月が綺麗ですね
かつて夏目漱石は「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したとか。この逸話はネットなどで広まって、最近は目にする機会が多くなったようです。
ここ「小説家になろう」でも、それを取り入れた作品をしばしば見かけます。
でも、そういった作品の内容、あらすじ、感想ページ、作者の方の活動報告などを見ていると、少し気になることがあるんです。
みなさんは本当に漱石がこう訳したと思っていらっしゃるのでしょうか。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、実はこの漱石の逸話は、事実かどうか怪しいんですよね。というのも、漱石がそう言ったということは、本人の随筆や手記などには書かれていないし、周囲の人が書いた文章にもそれらしき記述は無いのだそうです。
つまり、漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したという確たる証拠は今のところ存在しないのです。しかし、言っていないということを証明するのもまた難しいでしょう。
というわけで、漱石は言ったかもしれないし、言っていないかもしれない、というくらいに考えるのが良いかもしれません。
意外とこのことを正しく認識している人は少ないのではないでしょうか。この漱石の逸話が事実かどうか定かでないということについて言及されている方もいらっしゃいますが、断定的な書き方をされている方も結構見ます。
だからといって、このネタを作品に使うな、と言いたいわけではありません。
漱石が言った、言っていないに関わらず、「I love you」を「月が綺麗ですね」と表現するのが素敵だということには変わりないからです。漱石の名前で何割増しかにはなってそうですけど。