「財を投げる」と書いて「財投」
いっきに、日本の財政構造について、理解してしまおう。
先にも示したとおり、特別会計の支出規模は330兆円。(重複分を差し引くと、170兆円)。簡単に言えば、330兆円を、政府は、憲法83条に反して、好き勝手に使っていたといえる。なぜ、好き勝手か?これは、ボクラの税金なのだから。お金の使途と目的がはっきりしないまま使うことは、泥棒と何が違うのか?・・・これは、立派な犯罪にあたる。公金の横領だ。
さあ、「特別会計」のほかに、官僚の犯罪を支える、もう一つの柱がある。それが、「財政投融資計画」と呼ばれるものだ。略して、「財投」。「財を投げる」とは、シャレにならないシャレである・・・投げるどころか、放り投げているのだ。誰に?特殊法人に・・・
「財投」とは、「郵便貯金、国民年金、厚生年金などを政府に出資したり、融資したりするものである」(引用『図解でわかる日本の政治』土屋彰久)
注意しなければならないのは、これが「融資」であること。そのため、「財投債」と「財投機関債」というものを発行して、特殊法人に貸し付けるのである。もちろん、原資は、国民の預貯金であるから、融資分を返済する義務が、政府に生じるのである。その返済額は、利子をつけて返さねばならない。つまり、「財投」は、国民年金といった巨額のお金を運用する、政府の投資・融資活動、簡単に言えば、銀行と同じことをやっているのだ。年金で・・・
これがうまくいっていれば、年金問題も起こらなかっただろう。しかし、特殊法人が潜在的な不良債権を抱える今となっては、投資されたお金は戻るどころか、消えてしまった。だいたい、特殊法人の赤字が、344兆円あるという。このうち、石井さんの著書によれば、257.3兆円が「財投」から出資された分である。
「財投債」と「財投機関債」には区別があり、2001年に導入されたのが、「財投機関債」である。
「財投債」・・・特殊法人の財源確保を目的として発行される国債のこと。
「機関債」・・・特殊法人自らが、資金調達ために発行する債券のこと。
赤字ばかりの特殊法人が、みずから資金調達できるはずもなく(そんな債券、信用されるはずがない)、ほとんどを「財投債」に頼っているのが現状のようだ。現在の出残高は、調べたところ、平成12年度417兆円あったのが、平成16年度では335兆円に縮小しているという。この資料が財務省から発表されていたから、なぜだとぼーっと眺めれいれば、なんてことはない。「財投」を縮小させるために、国債を当てているのである。そして、政府経由、つまり、予算で、特殊法人に直接、これを投入し、返済にあてているのが、カラクリだろう。だから、まあ、回りまわって、年金や健康保険の積立金を潰しているのには変わりない。
「財投」が破綻している証拠を挙げておこう。
石井さんの著書『日本が自滅する日』より―
年金も郵貯も基本的に不良債権化しているのである。このまま行けば、ごく近い将来にも悲劇的事態を迎えることが確実だ。年金や郵貯から「財投」への貸出残高は鰻登りに増えているが、それはすでに、“使い込み総額”といっても決して過言ではない状態になっている。―
「悲劇的事態」は起こった。年金問題は、その一端であろう。公務員の共済年金や議員年金が、しっかり登録されていたのに、なぜ、国民年金だけ5000万件あまりにも?・・・このことを、石井さんは、天上で、どう思うのか・・・誰も知らない・・・
参考文献:『図解でわかる日本の政治』監修:土屋和恵 著:土屋彰久、自由国民社
『教科書が教えられない政治学』著:土屋彰久、自由国民社