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履修E  作者: 馬の頭
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知的財産法概論

2019

<<出題意図>>

Ⅰ マークシート方式 正誤問題 35題

「本日の問題」をはじめ毎回の授業で解説した問題の応用問題を通して、各回で勉強した基本的な論点を理解しているかどうかを問う問題。授業の全ての回からまんべんなく出題した。


Ⅱ 論述式 2題

 問題1は、小説の続編を作成する行為を取り上げ、アイデアのみを利用する行為が著作権侵害にあたるかについて、基本的な理解を問うた。

 問題2は、方法の発明にかかる特許権の侵害行為と、試験研究のための実施の例外の成否について、基本的な理解を問うた。


*試験問題と解答・解説・講評・採点結果をe-classに掲載していますので,受講者は必ずそちらを見てください。

                                    

<<講評>>

Ⅰ。マークシート方式については、授業で解説した基本的な問題ですので、授業に出席していた人にとっては比較的易しかったようです。


Ⅱ。論述式について。

 問題1の(1)の解答は、「翻案権」です。「複製権」が問題にならないわけではないですが、小説Bは、小説Aと類似する文章が存在しない小説ですので、「最も適切なもの一つ」という問いに対しては、「翻案権」のみが正解です。

 問題1の (2)は、「表現上の本質的特徴を直接感得できないから。」という理由でも正解です。「抽象的表現を利用したものだから」という解答がありましたが、「抽象的表現」という言葉は、著作物性を語る場合は矛盾しています。「表現」は具体的なものだから著作物となり、抽象的なものは思想、アイデアそのものなので著作物ではありません。なお、「小説Bに創作的表現があるから侵害にあたらない」という理由付けは誤りです。小説Bに独自の創作的表現があるからこそ、複製権侵害ではなく翻案権侵害が問題になります。また、「著作権の制限に該当しないから侵害にあたらない」と書いた答案がありましたが、意味が全く逆です。本問では著作権の制限はそもそも問題にならないのですが、著作権の制限規定が問題になる場合、これに該当しないなら侵害にあたります。「権利の制限」という用語の意味を反対に誤解する人がいることについて、授業中にも注意しましたが、ひどい間違いですので、気をつけてください。


 問題2の(1)は、「方法の使用」が解答でした。「方法Aを用いて測定する行為」でも正解にしています。「業としての実施」という誤答が一定数みられましたが、本問は方法の発明についての「実施」の定義(特2条3項2号)を問う問題ですので、問いに対する答えになっていません。このほか、「新たな発明をする行為」、「創造的行為」、「特許発明の技術的範囲」等々、「実施」の定義とおよそ無関係な行為を挙げる答案が非常に多くみられました。特許法2条3項の条文を再度確認して、「実施」の定義を復習してください。

 問題2の(2)は、乙社の行為が特許発明の業としての実施に該当するか(侵害の成立要件)、かりに該当する場合でも、乙社の行為が特許法69条1項にいう「試験研究のための実施」として免責されるか(抗弁の成否)が論点でした。侵害の成立要件を全く検討していない答案が多くみられましたが、乙社の行為が侵害の成立要件を充たさないのであれば、そもそも抗弁の成否を検討する必要がありませんので、前提を省略せずに解答するようにしてください。


 なお、単なる暗記は意味がありません。なぜそうなのかという理由をしっかり理解する学習習慣を身につけてほしいと思います。解答・解説・講評・採点結果をe-classに掲載していますので、受講者は必ずそちらを見て、誤解をそのままにしないでください。

2018

授業内評価(期末試験)

<出題意図>

Ⅰ。マークシート方式 正誤問題 35題

「本日の問題」をはじめ毎回の授業で解説した問題の応用問題を通して、各回で勉強した基本的な論点を理解しているかどうかを問う問題。授業の全ての回からまんべんなく出題した。


Ⅱ。 論述式 2題

 問題1は、ピアノ演奏について問題になる著作権の支分権と、非営利目的の演奏についての著作権の制限の成否について、基本的な理解を問うた。


 問題2は、特許権侵害とされる技術の範囲をどのように解釈するかについて、基本的な理解を問うた。


<講評>

Ⅰ。マークシート方式については、授業で解説した基本的な問題ですので、授業に出席していた人にとっては比較的易しかったようです。


Ⅱ。論述式について。

 問題1の(1)は、ピアノ演奏に対する著作権の支分権である「演奏権」が解答で、極めて易しい問題であり、よくできていました。なお、「上演権」は間違いです。著作権法2条1項16号で「演奏」と「上演」は区別されています。

 問題1の(2)は、非営利目的の演奏等に対する著作権の制限規定(著作権法38条1項)が適用され、演奏権の侵害にあたらないことを、その要件を設例の事実から挙げて論ずることが正解です。しかし、「著作権」と「著作権の制限」の区別ができていない答案が散見されました。著作権(本問では演奏権)とは、著作者が有する権利であって、他人に自己の著作物を無断で利用することを禁止する権利です。「非営利目的の演奏」は、著作権を有しない人が、著作権者から演奏権侵害を主張された場合に、これに対抗するための抗弁として、演奏権が自分の演奏行為には及ばないと述べるための「著作権の制限」の主張です。まったくの誤解をして、「演奏権」を著作権者ではない者が、非営利目的等を要件として有する「権利」であるかのように記述する答案がかなりみられましたが、著作権法の基本を理解していませんので、勉強し直してください。なお、「非営利目的」「無料」「無報酬」は別々の3要件であり、「入場無料だから非営利目的である」とするのは間違いです。


