死も急展開過ぎたし、最初も雑だと。いや、事実だと思います。
1時間半で書き連ねたものなので、クオリティは若干低いのですが。
───批評した彼が、物語弱者だということではございません。一応、演劇部として共に活動してきた「仲間」ですので。