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キング  作者: かめ屋吉兵衛
開拓者
41/50

一 方針

 マリアとの話は、子ども達に伝えられなかった事も含め、その全てを七人の仲間に話した。


「色々教えて貰って少しスッキリしたが、我々の課題は一気に増えたな。

 他の箱舟船団がどうなろうとも、私達はこの…、まだ宇宙船と言う実感は無いが、この世界の住人を無事惑星に移住させ、そこで自滅の道を歩ませない様に…。」

「第一世代の使命よね。

 でも、大きな目標の存在は、この世界の人達にとってプラスになると思うわ。

 キング、マリアさまから伝えられた事は全て公開して行くの?」

「全てをすぐに公表する必要は無いと思う、例えば、私達が八人だけの種族ということは重要では無い。」

「マリアさまにとっても謎とあってはね。

 マリアさまとマリアさま達も確認出来ていない未知の存在が、知らぬ間に協力して…、人間を改造して造り出したのが私達?」

「う~ん、城の子は神の子とも呼ばれているが、実は神の孫だとか…、まあ、色々ややこしくしない為にも私達の事は黙って置いた方が良い。

 子ども達が、普通の人間で無い事は誰もが知るところ、今更話すまでもないだろう。」

「この社会全体が惑星に移っても、今のままで有り続けられる様にしたいわね。」

「だな、少なくとも私にとっては、六人の子を産んでも全く変わらない美しい妻と素敵な子ども達に囲まれ…、過去の酷い記憶が有るだけに尚更、カタリナが、ここのことを天国だと話すのは、あながち間違いでは無い。」

「ねえ、地球の人類は限界を迎えていたのだと思わない?」

「そうだな、貧富の差を抱えたまま改善されず、科学技術は発達したが、精神科学は…、そう考えると、このお金の無い世界は、なかなかのものだ。

 一旦多くの事をリセットした人類が、新天地でその限界を越えられるかどうか、まあ、その限界どころか立て直しに時間が掛かりそうだがな。」

「多くの人が信じていた民主主義も怪しくなっていたでしょ、社会制度の根本から見直して行くのは有りだわ。

 原始共産制とも言えるこの社会、このまま大きくなって一つの惑星に一つの国家が理想かしら。」

「いずれ分裂して行くにしても、戦争抜きで文明を発達させて欲しいよな。」

「キング、子ども達はどんな選択をすると思う?」

「まだ分からないが、寿命をどう考えるかによると思う。」

「あっ、確かに、その問題は有るな。」

「三郎、どういう事なの?」

「私達八人が特別なのは、医学的見地から見ても明らかなんだ。

 この世界へ来た時、全員がそれまでの年齢に関係なく、二十四歳ぐらいの肉体を与えられただろ。

 それから今日まで、罰を受けた者は極端に不自然な老化を経験しているが、善良な市民は普通の中年になりつつある。

 だが、我々は不自然に二十四歳のままだと感じないか?」

「そうなのよね、地球にいた頃はお肌の手入れをしていても、どうにもならなかったのに。

 ここへ来て若返り、そのままなのだから、天国説に一票を投じるわ。」

「このままだと、同じ時を過ごしているのに肉体年齢に大きな差が生じるだろう、我々でさえね。

 ならば子ども達はどうなると思う?」

「私達を追い越して老化して行くとは考えにくいわね。」

「マリアは我々が常識だと思っていた概念の遥か上を行く存在、彼女達は肉体を持たないのかも知れない。

 何の根拠も無いが、将来、彼女達は私達の子を、彼女達の仲間とするのではないかと思う。

 そう考えて行くと、子ども達は人類に与えられた惑星に住み続けるべきではないのかも知れない。」

「う~ん、私達自身もこの先色々な選択を迫られそうね。」

「だな、城の子は我々の宝、将来へ向けての選択を誤って欲しくはないが、人類もまた…。

 これから向かうと言う惑星が、人類にとって最後のチャンスとなるのかも知れないのなら、その地で無駄な争いをする様にはなって欲しくないだろ。」

「第一世代は色々な試練を潜り抜けて来た人達なのよね。

 マリアさまの隠しカメラを使って監視を始めた頃は、私達に対して反感を持っている人がいるだろうと思って少し怖かったわ。」

「でも、違ったな、民主主義では無い社会体制がキング中心に形成されたけど、不満を口にする人が僅かなのは、マリアさまが思う通り、海と城の存在が大きかったと思う。

 海の解放感が人々を癒し、城の存在が…、圧政の象徴では無く文化と友好の象徴となった。」

「そして、神の子の存在か。」

「キング、子ども達による惑星への移住、具体的にはどんな感じになるの?」

「まず、城の子が高速宇宙船を完成させ、この箱舟船団より先に目的の惑星に到着し、惑星の改造を始める。」

「そこから始めるとなると、かなり先の話なのね。」

「希望の島の地下工場で高速宇宙船建造は進んでいる、私もこの話を聞くまで何を作っているのか分からなかったのだが。

 各コロニーの再編によって充分な材料が確保されているみたいだ。」

「子ども達が秘密基地と話している…、ふふ、秘密基地と言われてたから敢えて詮索しないでいたのだけど、そんな事をしていたのね。」

「子ども達とは一旦離れ離れになるのか?」

「いや、ゲートで行き来が出来る、ゲートで移動出来る距離には制限が有るそうだが、途中で中継する為の宇宙船も順次発進して行く。

 まあ、我々の箱舟船団は鈍足だという事だ。」

「箱舟だからマリアさまは色々な動植物を私達に与えて下さったと言う事か…。」

「まだ、特殊保存状態のまま保管されているものも多いそうだ。

 地球上に生きていた全ての種類を考えたら微々たる物だと話していたが。」

「勿論、人間にとって有益では無かった生物も含まれているのだよな?」

「ああ、その扱いに関しては子ども達が判断するだろう。」

「多くの事を公表して行く必要が有るし、多くの事をこの世界中の人達と考えて行く必要が有るのよね。

 まずは、その計画を…、城の子の視点で作って貰ったものと、私達の視点で考えたものを擦り合わせてから発表し…、国連を拡大して話し合って行くことに…、ただ一般の第二世代はまだ幼い、彼らがもう少し成長したら話し合いに参加して貰うか…。」

「教育方針も変えて行かないとな。

 今までは、この世界の維持を目標として来たが、新たな大地の開拓となると守りから攻めへ、意識そのものを変えて行く必要が有ると思う。」


 惑星の開拓は、大変な作業になるのだろう。

 だが、この社会の安定を作り上げて来た私達の、次なるステップと考えたい。

 私達は、この世界に一人で目覚めてから、様々な出会いと共にステップアップして来た。

 この先どうなって行くのか分からないが、人類の可能性を考えて行きたいと思う。

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