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キング  作者: かめ屋吉兵衛
城の子
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八 監視

 城へ戻り。


「八重、子ども達は?」

「もう寝たわよ。」

「私達も明日の事が有るから早めに休みたいが、状況の整理をしておかないとな。」

「キング、やはりコロニーDの彼等には人種差別意識が有りそうな気がするわ。」

「そうだな、推測でしかないが自分達は優秀な人種、もしくは他の人達を低い人種と考えている可能性が有る、またリーダーグループではない自分達を、より優位な立場にしようと考えたのかも知れない。

 そして、この世界のルールを利用して自分達の思いを成功させつつ有った。

 彼等の誤算は他に国家が存在していた事、我々との接触は考えていなかっただろう。

 もう一つの誤算はこの先、労働力不足になる可能性、まだ気付いていないのかも知れないが。

 三之助、相手をした女性はどうだった?」

「ほんとにすごい話術だったわ、完全に良い人を演じながら他の二人を争いに導いていこうとしていたの。

 第三者として気を付けて見ていて、ようやく何か企んでいると気付けるレベルでね。」

「二丁目とは逆に頭の良い人達なのか…。」

「とりあえずキングは、ちょっと気付いてると匂わせた、頭の良い人なら過剰反応するかも知れないな、精神状態の不安定な時だけにね。」

「他国へはどう伝えるの?」

「まだ事実かどうか完全な裏付けは取れていない、調査の必要が有る。

 確証が得られたとしても混乱させない為に、しばらくは誰にも話さないのが最善だろう。

 今までのブラックコロニーと違って、あの連中が一番長生きする可能性が有る、我々の方針を固めてから調整した方が良いと思う。

 まずは三郎と三之助であの国を担当して貰えるか? 残ってる人達の肉体年齢とかも把握して欲しいのだが。」

「そうだな、やってみるよ。」

「ブラックコロニーはしばらく様子見ね。」

「様子見…、そうだ、私達の端末でマリアの隠しカメラを見る事が出来る、マリアが子ども達に教えていた。」

「あのコロニーを監視出来るのね、どうやるの?」

「明日、尊に設定して貰おう、私達では時間が掛かり過ぎるのだ。」

「そいつは我々以外、誰にも知られたくない機能だな、その存在さえも。」

「子ども達は私達の知らない事も教えられているのね、履歴を見せて貰った時は多過ぎて良く見て無かった。」

「空気中の酸素濃度を調べたり、統計情報の整理、人の感情を数値化するなんて機能も有る、子ども達は、我々が必要としていない機能も教えて貰っていたという事だ。」

「監視機能以外に活用出来そうな機能はないのか?」

「もう一度検討してみるが…、嘘発見器は使えそうだな、後は子ども達と相談だ。」

「隠しカメラ映像は向こうへ行かないと見られないの?」

「え~と…、あっ、そうか、マリアはここですべての国を管理出来るシステムを与えてくれた様だ。

 教えられた時は、使う事を想定してなかったので深く考えていなかった。」

「どういう事なんだ?」

「城の子は、この世界に存在するすべての隠しカメラ映像を見られる、端末をハッキングする事もだ。」

「そこまでとはね…。」

「尊には明日の予定を変更して貰って、ここからコロニーDを監視出来るようにして貰う。

 念のため他国のリーダー達が手にしている端末をこっそり調べ、可能ならこの機能を使えなく…、まあ、彼らには使えないと思うが念の為にね。」


 城の住人以外に知られたら問題になりそうな機能をマリアは子ども達に教えた。

 城の子の口から他へ漏れてはまずい情報だ。


 翌朝、コペンハーゲンから現場管理を引き継ぐ為、現場へ向かった三郎から連絡が入る。


『こちらは至って平穏だ、夜の間もトラブルはなかったそうだ。

 差し入れた朝食は喜んで貰えた、三之助は嘘発見機能をさりげなく使いながら聞き取り調査をしているが、国民の状態は悪くないと話していた。』

「嘘発見機能は使えそうか?」

『三之助が感じた嘘と端末が判断した嘘とは概ね一致してるそうだ。』

「三之助が居れば嘘発見器はいらないって事か。」

『だから教えられなかったのかもな、ところで例のコロニー、隠しカメラの映像は見られたのか?』

「ああ、思っていたよりカメラの数が多くて確認に手間取ったが、尊は家の間取りも確認してくれたよ。

 今は、そのまま他国の端末を確認して貰っているが、我々の端末より使える機能がかなり少ないみたいだ、念の為、隠しカメラ映像を見る事が出来るかどうか確認して貰ってる。

 コロニーDの連中は、今しがた会議を始めた所だ、人種差別的発言が飛び交う中、状況変化に困惑している様子が伺える、録画しているから帰ったら見てくれ。」

『分かった、彼等への差し入れはどうする?』

「テレビ電話でさわやかな笑顔と共にお伺いを立ててくれるか、後ろに黒人の姿が入ると効果的なのだが。」

『分かった、やってみるよ。

 そろそろ、城の子が彼等の子ども達と遊んでいる映像を見せたいと思うがどうだ?』

「ああ、翔に頼んで、色んな人種の子達が楽しそうに遊んでる姿を録画して貰っている、翔と連絡を取ってくれ。」

『了解した、また連絡するよ。』

「よろしく頼む。」


 人を陥れるのは私達らしくない事だ。

 しかし、多くの人を巧妙に争わせ、老化という罰を受けさせた連中を放置して置く訳には行かない。

 彼等の会議風景はそれを決断させるのには充分過ぎた。


 昼過ぎ、三郎からの定時連絡では…。


『キング、さりげなく聞き取り調査をしているがあのコロニーの連中は実に巧妙だった様で、皆、知らぬ間に争わされていた事を意識すらしていない、何故老化を招くような争いをしたのか尋ねると、どうして喧嘩したのだろう、という感じの答えが返って来てね。

 まだ、プロテクト解除の途中で、頭が上手く回ってないのかも知れないが。』

「コロニーDの連中はかなり頭が良いのかもな。

 三郎、家畜の世話とかはどうなっている。」

『応援に来ている人だけでも何とかなりそうだが、落ち着いて来た人が働こうとし始めた、共に働くという良い形になって来てる。』

「トラブルになりそうな所はないか?」

『スコットランドからの応援者とヒスパニック系が少し、用心して早めに作業分担を入れ替えた。』

「今は、どこにいる?」

『スコットランドが麦畑、ヒスパニック系がスオミの連中と養豚場だ。』

「了解した、今後のスケジュールを調整しておくよ、何かあったら連絡頼む。」

『ああ、監視の方を頼むよ。』


 世界中に隠しカメラが設置されている事は以前から分かっていた、音楽村の人達がその映像を見たと話していたし、私達も相手国の映像を見せて貰った。

 マリアは子ども達にその閲覧方法を教えてくれたが、私はその必要性を考えていなかった、というより使いたくないと考えていた。

 だが今はこの世界のリーダーとして使いこなさなくてはならないと思っている、世界平和の為に。

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