『所得の再分配』
7兆2000億円余りの、補正予算案が、大方、政府内で合意されたようだ。
亀井氏が、菅直人氏と、予算規模で対立したものの、1000億円上積み。
亀井氏の発言を見るに、彼は、積極的な、インフレ政策を取ろうとしていることは明白だ。
経済政策には、大きく分けて、二つの手法がある。
①金融政策
②財政政策
①は、日銀が行う、金利政策や、量的緩和、つまり、金を刷って、銀行に供給することだ。簡単に言えば、金利を操作して、間接的に、市場介入しようとするもの。
②は、公共事業、社会福祉など、簡単に言えば、政府が、直接的に、市場に介入しようとするもの。
以上、政府が行う、景気対策の方法である。
麻生政権の頃から、たびたび、補正予算が組まれ、財政出動しているのに、なぜ、景気が上向かないのか?
それは、格差の問題である。
格差とは、一見、不景気による社会的現象、つまり、原因が不景気、結果が格差と思われがちだが、それは実態とは異なる。
実際は、格差が、不景気を助長するのである。すなわち、格差は、不景気の結果ではなく、原因であるのだ。
上記に掲げた、経済政策が、どちらも、効果的な方法とならないのは、もちろん、バブル後の日本の不良債権がいまだに尾を引いていること、また、アメリカ経済の崩壊が上げられるが、もっとも、大きな問題点は、所得の再分配が行われていないことである。
お金はお金を呼ぶ。
これが、お金の論理だ。
金持ちは、いくらでも、投資可能だ。投資とは、ある一定のお金があって、はじめて、大きなリターンを生む。主婦が自分の小遣いで、株をやっても、損ばかりするのは、投資金額が少ないのが原因だ。なぜなら、リターンを得るには、投資先を分割すること、つまり、リスクを分割して管理すること(これをポートフォリオという)が、求められるからである。
ゆえに、金持ちは、どんどん、金持ちとなる。
その反面、市場に供給されている紙幣の枚数は決まっている。こうして、金持ちに集まった金は、貧乏人のところまで降りてこないのである。
そういった格差を是正するのが、政府の仕事である。
むしろ、これだけをしていれば、自然と、市場は「神の見えざる手」に導かれることだろう。
筆者が、ひしひしと感じるのは、小泉政権以来、日本の市場は、ますます、アメリカ型の経済体制、つまり、古典資本主義経済に戻っているということだ。
資本主義の原理は、競争社会であり、弱肉強食の市場である。
確かに、大企業の成長は、中小企業の発展には欠かせないのである。輸出を刺激し、生産を拡大するからだ。
しかし、その大企業が、こういった、世界的不況に陥り、自己保身に走る、そして、人件費を縮小すれば、どうなるだろうか?
正社員よりも、派遣を雇い、安い人件費で済ませば、純利益は、上がるだろう。
しかし、それが投資にも向かわず、役員の給料になるのなれば、子会社の労働者や従業員の手取りは、どんどん、少なくなる。役員は、それを株式市場に回したり、金を買いあさったりするだろう。
こうして、格差が広まったのが、いまの、日本の現状である。
一番、お金の必要な人々に、お金が回ってこないのだ。その人たちは、純粋に、生産活動を清算する、消費者である。株に金を回すことのない、純粋な消費者だ。
消費が低迷し、企業は、商品の値段を下げる。
さすれば、企業の人件費も、おのずと小さくなる。給料は減る。困るのは、経済的弱者である。
いま、もっとも、必要なのは、
まず、再分配の方法である。
年収2000万円の役員がいる。
これを、年収1000万円にする。そして、あまった1000万円で、年収500万の従業員を二人雇う・・・これが、再分配である。
単純に言えば、民主党は、これをやればいいのであるが、まあ、現実は、そううまくはいかない。
我々が、もっとも、着目せねばならないのは、民主党が、こうした、所得の再分配を促す政策を行うかどうかである。