 問題2の(1)は、「特許発明の技術的範囲」が解答でした。「クレーム」という誤答が多かったですが、「クレーム」は、「特許請求の範囲」と同じ意味です。

 問題2の(2)は、特許発明の技術的範囲を解釈するに際しては、出願の経過を考慮するという点が論点です。出願人が意識的に除外した事項は、禁反言の見地から技術的範囲に含まれないという趣旨まできちんと書けている答案も少数ながらあり、感心しました。そうした答案は高く評価しています。

 なお、単なる暗記は意味がありません。なぜそうなのかという理由をしっかり理解する学習習慣を身につけてほしいと思います。解答・解説・講評・採点結果をe-classに掲載していますので、受講者は必ずそちらを見て、誤解をそのままにしないでください。

                                   以上。


2017

<<出題意図>>


Ⅰ.マークシート方式 正誤問題 35題

「本日の問題」をはじめ毎回の授業で解説した問題の応用問題を通して、各回で勉強した基本的な論点を理解しているかどうかを問う問題。授業の全ての回からまんべんなく出題した。


Ⅱ.論述式 2題

 問題1は、音楽CDのコピーについて問題になる著作権の支分権と、私的複製についての著作権の制限の成否について、基本的な理解を問うた。


 問題2は、従業者が転職した場合の職務発明の権利に関し、職務発明制度の基本を理解しているかを問うた。


*試験問題と解答・解説・講評・採点結果をe-classに掲載していますので,受講者は必ずそちらを見てください。


<<講評>>


Ⅰ.マークシート方式については、授業で解説した基本的な問題ですので、授業に出席していた人にとっては比較的易しかったようです。


Ⅱ.論述式について。

 問題1の(1)は、コピー行為に対する著作権の支分権である「複製権」が解答で、著作権法の基本中の基本である用語でしたので、極めて易しい問題でした。ところが、「私的複製権」と書いた人が散見されたのは驚きです。このような「権利」はありません。著作権とは、著作者が有する権利であって、他人に自己の著作物を無断で利用することを禁止する権利です。「私的使用のための複製」は、著作権を有しない人が、著作権者から複製権侵害を主張された場合に、これに対抗するための抗弁として、著作権が自分の複製行為には及ばないと述べるための「著作権の制限」の主張です。「著作権」と「著作権の制限」をきちんと区別して理解してください。なお、「権利が及ぶ」という用語を誤って用いている答案もかなり見られました。著作権や特許権が「及ぶ」というのは、及ぶ相手に対して侵害であると主張できるという意味です。

 問題1の(2)は、①家庭内で使用するという私的使用目的で、②本人が複製しているので、③著作権は制限され、④著作権侵害にあたらない、というポイントが書けていれば結構です。②の要件がぬけている人が多かったです。また、③の著作権の制限という性質を理解していない答案も見られました。


 問題2の(1)は、発明の完成と同時に発明者が原始取得する、「特許を受ける権利」が解答でした。一見、権利の名称には見えない用語なので気を付けるようにと、授業中、強調したのですが、正解を書けた人は驚くほど少数でした。

 問題2の(2)は、従業者が転職後に完成した発明は、転職後の会社における職務発明となり、これにつき従業者が特許権を取得した場合、使用者として通常実施権を有するのは転職後の会社であること、そして、転職前の会社は無権利であることを理解できているかを問いました。本問では、従業者が特許権を取得した、と事実を明記しているにもかかわらず、会社が特許権を有すると書く誤答が目立ちました。まず、設例を正確に読みましょう。また、設例に、会社が発明に関する社内規程を有していないと書いてあるのは、職務発明の権利は会社に帰属するという社内規程があると、従業者の特許権取得がこれに反することになり複雑な法律問題が発生するため、そのような問題はないことを示すために挿入した事実だったのですが、社内規程がないから職務発明ではないなどとする誤答が見られました。特許法35条の要件を充たすものはすべて職務発明ですので気を付けてください。職務著作と混同した答案も見られました。「特許権が及ぶ」という言葉の用法についても、上記問題1の箇所で書いた間違いが多く見られました。また、「過去の発明は含まないから」などと何の説明もなく書いている答案が相当数ありましたが、この言葉だけを書いても何のことか全く通じません。「従業者の現在又は過去の職務に属する」という職務発明の要件の「過去」とは、退職した場合の過去を含まない、という意味を書かなければいけません。

 なお、単なる暗記は意味がありません。なぜそうなのかという理由をしっかり理解する学習習慣を身につけてほしいと思います。解答・解説・講評・採点結果をe-classに掲載していますので、受講者は必ずそちらを見て、誤解をそのままにしないでください。

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