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マスコミが、「アメリカとの関係悪化」を声高にあげるのは、おそらく、外務省の考えであると思われる。先にも述べたように、最近まで、日本は「記者クラブ制」といって、マスメディアが官僚に支配されていた。彼らは、プロパガンダの手法を用いて、大衆を扇動し、たびたび、利益誘導を図っている。
官僚たる使命は、『国民の下僕』などというものではない。
彼らの最大の関心事は、「自身の所属する省、庁の権益拡大」である。いかに、予算が取れるかということは、どれだけ自分の懐に札束が飛び込んでくるか?また、どれだけ、部下に、利益誘導できるか?これが、官僚の出世の要である。官僚のエリート、いわば、事務次官クラスの「できる人」とは、利益調整に、絶妙な手腕を表す人のことである。
よって、なぜ、外務省が「基地移設問題」を批判するのか?
それは、アメリカとの関係悪化から、外務省管轄の権益が縮小する危険性があるからだ。思いやり予算は、防衛省予算に計上されるが、実質、アメリカ駐日大使と会談するのは、外務省であり、予算額の企画も当然、外務省が手がけているのだろう。つまり、思いやり予算とは、外務省から防衛省への利益提供である。その見返りとして、外務省は、駐在米軍との接待費として、思いやり予算を使っているのではないだろうか?でなければ、あの多額の使途不明金は、いったい、何に使われていたのか?
ただ、一つ指摘したいのは、「思いやり予算」なるものを払っていたのは、日本だけではない。というより、冷戦時代では、ソ連の脅威から身を守るため、アメリカの軍事力を必要とする西側諸国は、大小いずれも、アメリカに見返り報酬を渡していたのである。また、アメリカの戦闘機を購入したりして、安全保障の代償としていた。しかし、それもこの時代、日本の軍事力、冷戦構造が終わり、アジアが平穏になる時代、必要ないだろうというのが、(1)の筆者の見解である。アメリカとしては、冷戦が終わっても、なお献金を惜しまない日本は、格好の鴨だろう。駐日米軍の司令部には、有力なアメリカ議員の息子や親族がいるだろうから、日本の「思いやり小遣い」は、アメリカのファミリー文化にうってつけなのだ。まあ、臆説にすぎないが・・・だが、政治とは、そういうものである。政治の人脈は、「金」と「血」で繋がっているのだから。
よって、外務省の謀略は、マスコミを使い、「日本の安全保障が脅かされる」という論調から、沖縄基地、国内基地を必要と国民に思わせ、従来どおり、予算を「分捕る」ことである。年末の、この時期は、予算編成だ。おそらく、外務省は、世論の反応を伺いつつ、また、アメリカ議会の反応を見つつ、マスコミに、これまでの論調を垂れ流させるはずだと思われる。
したがって、アメリカの「軍事基地問題」は、「安全保障」に多少かかわるとしても(北朝鮮という仮想敵国がある限り)、問題の本質は、アメリカ議会と外務省の「思いやり予算」の問題であるというのが、筆者の結論である。
http://tanakanews.com/091115okinawa.htm (田中氏の無料記事!)
ただ、この記事にあるとおり、民主党が、果たして、沖縄からの世論の高まりを待っているようには、筆者には考えられない。なぜなら、参院選があるのに、歯切れの悪い、支持率を落とすようなことをするだろうか??・・・であるとすれば、民主党のメディア戦略は、下手すぎである。いや、郵政人事に見られるように、鳩山、小沢は、下手すぎなのだが・・・おそらく、ここにきて、「思いやり予算」問題の根深さに、口を閉じずにはいられなくなったのではないだろうか??・・・