参院選の論点【1】
22日付「ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版」
『日本の法人税率引き下げ案、米国も見習うべき』
27日付「赤旗」
『大企業減税/隠しても“不都合な事実”』
の社説。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版。
『世界各国の政府が、こぞってケインズ主義に基づく多額の財政支出を続ける
なか、過剰な公共投資の象徴とも言える日本が妙案を思いついた。法人税率の
大幅な引き下げだ。』
『これは、民主党政府が18日に公表した「新成長戦略」に含まれる珠玉の
アイデアだ。』
『公表された文書には、デフレ脱却や公共投資削減に向けたお決まりの文言と
並んで、「日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため」
法人実効税率を引き下げると記載されている。』
『具体的な日程は明らかにされていないが、早ければ来年から、現在の約40%
から段階的に10~15パーセントポイント引き下げるとなっている。』
『これは、06年9月の小泉首相退任以来、供給サイド感覚の乏しかった日本
政府にとって大転換だ。』
『小泉政権後に誕生した4政権は、古い慣習を復活させ、大幅な財政支出に
よる繁栄回復を目指した。』
『だが、それはうまくいかず、日本はいまだにデフレから脱却できずにいる
のみならず、公的債務はさらに増え、純債務ベースで今や国内総生産(GDP)
の100%前後まで膨らんでいる。』
『過去4政権は、この放蕩財政に目をつぶり、国債発行に依存
してきた。だが、先日新たに誕生した菅政権にとって、ギリシャ危機が警告と
なった。』
『菅首相は、日本も財政立て直しを行わなければ、ギリシャと同じ問題を抱える
ことになると述べた。18日に発表された戦略では、強い経済の実現を最優先に
すべきとうたっている。』
『それには企業の投資と成長を促すことが必要だ。だが、日本では、複雑な
規制網と先進国中最も高い法人税率(下図参照)がそれを難しくしている。』
『景気減速に伴って、国内では企業収益が落ち込み、税金をほとんど、あるいは
まったく払えない企業が増えている。』
『一方、(中略)法人税率の高さが原因となって、企業が国外で得た利益は国内
に環流されずにいる。』
『法人税率の引き下げは、そうした状況を打破し、投資 - 成長 - 失業率の
低下という好循環を生み出す可能性がある。』
『GDPに占める外国からの直接投資の比率が高い国は通常、法人税率が低い
というのは偶然ではない。』
『日本が高い法人税率を維持している間に、韓国や台湾、ドイツといった国々
は税率を引き下げ、競争力をますますつけている。』
『経済産業省が最近公表した報告書によると、シャープとキヤノンの法人税率
はそれぞれ36%と38%であるのに対して、韓国のサムスン電子やLGエレク
トロニクスの法人税率はいずれも20%未満だ。』
『菅首相の経済政策全般については問題がある。消費税の10%への引き上げ案
が復活する一方で、今までのところ民営化の促進や規制緩和の深刻な検討は
なされていない。』
『だが、法人税率引き下げ案は少なくとも、日本政府が債務削減に真剣に取り
組む必要性を認識している証拠だ。』
赤旗。
『菅直人首相は参院選の第一声で、政権の「新成長戦略」を力説するとともに
消費税増税の必要性を改めて訴えました。しかし、菅政権が「新成長戦略」の
目玉にしている法人税率引き下げの方針には一言も触れませんでした。』
『消費税を増税しても法人税減税の穴埋めにしかならないことを知られたく
ないためです。』
『政権の「新成長戦略」は、「国家戦略プロジェクト」として「法人実効税率
(地方税を含む表面的な法人税率、現在40%)を主要国並みに引き下げる」
としています。』
『「新成長戦略」のもとになった経産省「産業構造ビジョン2010」は、
法人税率を「25~30%」まで引き下げるべきだと明記しています。』
『25%に引き下げれば景気の急降下前の税収で計算すると減税額は9兆円に
上ります。消費税5%増税でつくる財源11兆円の大方が費やされることに
なります。』
『実態は消費税増税による大企業減税の穴埋めであり、「社会保障のため」
「財政再建のため」が口実にすぎないことは明らかです。』
『消費税増税と法人税減税をセットにした“方針書”をつくったのは日本経団連
です(「成長戦略2010」、4月)。』
『財界の方針書を引き写しにして、菅政権は「日本の法人税率は高すぎる」と
主張し、それを法人税率引き下げの最大の根拠にしています。』
『ところが、財界団体の幹部みずからが「日本の法人税は高くない」と本音を
明かしています。』
『「私は昔から日本の法人税は、みかけほどは高くないと言っています。表面
税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、
実はそんなに高くない。今でも断言できますが、特に製造業であれば欧米並み
ではある」(阿部泰久・日本経団連経済基盤本部長、税制専門誌『税務弘報』
1月号)』
『本紙試算によると日本の大企業の法人税の実際の負担率はソニー12%、
住友化学16%、パナソニック17%など、まともに税金を払っていません。
法人税減税の最大の根拠が崩壊しています。』
『法人税減税が経済成長につながるという政権の主張にも民間の経済研究所が
異議を唱えています。』
