始まりは・・・・
「はぁ、はぁ、あの人らまだ追いかけてくる」
その少女は暗い街の中を走っている。いや、正確には逃げているが正しい。
「クソどこに行きやがった」「探せ、まだ近くにはいるはずだ」「そうだ逃がすわけには行かない、必ず見つけるんだ!」街の人達は殺気だっていた、まるで少女は殺すべき存在であるかのようだ。
「はぁ、はぁ、あ、」
そう言ってあの少女は足をつまずいてしまい、その場に転ぶ。
「っ....死ぬわけには行かないの」
「いたぞあそこだ」「逃がすな絶対に殺すんだ」
そう言って街の人達が少女を囲むように陣取った。
「はぁ、はぁ、まだ死ぬわけには行かないの!『あの人』を救うために!!」
時は戻り今から2年前、少女と「勇者」の運命はあの時から決まっていたのかもしれない。いや、あの瞬間から少女と「勇者」の運命は決まっていた。
ーーーーーーーーー2年前
「王よ、大変です。」
そう言って一人の男が大きな扉を開けて広い部屋に入った。そこは何を隠そう玉座の間。王が座る場所である。
「無礼であるぞ!いくら宰相とはいえここには国王様がいるのだぞ。」
そう言っていきなり怒鳴り声を上げたのは王の護衛の騎士である。
「よい、宰相が慌ててくるという事は王国にとって大変なことが起きた時だけだ。」
護衛の騎士の言葉をやめさせ宰相の話を聞こうとしたのは現国王ジースである。
「は、王よ単刀直入に申し上げます。勇者とその仲間達が7代目魔王"純白獅子"レオンに敗北しました!」
ざわざわざわざわと玉座の間にいた人達がその報告を聞いて騒ぎ出した。
「静まれ皆の者、まだ死んだとは限らぬ、宰相の話を最後まできこうぞ。」と言って宰相に改めた話を振った。
「......残念ですか王、勇者の証が水晶に戻ってきています。つまり勇者はもう....」
「...そうであるか」
王がそう言うとまた玉座の間が騒がしくなる。
「また勇者は敗れたのか」「これで九人目」「全く人類の危機だというのにそれでも運命に選ばれた者ですか」
そういう感想が玉座に広まる。
(全く此奴らは、自分達は安全な場所でいるからと好き放題言いおって)
そう思う国王の気持ちなど知らずさらに騒がしくなる。
「ええい、静まれー、宰相よという事は今回も、」
「ええ、また"あれ"を行います。」
「王よ、良いではありませんか誰もが夢見るものがやって来るのですから」
「しかり、きっと国民どもは自分こそはと言ってやって来るでしょう。」
たしかに、そうだともなど、好き勝手に発言する。
(確かに"アレ"は国民達にとっては自分こそがふさわしいと思ってやって来るだろう。しかし、あれは、皆が思うほど良いものではない)
「では、国王今回もアレを行いましょう。」
(しかし我々にはどうしようもない、魔王に勝てるのは勇者だけ、民の皆には悪いがここは...)
「・・・・よかろう、宰相よ、国民に知らせよ勇者が敗北した、"新しい勇者"になる者決める選定の儀を行う。」
そうして新しい勇者を決める選定の儀が始まった。
主人公が勇者になるのはあと5〜6話かかると思います