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キング  作者: かめ屋吉兵衛
城の子
24/50

四 建設

 マリアの授業、三日目からは人々を驚かせることになる。

 子ども達は九丁目コロニー施設を建設し、和の国とゲートで繋げた。

 それからは九丁目住人となる人達の意見を取り入れ住環境の整備、それと並行して十丁目施設の作業に取り掛かる。

 九丁目コロニーは、それまで彼らが暮らしていたコロニーとは全く違う、明るく環境の良い住まいとして完成。

 広くはないが、ゲートで繋がる和の国とセットになり、以前とは雲泥の差。

 見学に訪れた人達は一様に羨ましがったが、城の子から全コロニーのリメイクを約束され大喜びでリメイク案を相談し始めた。

 十一丁目が完成した段階で、一つの国土が消滅し和の国の海に島が出現。

 その後、約束通りに各コロニーのリメイクを進めているが島はそのままで目立った変化はない。

 各コロニーは無駄を省かれ、小さくなっているのだが明るく開放的に生まれ変わって行った。


「ねえ翔、新しくなったコロニーって小さくなってるのでしょ?」

「うん、初期に自給自足を試みていた部分を削ったからね。」

「大き目にして、子ども達が増え成長した時の事とか考えなかったの?」

「子ども達は成長したら各国のメインエリアか和の国に住むという前提なんだ、それまで住むには充分な広さにして有るよ。

 それと、大きな声では言えないのだけど材料を確保しておきたくてね。」

「成程…。

 それで、魔法使いになった気分はどうなの?」

「はは、最高だよ、マリアさまは褒めて下さるし、皆さんから感謝されるし。

 作業を見せる事で、皆さんには教える事の出来ない技術だと理解して貰えたからね。

 城の子として特別扱いされている事を、誰もが納得してくれるでしょ。」

「そうね、二丁目の人達でさえ、住環境が改善されて変わり始めたものね。

 各コロニーのリメイクが済んだら島の開発なの?」

「まあね、でも他の学習が有るからもう少し先かな。」


 翔は母親の一花に明かさなかったが、彼らは島の開発をコロニーの作業と並行して進めていた。

 コロニーだけに集中していたら早過ぎて有難味が薄れると助言したのは私。

 改修作業の進行は人間の常識より少し早い程度だが、マリアから様々なことを学びながらなので、実際の作業時間は短い。

 基礎的な改修を行った後、住人の要望に応えてのリメイク作業は、完成していないコロニー全てを並行して少しづつ進めている。

 一つのコロニーに対し必要以上の作業回数と作業期間を取ることで、人々との交流が深まるからと尊が提案した。

 その片手間の作業でも設備が整って来た島の秘密基地、それは彼ら四人と私、マリアだけの秘密、端末から彼らの親にも知られ無い様に。

 島の外観は手付かずだが、その地下や人々が海底だと思っている場所で大きく二つの作業を進めている。


 彼らが三年生となり、翔の弟、昇たちが一年生として…。

 城の子は当初の小学校から離れマリアから学んでいる、私には理解出来ない事も含めて。

 そんな、マリアの教室に新入生を迎えて間もない頃。

 彼らは四人の一年生を完成したばかりのボートに招待した。


「城に有る秘密の部屋から島の秘密基地に直接行けるゲートが有るから、本当はこのボート、要らないのだけどね。」

「翔兄ちゃん、じゃあ、どうして作ったの?」

「僕らの練習の為と、昇たちも城の特別な子だと知って貰う為だよ。

 このボートは漁で使っているのとは違い操作の為のものが全く無く、僕らの意思で動くから城の子にしか操縦出来ない。

 昇もすぐに扱える様になる、そして、その光景を目にした人達は、昇も特別なのだと気付くのさ。」

「私でも操縦出来るの?」

「勿論さ、香がちっちゃい子達をこのボートに乗せて上げても良いんだよ。」

「島へ泳いで行った人は何も無かったって言ってたけど。」

「秘密基地だからね。」


 そんな話をしている子ども達の会話を端末を通して聞きながら。


「子ども達が出現させた船は、漁で使ってる船とは随分違うのね。」

「翔は、無駄な機能を沢山盛り込んだとか話してたけど、ああなってしまった原因は七丁目の元アニメオタクに有るみたいだ。」

「だろうな、船が陸上を二足歩行する必要はないだろうし。」

「あれでも飛行機能とかはマリアさまに却下されたのでしょ。」

「ああ、ここでの飛行には問題が有るそうだ、だが近い将来その制限が無くなる日が来る様な事をマリアは話していた。」

「もっと広い大地が待っているとか?」

「具体的な話は聞けなかった。」

「それで、あの島はどうなって行くの?」

「アニメオタクにどれぐらい感化されているかによるとは思うが…。」

「望は小さくて大きい島と話してた、ねえキング、私達はあの島に上陸させて貰えるのかしら?」

「上陸は今でも出来るよ、泳いで渡るか漁の為のボートで行くことになる。」

「なあ、マリアさまが城の子を特別扱いしてる事、世界の人達はどう思っているのかな?」

「始めにコロニーリメイクから取り組んだのは尊の案なのだ、中途半端に知らせて行くより、城の子の絶対的な力を一気に世界中に示した方が受け入れて貰い易いだろうとな。」

「前からあの子達の能力の高さは、世界中の人達の知るところ、でも魔法使いレベルとはね…。」

「職業体験を通して大人達と接して来たことがプラスになってると思う。

 心優しき魔法使いだと、世界中の誰もが理解しているだろう。

 マリアの教えを受けている城の子を迫害したら、どんな罰を受けるかなんてことは考えて無いと思うね。」

「そうだよな、新しくなった居住コロニーは人々の心を明るくした。

 愛の言葉がマリアさまを動かした結果だと、尊が人々に伝えたのは、尊なりに考え有っての事なのだろ。

 管理者との関係で居住コロニーの住み心地を悪くしてしまった人達にとって、城の子の存在は本当に特別なものとなったな。」

「何と言っても、人間の技術では改善出来なかった事ですものね。

 問題は、この先、城の子達が恐れの対象になるのかどうかかしら?」

「そうならない様にして行くのが、私達の役目だろう。」

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