『りそな総合研究所の23日付リポートは、法人税減税は雇用改善や国内設備
投資の増加に結びつかず、「企業利益の押上げに終わる可能性」が高いため、
「成長戦略とは呼びにくい」とのべています。』
『法人税を減税しても、巨額のため込み金(内部留保)をさらに増やし、法外
な役員報酬や大株主への配当を拡大するだけです。』
『先の財界団体幹部は別の雑誌で「今の日本の状況下で、消費税率を上げて
法人税率を下げようという議論は、3日ももたない」と警戒しています。』
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主要紙社説では、消費税率引き上げのことについてはよく取り上げられている
が、法人税率引き下げについてはあまり取り上げられていないようだ。
財界人や経済専門家の多くが「引き下げるべき」とする、法人税率。
その理由については、ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版の言う、
『法人税率の高さが原因となって、企業が国外で得た利益は国内に環流されず
にいる』
『法人税率の引き下げは、(中略)そうした状況を打破し、投資 - 成長 -
失業率の低下という好循環を生み出す可能性がある』
『日本が高い法人税率を維持している間に、韓国や台湾、ドイツといった国々
は税率を引き下げ、競争力をますますつけている』
といったことによるものだろう。
『シャープとキヤノンの法人税率はそれぞれ36%と38%であるのに対して、
韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスの法人税率はいずれも20%未満だ』
とも、書かれている。
それに対して、赤旗は、
『財界団体の幹部みずからが「日本の法人税は高くない」と本音を明かして
います』
『「私は昔から日本の法人税は、みかけほどは高くないと言っています。表面
税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、
実はそんなに高くない。今でも断言できますが、特に製造業であれば欧米並み
ではある」(阿部泰久・日本経団連経済基盤本部長、税制専門誌『税務弘報』
1月号)』
『本紙試算によると日本の大企業の法人税の実際の負担率はソニー12%、
住友化学16%、パナソニック17%など、まともに税金を払っていません』
『りそな総合研究所の23日付リポートは、法人税減税は雇用改善や国内設備
投資の増加に結びつかず、「企業利益の押上げに終わる可能性」が高いため、
「成長戦略とは呼びにくい」とのべています』
と、主張している。
赤旗のような主張については、
「限りある資源から何を作り、それをどう分配するのかという“資源配分”と、
日本国内の個人や企業の生産活動による国民所得が、それに関わった経済活動
をした人たちに対してどのように配られるか、そして、税制や社会保障などを
通じて高所得者から低所得者へいかに富を移転させるのかという“所得分配”
とが混同されている」
という反論もある。
しかし、1億円以上の役員報酬を受け取っている上場企業の役員名と報酬額が
公表されている昨今。
サラリーマンの給料が下がり続けている中、上場企業の役員報酬は上がり続けて
いるという話もある。
『法人税を減税しても、巨額のため込み金(内部留保)をさらに増やし、法外
な役員報酬や大株主への配当を拡大するだけです』
という、赤旗の主張に共感する人も多くいることだろう。
要するに、大企業のエラい方々が、「法人税率引き下げによって儲けたおカネ
をどう使うか」というところにかかっているということなのだろうか。
(桐鳳)
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以上、【101紙】という、メルマガから引用させてもらった。
消費税増税だけに、各党の議論、メディアの報道が偏向している。まるで、小泉政権時の『郵政戦挙』を髣髴させる光景だ。
こういった場合、メディアは、大衆を扇動するような言葉を、紙面に書きたて、我々の冷徹な理性を奪おうとする。
実際、今回も、やはり、『財政再建のための消費税増税』が取り沙汰されている状況だ。上記のように、共産党の指摘が本当かどうかは分からない。法人税減税分を、消費税増税分で賄うため、社会保障費には当てられないという分析が正しければ、増税は言語道断である。更なる、景気の悪化を招くであろう。しかし、共産党がなにかできるとは思わないが・・・
本来なら、『法人税を減税し、消費税を増税する』ことは、並立されて述べられることである。また、増税を断行するならば、『公務員制度改革』や『所得税の累進課税を上げること』をすべきであると思う。
若い人は、選挙にいきたがらない。
これは、経済的に言えば、かなり損失を蒙っている。もっとも負担の大きい者の意見が、政策に反映されないからである。
幸い、日本には、投票する権利が与えられている。公平性も、選挙制度にかなりの問題はあるが、一応は、保たれている。
不幸なことは、日本に、まともな社会主義政党がないことである。社民党も共産党も、いまだに、社会主義革命を唱える、思想の孤児たちだ。我々、有権者には、『消費税増税』を投票で回避する機会が、与えられていない。
なぜ、日本が、社会福祉的な政策を取り入れたかというと、自民党が、社会党に対抗する、政策的な手段であったからで、自民党政権下では、利権を追求しながらも、社会党への利益分与として、社会福祉的制度が、一応は整えられたのだ。