どこに置いてきた。
私は現在就職活動中です。将来何をやりたいのか、どんな仕事をしたいのかを自分自身と相談しあう毎日を過ごしています。そこで毎回思い出す将来の夢。「私のやりたかったことはこんなことではない」「このままの人生に満足していけるのか」そんな私と私のやり取りを文字に起こしてみました。夢が忘れられない、あの頃の夢を取り戻したい、こんな想いを持った方々の立ち上がるきっかけになればなと思います。届け。
僕は球根。どこでどう生まれたかは覚えていない。どうやら多くの栄養を与えられて生まれ変わったらしい。
「ねえねえ。これから何が行われるの?」
僕は隣で寝転がっている自分より少し小さめの球根に聞いた。
「何って、花になるための準備をするのさ。」
彼は、コロコロ転がりながらそう言った。
「花になるための準備?」
「そうだよ。土の中で暮らして、どんどん自分を大きくしていくのさ。途中でダメになっちゃうやつもいたりしてさ、なかなか大変らしいよ。」
誰から聞いたのかはわからないけれど、彼は少し不安そうにしていた。
「俺は将来立派な花を咲かせるんだ。この箱の中でも1番の花をね。君はどんな花になりたい?」
「待って。花って何?僕は花になるの?」
「当り前じゃないか。ここにいる俺たちは花にしかなれないんだ」
彼の体にハエが止まった。
「花にしかなれないなんて、誰が決めたんだい?」
「それは俺にもわからないよ。ただ、そういう運命なんだよ。花になることを誰かに期待されているのさ」
よくわからないけれど、僕は納得できなかった。花になることがすでに決められていて、花になるための試練を土の中で受ける。これではまるで分岐のない路線電車ではないか。
「僕は、木になりたいんだ」
どこで見たのかは覚えていない。だけど、立派に据えた体、そして力強く張られた根のことは鮮明に覚えている。そして僕は彼のように、大空を抱え込むほどの木になりたいと決意したのだ。
「木になんてなれっこないさ。夢だけで終わらせておきな」
どうやら彼は応援してくれないらしい。
でも確かに、花として生きていくことが決められている僕が木になるなんて現実的に無理だ。そう考えると、彼の言ったことは正しいのかもしれない。いや、正しい。彼に止まっていたハエが僕の体に移り、少しくすぐったい。
しかし、僕はあの時決意した夢を忘れることができなかった。
「僕、ここから出ていくよ」
「待てよ本気か?木になれる可能性なんてほぼゼロに近いぞ?花として成長したほうが楽でいい!そうなるべきなんだよ!」
きっと彼は、僕を思って言ってくれているのだろう。
だけど、それも違う。僕は、常識としてある程度決定してしっまている人生よりも、自分が本当に求めている人生を歩きたい。そう思った瞬間、茂みに隠れたもう1本のレールが見えた。
あとは自分の力でその方向に進むだけ、進むだけ。怖い。怖すぎる。この箱から飛び出すだけなのに、この先の不安と失敗が手を引いて離さない。
いや、不安でもいい。失敗してもいい。やりたいことに挑戦してみてもいいじゃないか。この夢を、思い出にしてたまるか!
僕は高く跳ね上がり、箱の外へと勢いよく飛び出た。その時、びっくりしたハエが再び彼の体に戻った。
「僕の人生は花じゃない、木だ」
何からしていいかわからないけれど、まず根を伸ばしてみようと思う。そして体を大きくして、枝を伸ばし葉をつける。成功するかわからないけれど、やってみるんだ。
先のことで悩んでいても仕方がない。先を明るく灯すためにも、今目の前にあることに一生懸命取り組むんだ。
僕の小さな体に、鳥が止まった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
私は夢を追ってみたいです。不安や失敗は必ずあると思うけれども、そこでしか見れな景色を見てみたいです。この話を読んでくれた方の中で、夢がある人、叶えたい人、私は応援します。誰にも言えないような夢でも、必ず応援してくれる人はいます。共に頑張りましょう。
改めて、読んでいただきありがとうございます。これからも、物語を創造していきます。