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キング  作者: かめ屋吉兵衛
孤児
36/50

六 新体制

 新たな仲間は英語で会話が出来る様になってからも城の子を敬ってくれ、城の子達は私達と接する時と同様、尊敬の念を持って彼等と接する。

 互いに尊重し合っていれば良いチームを形成出来るだろう。

 尊は更に…。


「ねえ、今回は子どもが十二人だったことも有って、香たちは少し大変そうだったろ。」

「そうね、今後は一つのコロニーあたりの人数が減るとは言え、複数のコロニーを同時進行でと考えると余裕が欲しいわね。」

「それでさ、夢たちは一年生になるまでまだ少し有るけど、手伝って貰うってどうかな?」

「八人より十二人の方が心強いわ、保護した子ども達と友達になってくれるだけでも助かると思う。」

「夢の歌は、ほっこりさせられるのよね。」

「だろ、共通語を覚えるのに役立つ様な歌の作曲を音楽村の人にお願いして、夢に歌って貰えたらとも思うんだ。」

「良いかも、キングと相談する?」

「一年生になるまでは端末を持たせてあげられないけど、四人とも手伝いたいって話してたよ、最近一緒に遊べなくなった代わりに一緒に作業するのも悪くないな。」

「じゃあゼロ年生ということね。」


 子ども達からの提案を受け入れ、単独居住コロニー保護チームの体制を強化することに。

 城の子は八名から十二名に、新たに仲間となった八名の大人達は一旦見習いとして、護衛スタッフは十名が必要に応じて対応。

 後は、語学教材などの作成の為、翔の指示で動く二十名ほどの集団が有り、相手の胃袋を掴むべく、レストランも全面的にバックアップする体制を整えた。


 その新体制、ゼロ年生の四人は主に望が指導。

 勿論無理な作業をさせるつもりはなく、夢が歌の練習をする以外は見習いとなった人達の子に遊びながら共通語を教えると言うのが一番の仕事、これは望が付きっ切りではなく四人に任せ時折モニターで様子を確認している。

 見習いとなった人達は、女性が交代で乳児の世話をする以外は、主に尊から説明を受けている。

 尊は自分の作業をこなしながらだ。

 作業の話は主に英語、雑談は共通語だが、翻訳機を置いて常に二つの言語を確認出来るように、難しい話は英語の得意な二人が彼らの母国語で説明を加える。


「尊、彼らの記録映像を編集したものは見て貰った?」

「ああ、あの時の状況を考えたら良い作戦だったと話してくれたよ。

 これから保護して行くコロニーで見せれば理解が早まるだろうと。

 翔たちが作ってくれたプロテクトが外れる時のショートドラマも、見た時は良く分からなかったが、その時になって理解出来、とても助けられたそうだよ、対面前に見て貰って正解だったな。」

「そうか、それなら二作目がもう直ぐ形になる、見て貰ってアドバイスを頼もう。

 対面するまでに沢山の情報を伝えておくことは良いことだと確信できたからな。」

「ねえ翔、映像を利用しての共通語教育プログラム、基礎は何とかなると思うけど、その先は相手の言語を理解出来ていないと難しくないかしら?

 今回は英語を話せる人達だったからスムーズに進んでるけど。」

「ああ、そう思って、更にドラマ作品の制作を進めていてね。

 早めに覚えて欲しい言い回しを強調する形のドラマ番組、台本はサンフランシスコの作家集団に依頼して有るんだ。」

「あのブラックコロニーは、もう大丈夫なの?」

「愛はまだ心配かい、彼等も、この世界での役割を持つ事が大切だろ、僕の要望に真面目に取り組んでくれてるよ、トリッキーで面白い話を作るのは得意みたいだからね。

 共通語の学習も進んでいるのだけど、彼らは知能犯だったんだ。」

「知能犯?」

「頭の良さで人を騙すのが得意だったのさ、サンフランシスコで一番頭が良いのかも知れない。」

「そうか、騙すとか全然知らない言葉だったよね、共通語にも入れる?」

「そうだね、疑うとかは実験結果を疑う、みたいな形で使うから入れたけど、嘘とかも…、城の子には必要のない言葉だけど入れておくべきだね。

 これから作って行くドラマでも出て来そうな言葉だから。」

「そっか、どんなドラマが出来るのか楽しみかも。」

「望も出演する?」

「そうね、考えておくわ。」

「ねえ、それよりさ、今回は和の国十二丁目の形でゲートを繋いだけど、この先はどうするの?

