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早分かり!! 鳩にも分かる『戦前・戦後日本の政治史』 (4)

 宮崎は、1917年「ロシア革命」のさい、ロシア留学しており、もろに、ソビエトの建国を目にした人間だ。彼は、レーニンの経済政策を勉強し、後に、スターリンの政策を研究した。しかし、彼は、簡単に、共産主義という枠で括れる人間でないことも、注意が必要だ。優秀な人間ほど、「主義」などという言葉で、簡単に言い表せるものではない。

 石原は、宮崎の頭脳に飛びついた。自分のやりたいことは、まさにこれだと思ったのだ。ソビエト型の、しかし、日本の実情に即した経済体制が、まさに、宮崎の頭の中にあったのだ。

 石原は、宮崎を尊敬した。自分にもっていない者を、彼は持っている。そんな敬愛の情を、石原は、惜しげなく表した。宮崎を、「先生、先生!」と呼び、追い回した。挨拶するときは、常に、敬礼をした。男の友情は、男女の恋愛よりも、熱く、そして、固い。

 1931年、「満州事変」。1932年、「満州国」樹立。石原は、満州を、宮崎に託す。将来の日本の国家改造のモデル、その「実験の場」として。

 宮崎は『満州経済統制策』という、レポート用紙300枚を誇る、経済政策を作り上げる。その方針はこうだ。長いが読んで欲しい。

 「真正なる企業家精神は営利の追求に眩惑されて堕落するに至った。

  企業支配階級の不合理なる利潤獲得及びその浪費これである。

  恐慌は、無統制なる生産競争によって起きた。日本の苦境を乗り越えるため、まず満州経済を導入し、工業生産を高めなければならない」…

 今のアメリカ経済を、言い表していよう。人間は、同じ過ちを繰り返している。だが、感傷に耽るのはよそう。感傷はなにも生み出しはしない。

 そう、この時代、石原を筆頭に(1935年、参謀本部長作戦課長に就任)、大いなる野望は前進していた。「日満財政経済研究会」が作られ、夜を徹して、宮崎や軍人、学識経験者の会合が開かれた。「日本を変える」、彼らは、五年間で、318冊もの報告書を書き上げた。さらに、世界各国の経済政策を詳細に分析した。利害を超えて、野望が形となる。

 彼らは何をしたのか?

 いってみれば、現代まで続く、日本の経済体制、株式会社の仕組みを作ったのである。

 会社の目的は、「利潤」でなく、「生産力の拡大」を重視する方針に転換した。つまり、資本家を排除して、労働者の地位を向上させる。ボーナスなどだ。そして、国民の貯金をメガバンク、銀行に集めて、それを、自動車・鉄鋼などの重要産業に優先して配分する方法だ。その配分を、官僚主導で行う。

 これが、「官製経済体制」、すなわち、日本の経済システムである。

 宮崎たちは、これを、「満州」に作ろうとしたわけだ。さらに、宮崎だけではない。気鋭満々たる省庁エリートたちが、満州に訪れる。その中に、「岸信介」もいた。彼らは、その後、「革新官僚」といわれ、日本の戦時体制の構築に全力を挙げることになる。

 ところが、1937年、石原・宮崎の構想は打ち破れる。なぜなら、この年、「盧溝橋事件」が起こり、日本は「日中戦争」に没入してゆく。これは、石原にすれば、余りにも早すぎた戦争であった。結果、日中戦争は、南京へと戦線を拡大しすぎて、泥沼化してゆく。

 こうして、石原は、1940年、「日満研究会」を解散した。

 男の夢は潰えた。

 しかし、日本は、その後、石原・宮崎が描いた構想のもとを突き抜けてゆく。

 それは、一つに、岸らをはじめとする革新官僚が、帰国後、政府の重要な地位を任されたからだ。

 次回は、戦時体制の中身に迫っていこう。

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