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TRUE LOVE~救世の少女~  作者: 鳥原 麻生
8/8

エピローグ


 メラティス八世はラウェールの国王が代々溜め込んできた莫大な金銀で新通貨を

作って放出し、庶民の給料を上げたため、官僚以外の職業でも十分余裕のある生活

ができるようになった。

 そのため、厳しい競争を勝ち抜いても官僚を目指すという学生は減り、レナの通

うグランダ高校からも退学者が多数出てきた。

 そのうちの一人がクラス一のイケメン・ティルだった。

「えーっ、ティルが退学するのー? 信じらんなーい」

「ティルがやめるんじゃ、この高校に来る意味もなーい」

 極端なことを言う女子もいた。


 ティルが退学したその日、レナは寂しい気持ちで枯葉の散る帰り道を歩いていた。

 『希望の蘇り』も解散し、好きな子も去っていく。

 こうやって、死にたくなるほどの辛さも天に昇るような喜びも、次々とただの思

い出になってしまうのだ。

 レナが溜め息をついたその時、突然後ろから肩をたたかれた。

 驚いて振り向くと、ティルが微笑を浮かべて立っていた。

「レナ。短い間だったけど、ありがとう」

「こっちこそ、ありがとう。ティル、専門学校に入るんだってね」

「うん。家具職人になるんだ。職人でも良い給料がもらえるようになったからね。

本当は官僚より職人になりたかったんだけど、親に言われて嫌々官僚を目指してい

た」

「王様が代わってマジよかったね」

「本当だ。今だから言えるが、ゾウエル四世の悪政が続いていたら、官僚になれた

としても、醜い出世争いで心がボロボロになっていたと思う。だからグランダ高校

に合格した時も、心の底から喜べなかった。世の中がこんなにも自由になり人の心

も温かくなって……今は信じられないほど幸せな気分だ」

「そうだね、私も頑張ったかいがあったよ」

「えっ、何を」

「えっと……こっちの話」

「君はまだグランダ高校にいるの?」

「うん。せっかく入れたんだし、頑張って卒業する。卒業したら魔……漫画家にで

もなろうかなと思って」

「漫画家? へえー、漫画が好きなんだ」

「そうだよ。『アワビさん』なんて大好き」

「ああ、新聞に何十年も連載されている四コマ漫画ね」

「私だったら一週間でネタが尽きちゃうかも」

「大丈夫さ。君ならできるよ」

「ありがとう」

(ごめんね、ウソついて)

 レナは心の中で謝った。彼に怖がられたくなかったので、「魔女」という言葉が

出てこなかったのだ。

「励ましてくれてありがとう。ティルも立派な家具職人になれるように祈ってる」

「レナ。急にこんなこと言って驚くかもしれないけど、君とこのまま別れたくない

んだ。僕と付き合ってくれないかな」

「ええっ!? だって、カーラは」

「もちろん、別れたよ。もうグランダ高校は退学したんだから、君に告ったことを

彼女にバラされようが関係ない。皆にバレないように女装までして彼女と付き合う

必要もないんだ」

「そうだね。よかったね」

「うん……だから、もう君と付き合っても誰にも文句は言われないんだ」

 レナは心の中で高笑いしながらカーラに指を突きつけた。

(私の勝ちよ! ティルは私のもの)

 そこまで考えてレナはハッとした。

 自分はもはやただの女の子ではない。超巨大火山のようなパワーを持った魔女な

のだ。その上いまだそのスーパーパワーを使いこなせず、衝動的にそれを解放して

しまうかもしれない危険な存在なのだ。それだからこそ、メラティス八世のもとか

らも去ったのだ。

 レナは涙目で言った。

「ごめん。私とは付き合わないほうが身のためだと思う」

「身のため?」

 極道の脅し文句のような言葉にティルはうろたえた。

「どういう事なんだい」

「お願い、聞かないで。私はもう、以前の私ではないの。きっと向こうの学校で私

より可愛くて危険じゃない女の子はいっぱいいると思うし、ティルはカッコいいか

ら彼女なんてすぐにできるよ。それじゃ、頑張ってね。さよなら」

 ティルは「危険」という言葉を口の中で何度も繰り返し、首をかしげながらレナ

の後ろ姿を見送った。

 レナは魔女と言うよりモンスターになってしまった自分が悲しかった。

(この国の人達は以前より幸せになったけど、私は不幸になった)

 レナは泣きながら歩いていたが、気が付いたらゼルタクの屋敷の前に来ていた。

「先生……本当の私を分かってくれるのは、もう先生だけ」

 レナはゼルタクの顔を思い浮かべながら屋敷の窓を見た。

 数分もすると、顔をゆがめたゼルタクが荒々しく窓を開けた。

「やっぱり君か! 念を送ったのは」

「す、すいません」

「無節操に念を飛ばしたら危ないじゃないか! 頭が割れそうだぞ」

「ごめんなさい! ……先生、私を鍛え直してくれませんか。そして、一人前の魔

女にしてください」

「……分かった。お前は一人前と言うにはまだ粗削りだ。もう少し修業が必要だろ

う」

「お願いします!」

「レナ! また修業をするの?」

「一緒に頑張りましょう!」

 サマナとフィラがキッチンの窓から顔を出した。

「あれっ、二人とも私のサポートが終わって自分の相談所に帰ったんじゃないの?」

「だってー、ゼルタク先生のほうがカッコいいしー」

「再婚するなら先生だなと思って」

「何それ」

 レナの瞳がぎらりと光った。

(二人はもう先輩というよりライバル)

 恋も魔法も負けられない。

 負けじ魂に火が付いたレナは屋敷に向かって走り、扉に穴を開けて入っていった。


 学生時代からずっとコメディーだけを書いてきました(性格上、真面目な小説は

書けないようです)。何か食べたり飲んだりしながら読めない小説(噴き出すので)

が書けたら最高ですね。

 小説の他に漫才やコントや落語の台本も書いており、幾つか賞も戴きました。 

 このようにお笑いしか書けないアホな私ですが、どうぞよろしくお願い致します。

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