 尊、和の国がゲートだらけになってしまうのはどうかと思うのだけど。」

「そうだな、流れとしては、まず子ども専用コロニーへ繋いで、作業を進めているコロニーの子ども同士も、対面して貰おうと思う。」

「そうね、並行して進めて行かないと時間が掛かり過ぎるものね。

 他の子どもの存在を知らずに育って来たのだから、子どもの集団にも慣れて貰わないといけないし。

 でも、大人達が落ち付き始めたら、子ども専用コロニーではだめよね。」

「ああ、そのタイミングで一旦島に繋ぎ変える、島は英語禁止にして、まずはお花畑で交流して貰いながら共通語の学習。

 それと並行してコロニーを整理して行き、島を広げ共通語中心のエリアに、翻訳機に有る言語を使える人がいたら別で考えるとか、どうかな。」

「うん、新しい仲間をまとめた方が安心出来るかもね。」

「ねえ、島の名前を決めて無かったけど希望の島にしない?

 新しい仲間の希望の島、お花畑の管理をして貰いながら、地下迷路に遊びに来る人の為にお店を開いて運営して貰っても良いわ。」

「でも、余裕は有るのだから、作業より共通語の学習をメインと考えて貰えば良いと思うな。」

「そうね、では単独コロニーと、どんどん繋がって行きますか。」

「望、僕は構わないが、急ぐと皆の負担が大きくなるよ、言葉の行き違いによるトラブルも予想されるだろ。」

「ふふ、尊と巴がいれば大丈夫よ。

 映像で、香と子ども達とのシーンや、尊と巴を跪いて迎え入れた映像を強調しておけば…、そう言えば、巴のプリンセスとしての衣装を中心に私達の衣装が届いていたわね、何でも巴が跪かれるシーンを見て制作した貢物らしいけど。」

「僕らも見たよ。

 それでね、見習いになってくれた人の中に、その道のプロだった人がいて、衣装だけでなく髪型を変えると、もっと跪きたくなるでしょうって。」

「そういうイメージの事はあまり考えて無かったね。」

「愛や望も、もっと可愛くできるってさ。」

「今のままで二人とも、とても可愛いし、髪型を変えても中身は変わらないだろ。」

「それでも、初対面の人は外見で判断するしかない。

 コンタクトの始めが僕らの映像だったから不安が少なかったそうだよ。

 彼女は、更に安心感を与えるスタイルを検討してくれているんだ。」

「そうか、私達はそこまで考えて無かったね。」

「今後は色々な服で登場し、僕たちはお洒落に気を遣うだけの余裕が有るのだと思って貰う。

 それだけでも印象が良くなり交流にプラス、食べ物だけでなく衣服をプレゼントする案も出してくれたんだ、服を変えれば心も明るくなるそうでね。」

「確かにそうね、落ち着いてから服をプレゼントしたけど、もっと早い方が良かったのかも。」

「好みの問題が有るけど、世界中の人達と相談しよう。

 料理のメニューの様に服のサンプルも写真で見て貰える様にしようかな。」

「そうだな、次のコロニーには間に合わなくても、翔、頼むよ。」


 見習いになってくれた人達は我々とは違った視点で考えてくれている。

 衣服に関しては各国が協力を約束してくれたが、これを機に世界のファッション事情が変わって行きそうだ。

 それが我々の文化を発展させて行くことに繋がるのかも知れない。

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