表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集9 (401話~450話)

止まる時間

作者: 蹴沢缶九郎

ここは田中博士の研究所。田中博士は、今しがた完成した、大きさ30センチ四方の銀色の装置を前に、それまでの苦労を思い返し感慨にふけっていた。そこへ水を差すように、助手の鈴木が横から口を出した。


「博士、僕はもう我慢出来ません。早く装置を起動させましょう」


「お前はもう少し空気を読む事を覚えた方がいい。大体お前は…」


博士の毎度の説教が長くなりそうだと察した鈴木は、そこで博士の言葉を(さえぎ)った。


「わかりました博士。博士の話は後で聞きますから、さあ早く」


尚も急かす鈴木に、これ以上は無駄なやりとりと感じた田中博士は、鈴木への小言は後回しにして装置に向き合った。そもそも、装置をいち早く起動したいのは田中博士も一緒だったのだ。

博士が開発した銀色の箱は、時間を止める装置。この世の時間を一瞬にして停止させる。

田中博士は装置に手を伸ばし、装置の起動ボタンを押した。するとどうだ、壁に掛けられた時計の秒針は止まり、周囲の音や気配は一気に消え失せ、辺りを静寂が支配した。助手の鈴木は研究所の窓を開け、外の様子を確認すると興奮した様相で博士に言った。


「博士、見てください。装置は完璧だったようです。空を飛んでる鳥も、道を走る車も全てが止まっていますよ」


だが、鈴木の報告に何故か田中博士は気落ちし言葉を洩らした。


「残念ながら装置は失敗だ。我々が動いている」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