ギルドのやりとり
コロナでまったく休みがとれず……なんとか久々の投稿です
「そうか、お前が言うんだからそうなんだろうな……」
「あぁ、獣神に誓って嘘はいってねぇ」
ギルドマスターのグーラとレオが、ギルドの個室で対面に座って話をしている。アニムスの前では豪快に笑っていたグーラだが、レオの話を聞いてその表情は固い。手に持った黒ずんだ石を見てため息をつくと、先ほどの発言とは裏腹に、訝しんだ視線をレオに向ける。
「この魔石を見ればゴブリンアヴェンジャーだったんだろうってことはわかる。情報からしてもギルドの資料にある通りだったしな。だが、言ってしまえば足手纏いを二人も抱えて死傷者も出なかったってのがなぁ……。何か隠してないか?」
その視線は鋭く、一介の冒険者であればその威圧で委縮してしまうほどの圧が込められている。だが、レオは涼しい顔でそれに答えた。
「ない。あいつらは強かった。だから生き残れた、それだけだ」
グーラはしばらく無言で睨み付けるが、レオも視線を反らさず、しばらくの沈黙が場を支配した。
「くくく、がーはっはっは。お前がそこまで認めるほどか。わかったよ。厄災クラスのモンスターが出たが、折れない牙が討伐した。それだけの話だな。報酬はあとで受付で受け取ってくれ」
先ほどまでの視線が嘘だったかのように大笑いすると、グーラは、ばしばしと豪快にレオの背中をたたき、今度は微笑ましいような視線を向け一言告げる。
「だが、普段ならかみつくようなお前がそんな態度だと、何か隠してるって言ってるようなもんだぞ? きをつけるんだな」
「……っ!?」
グーラの茶化すかのような軽い物言いに、レオは初めて表情が引きつり、耳がパタリと折畳まった。まるで逃げるかのように部屋から出て行ったレオを確認すると、グーラは一人ひとり愚痴のようにつぶやく。
「しかし、国を滅ぼしたこともあるという厄災が出現していたことにも驚きだが、一介の冒険者が倒したとはなぁ。危機管理のためにも公表せんわけにはいかんが、あいつらは認めんだろうな。かえって厄介ごとにならないといいが」
生まれから間もなく、成長しきっていなかった厄災。駆け出しと爪弾き者にされている獣人がそれを倒し、街を守った。ゴブリン駆除の重要性を説くためには公表せざるは得ない。ただし、プライドが高い他の冒険者が、どのように反応するかはなんとなくグーラは想像がついていた。
「俺が表立って守れば、ただの贔屓となり余計な禍根を残す。鮮烈なデビューをした新人達に期待するとするか」
ポンポンと肩をたたくと、彼の体躯からすれば小さくも見える椅子にどかりと座ると、ギルドマスターとしての書類仕事へと戻るのだった。




